2004年6月20日 夏至
キャンドルナイトって何?
照明探偵団としては2回目の参加となった今回のキャンドルナイト。「キャンドルナイトって一体何?」という方のために簡単にご説明します。 キャンドルナイトとは、環境や省エネ、現代社会のライフスタイルについて考え直すとともに、時間のあり方、過ごし方などについても見つめ直すきっかけとして、環境NGOが中心となって始めた取り組みです。 夏至と冬至、という一年で最も日が長い/短いという日に、地球の時間の流れに合わせて人間も過ごしてみよう、夜8時から10時までの2時間だけ、「でんきを消してスローな夜を。」をスローガンにいつもとはちょっと違った時間の過ごし方をしてみよう、というのがこのイベントの主旨です。 東京タワーなども含め、全国で6000箇所もの施設がライトダウンされたり、200箇所以上でキャンドルを使った様々なイベントが行われたり、とこの輪は広がってきて いるようです。そういったイベント以外にもwebから参加意志を表明 して、キャンドルを用意すれば自宅で誰でも気軽にキャンドルナイト に参加することができます。
キャンドルナイト@キャットストリート
この中で照明探偵団が主催しているのが「キャンドルナイト@キャットストリート」。表参道と直交する旧渋谷川、約700mほどの暗渠の遊歩道(通称:キャットストリート)です。1964年の東京オリンピックを機に渋谷駅宮益坂以北の渋谷川は一斉に暗渠化されてしまったらしいのですが、それまでここキャットストリートにも小川が流れていたのだとか。有名な小学唱歌“春の小川”の舞台となったのも渋谷川の支流とのこと。そんな今ではもう見ることのできない川の流れをろうそくの炎によって感じる、というのもこのイベントならでは。
今回はこの約700mほどの遊歩道上で全9箇所のキャンドル・パフォーマンスを行いました。何もかもが初めてで手探り状態だった昨年12月の冬至のキャンドルナイトより今回は規模も拡大し、キャットストリートに集まるお客さんの数も増えました。キャンドル・パフォーマンスに参加したのは照明探偵団の他、武蔵野美術大学面出ゼミ、 多摩美術大学有志、慶応義塾大学有志、東芝デザインチームの面々。さらに今回はキャットストリートに事 務所を構えるデザイナーの深澤直人氏もスペシャルゲストとして参加して下さいました。
キャンドル・パフォーマンスの数々
キャットストリートを舞台にどんなキャンドル・パフォーマンスを行うか。事前に3回のワークショップが行われ、それぞれのチームが頭を悩ませながら、本番を迎えることになります。照明探偵団が今回担当したのはスターバックス・表参道B-SIDE店。キャットストリートから1本入ったところにある2階建ての建物です。通りに大きなガラスのファサードが面しているので、内側がよく見える。この建物の特徴を活かした照明計画ならぬ、キャンドル計画が行われました。一番大きく見えてくる天井面をLEDでブルーに染め上げ(キャンドル以外の光源を使うのはやや違反ですが・・・)、窓側にキャンドルの光をほのかに透過させる30cmほどの筒を等間隔に並べていきます。お店の協力で店内の照明も全体的に調光され、背景の薄明かりがつくられました。天井のブルーとあたたかなキャンドルのオレンジ色の光がコントラストで何とも美しく、いつものスタバがこの日は大変 身しました。そ の他にもショッピングバッグにキャンドルを入れた、 キャンドルナイト 限定バッグを持ったスタッフが辺りを闊歩したり、キ ャンドルのあかりだけでデザインされたカフェでライブが行われたり、 と趣向を凝らした パフォーマンスの数々が行われました。
隠灯ゲリラ?
夜に一度キャットストリートを歩いてみて下さい。表参道から一本入ったこの遊歩道は車がほとんど通ることも無く、本当はリラックスして夜の散歩を楽しめる道のはず。通りに並ぶ小さなインテリアショップや洋服屋さんは閉店後のショーウィンドウを眺めているだけでも楽しい・・・しかし、この通りの景観を台無しにしているのが狭い通りに乱立する街路灯。約20mピッチで建ち並ぶこの街路灯が、どう考えても夜の散歩にはいらない光の量を放っています。この街路灯さえ無ければもっと心地よい夜の景色が得られるのでは、と考え、これを隠灯してしまう、つまり隠して光を出さないようにしてしまおうというゲリラが今回は試行されました。 担当したのは武蔵野美術大学のチーム。長い竿のような2本の棒の先に黒いビニール袋を貼っただけの道具でしたが、これを「隠灯!」という合図とともに通り に建ち並ぶ街路灯を隠していきます。 照明探偵団のライトアップゲリラはお馴染みの方も多い方も思いま すが、隠灯ゲリラなんて初めての試み。面出団長も「忌々しい・・・」と常々言って はばからないキャットストリートの街路灯ですが、この隠灯ゲリラ計画は思いの外の効果で、周囲からは歓声も上がっていました。
(田沼彩子)