探偵ノート

第006号 – 建築照明と舞台照明

Update:

コーヒーブレーク: 面出さんと私
Interviewer: 渡辺 元樹

テーマ:『建築照明と舞台照明』

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中国にて舞台照明を学んだ中央戯劇学院

舞台作品:落下の王国

渡辺 今日のテーマは「建築照明と舞台照明」です。僕は大学の頃、舞台照明を専攻していました。

面出 舞台照明を始めたきっかけはなんだったの?

渡辺 もともと小さい頃から映画や演劇をみるのがとてもすきでした。高校を卒業して漠然と海外に出たいと思い中国へ語学留学しました。1年過ぎたころ、ある大学で観劇する機会があったのですが、中国の舞台の照明ってとても派手で、そのときはじめて舞台照明を意識しました。そしてその観劇した大学への入学を決めました。

面出 舞台照明を学んでいたのに途中で建築照明を志したのはどうして?

渡辺 大学で舞台照明を学ぶ中で、舞台照明の限界というかすごく制限のようなものを感じることがありました。自分たちの生活や社会により近い所で照明の設計をやってみたいともおもい建築照明を志しました。

面出 制約とか制限だったら建築照明にもかなりあるんじゃない?舞台照明と建築照明の違いはなんだろう?

渡辺 違いは沢山あるとおもいますが、設計段階で舞台照明は凄く現場主義で、多くの時間は現場の劇場であったり、ステージで作業が行われます。

面出 そうだね、建築照明は80パーセント以上を作り上げてから現場に入らなければいけない。舞台照明っていうのは最終的に自分で光を自由にうごかせるけれど、建築照明だとそういう訳に行かないよね。施工屋さんに頼まなければいけないし、

渡辺 あとは舞台照明は、毎回の公演によって出来が色々と変わっていく所も違うなと思います。建築照明の場合は一回やってみてだめだったからもう一回って訳にはいかないですし、

面出 舞台照明と建築照明って近いようで遠いところもある。舞台は結局観客に対していかに上手く嘘をつけるかっていうものかなと思う。視覚や聴覚のトリックを使って現実ではなくて虚構の世界を作り上げていくというか、観客をそこへどうやって引き込んでいくかの世界だと思う。 逆に建築の世界は凄く現実的で、小さな間違えも許されないところがある。常に安全性、合理性の面からデザインを考えなければいけないしね、舞台照明だけに制限があって窮屈かというとそういう訳では無くて、ものを創作する仕事には不自由はつきもので、色々な人を説得するのも大変だし、つらいことは山ほどある。 舞台照明の一番大きな特徴としては、闇をいかにコントロールしていくかというところだと思う。時間を凝縮して空間から光を取り除いていくシーンを巧みな調光システムで表現したり、多彩な色光を使ったり・・・。 そういう意味では舞台照明というのは建築照明よりももっと自由に光を表現している。歴史をさかのぼると、舞台照明ではたいまつのあがりを使ったり、電気を使わないスポットライトなんかもある。夜には月を眺めながら僅かな光の下で演劇をしたりね。

渡辺 面出さんが舞台照明に影響されることなどもあるのですか?

面出 先ず舞台照明から学べるものは時をどうデザインするかだよね。2時間という時間に全てを凝縮させて罠にかけるわけだから、2時間を25年に見せたり、1分を1時間かけて表現することもあるかもしれない。
Fisher Marantz Stone(FMS)っていう会社はニューヨークの僕の尊敬する建築照明デザイン事務所で、代表の一人のJules Fisherっていう人はブロードウェイの照明では有名な照明家なんだ。
なぜ彼ら建築照明デザイナーが舞台照明家と一緒に会社をやっているかというと やっぱり僕たち建築照明も舞台照明の細かなテクニックや技に感化されたり、いろんなものを吸収したいと思うからなんだよね。だから渡辺さんなんか舞台照明を学んできたのだから、それを今度は自分の強みにしてみてはどうかな。建築照明では未だ駆け出しだけれど、これからも舞台や映画を沢山みて、情報だったり技術だったり舞台照明で起きていることを沢山学んで僕らの仕事にフィードバックしていって欲しいな。あなたにしかできない照明デザインがきっとあると思うよ。

渡辺 はい、今日のお話で今の自分の目標みたいなものを見つけることができた気がします。週末もごろごろせず、色々な御芝居や映画を見て探求していきたいです。
個性的な照明デザイナーになれるように頑張ります。

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