探偵ノート

第026号 – 光を調査するということ

Update:

テーマ『光を調査するということ』

Interviewer: 永田恵美子

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永田:「光を調査するということ」をお話する提案をしたものの、本当はあまり触れなくない話題なんです。(苦笑)。

面出:え!そうなの?!

永田:実は私、ずっと調査に求められる事や報告する内容についてモヤモヤしていました。それは私自身が行った調査の報告内容がイマイチの反応がつづいた経験とか…

面出:え!そうだったっけ?

永田:とにかく不評でした!特に撮ってくる写真の内容が。その頃は私の考える調査の意味、みたいなものと求められるものがかみ合っていなかったのだと思います。そこから光を調査するってなんだろう?って未だに考えを巡らしています。

面出:へぇ、じゃあこの話題でいこうって言われて嫌だったんだ。(笑)僕は調査の目的は美しい写真を撮るだとは言ってこなかったつもりだけども、方法論として言えばスキルとして美しい写真をとることは最低限やらなければいけないし、色んなスキルを鍛えて所作として癖をつけるってあるじゃない。だから僕は今でも照明デザインは格好いい写真を取らなきゃ、と思っているよ。

永田:私はそういった調査で、形式的なスケッチを描くことや、格好いいと言わせる写真を撮ることばかりにとらわれてしまうと、光やその土地や場所の照明について考えることをしなくなると思うんです。

面出:最近、都市調査マニュアルなんかが作られると方法論ばかりが出てくる。こういうスケッチを、断面を描きなさい、といった雛型を示すと確かにみんなそれをしに行ってしまうところはあるね。それは問題だよね。

永田:じっくり見て何かを考える、ということがないとどんどん感性が薄れてしまう気がしてなりません。

面出::うん、それは明らかにそうだね。それをメインテーマにしたほうがいいかもね(笑)。

永田:感性について?

面出:というかね、写真を撮らない人もいるんだよ。その人はね、時間がかかってもスケッチをするんだって。あまり上手ではないけども一生懸命描こうとして見ようとしている。

永田:あっ、私、10年以上も前だけど小さなスケッチブック渡され、日々の何でもいいから思いやアイデアを描いていきなさいって奨められたことあって、それがきっかけで見たもの、感じたことをじっくりと考える癖がついた気がします。

面出:僕は言葉でも良いと思うよ。自分で見たことやあったことを後で思い返すのではなく、その時にできるだけ絵にしたり言葉で書いたりしていると見えてくるものがあって、時間の密度が変わってくる気がする。

永田::面出さんはいろんな場所に身を委ねて、光に出会うことは大切だとおっしゃいますよね。光と「出会う」と言う言葉を使った時、なるほどって思いました。

面出:出会うって、突然起こった出来事だよね。きちんと予定されないことが「出会い」な気がする。「光と出会う」ということも探しに行くのではなくて、本当は突然出会ったり触れたりすることが沢山って、良い出会いを呼び込むというのは自分の心がけ次第なんだよな。言い過ぎかもしれないけど、無防備になるんだよ。自分の気持ちを空にしておくとどんどんいろんなものが入ってくる。極端にいうと、いろんな光を感じる能力だと思うね。それも今はデジカメやスマホなんかですぐファインダー越しに見ちゃうから、自分の見る目や自分が無防備にいろんな光と出会ってドキドキすることさえなくなっちゃうんだな。

永田:…(考えさせられる)

面出:調査って照度計を使うことは記録としての方法論で、目的は、あなたの感性がもっと豊かにあって、どうゆう風に感じたかという自分の感動をきちんとまとめて、しかも帰って来た時に自分の感動が言葉やスケッチや色んなことで他人に伝えられる、ということが調査なんだと言いたいね。

永田::(言葉にはでなかったが)そうですね。

面出:あと、そうだな… 自分がその街をみたり調査したこと、行ったこと、感じたことから何を読み取るか。その読み取ったことが語っている摂理、理屈みたいな物を自分なりに推論を立てる。それが、原広司さんの「集落の教え100」って本に書かれているんだよ。一つ一つの街にいって、何かを見て感じて街が歴史的に出来てくることが我々に何を語っているか、その、何を語っているかってことが大切ところで、何かのこれからの発想だとか、デザインの一番大切な部分のヒントを与えていてくれているはずだ、と言っているのが、世界中を廻る原さんの動機だと言っているんだよ。僕らの照明調査の目的も本当はそうでありたいね。

永田::ホント、深いですね。今日はたくさん素敵なお話が聞けて楽しかったです。ありがとうございました。

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