照明探偵団通信

照明探偵団通信vol.82

Update:

発行日:2017年9月21日
・照明探偵団倶楽部活動1/東京調査 東京湾(2017/07/24)
・照明探偵団倶楽部活動2/Lighting Detectives Workshop at Singapore Night Festival 2017 (2017/08/18-26)

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東京調査 東京湾

2017/07/24 岩永光樹+高橋翔作

煌びやかな東京の街並みに抱かれるように位置する東京湾。
湾に臨むのは羽田空港や大井埠頭、レインボーブリッジに東京ディズニーリゾートなど流通からエンターテイメントまでさまざまなスポットが軒をつらねている。
夜には漆黒の水面にそれらの個性的な光が映りこむ。

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船上から見た360°に広がる東京の光

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調査コース

様々な表情をもった東京という大都市を海上の視点から一望したとき、我々の目にはどのような光景がひろがるのだろうか。いつもの調査とは視点を変えて、東京湾をクルージングしながら東京という大都市の遠景の光を調査した。
日の出ふ頭を発着場とする船に乗り、レインボーブリッジ、東京ゲートブリッジをくぐった後、羽田空港近くを通って再び日の出ふ頭に戻るまでのルートを調査コースとした。

■日の出ふ頭付近からの展望
レインボーブリッジより内陸側の海上からは東京の光を360°見渡すことができ、東京湾夜景の一番の見どころといえる。水平線上に並ぶレインボーブリッジや東京タワーの色鮮やかな光、オフィスやマンションの窓明かりなど、様々な光が煌びやかに連なって見える様はとても美しく感動的だった。新宿や銀座などの繁華街を歩く際は光の多さに圧倒され、時に暴力的に感じられる部分もあるが、少し引いてみるとこうも静かできれいに感じるのかと驚かされる。
しかし主要な繁華街やオフィス街の光は天空まで拡散しており、光害とも言える無駄で過剰な光が確認できる。また、調和なく雑多な光が混じり合っている現状は夜景の価値を向上させる上で1つの解決すべき課題だと言えるだろう。

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調査で利用した船
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構造が美しく光る工場

■大井ふ頭付近の工場夜景
大井ふ頭には海岸沿いに巨大クレーンが立ち並び、その周辺には無機質に照らし出される工場が点在する。怪しげに美しく光るクレーンや工場は水面への反射が相まってとてもドラマチックに感じられ、東京の普段見ることのできない夜景を楽しむことができる。巨大クレーンの多くは低色温度の光源が用いられており、連続して見える光景は統一性があり印象的だ。だが、強いグレアを放っている工場がいくつかあり、まぶしいだけでなく背景にある東京の夜景をかき消していた。工場の光は機能を重視したものであるべきだが、景観への配慮があってもよさそうだ。(高橋翔作)

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海岸沿いに連なる巨大クレーン

■ビル群の中のレインボーブリッジ
大井埠頭の工場夜景を堪能したあとに暁埠頭側に左折すると右手には大きな闇が横たわる。昨年一部の開園が見送られたばかりの海の森公園だ。ゴミの埋立地に森をつくることで期待があつまる海の森公園の闇は目に心地良く、夜空を染め上げる都市光のフレアが浮かび上がってみえた。反対方向の有明側では対照的な景色が広がる。お台場のフジテレビ、レインボーブリッジ、東京タワーが層となって重なり見え、相互との速度でゆっくりと交わっている。ビル群の中に佇むレインボーブリッジを発見したと同時にレインボーブリッジの照明は土台に広がる海水面があってこそ美しい照明手法なのだと気付かされた。

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海原に聳え立つレインボーブリッジ

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巨大なダークスポット「海の森公園」

■闇夜に浮かぶ「恐竜橋」
広大な海の森公園の闇から突如あらわれるのは「恐竜橋」こと東京ゲートブリッジだ。千葉県市原市あたりの夜景を背負い繊細に照らしあげられたトラス構造は15-20cd/㎡と、節度のある輝度でほんのりと海上に浮かび、東京の海の門構えとして十分な気品を感じることができた。視界に広がる夜空と海原を切り裂くように大きな弧を描いたブルーのドット照明も心地良い輝度で印象的だった。
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心地良い輝度をまとった「東京ゲートブリッジ」

■空と海原を横切る光
東京ゲートブリッジをくぐると街明かりも遠くなり海原の黒と夜空の黒をさまざまな色の電飾が分断しているような光景が広がる。しかし、その静寂を劈くように上空から轟音とともに一筋の光が我々の頭上を横切る。夜空を見上げると飛行機のヘッドライトがぽつぽつと遠くの空まで連なって見えて、進行方向には高速点滅で空の旅客者たちを誘う光が羽田空港の滑走路を走っていた。移動体の光はいつも強烈で不意に飛び込んでくる暴力性があるが、空を回遊する光は都会の蛍のような魅力があった。内陸側の海上に戻ることには昔ながらの赤提灯をぶら下げた屋形船から青白いイルミネーションで飾られたクルーザーも浮かび、色とりどりの光が海原に漂う様は縁日のヨーヨー釣りを髣髴とさせた。

■東京湾の夜景の魅力
東京湾クルージング調査は総じて言えば驚きの連続だった。シンボリックな建物はほとんど見ることができたのだが、よく考えてみると東京湾ほど視界が開けた場所は東京都内のどこにもないかもしれない。だからこそアイレベルでは普段視界を覆ってしまう高層ビルや建築群が、東京湾では連なって見ることができる。この光景は東京湾ならではの景色と言っていいのだろう。ただ建造物も橋も工場や護岸さえも海上からの視線を意識していなかったのか、私には「うしろ姿」を垣間見てしまったような印象が残った。しかし、このアトラクティブなシーン展開が大都会・東京の街々を背負い込んだ東京湾夜景の魅力なのかもしれない。(岩永光樹)

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甲板には夜景を楽しむ人々で溢れる
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デコレーションされたクルーザー

照明探偵団ワークショップ@ シンガポールナイトフェスティバル2017

2017/08/18-26 Sherri Goh

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Light Up the Beat!
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デザインレンダリング
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伊東氏の登場
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キックオフミーティング 
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完成まであと半分!
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構造体の組み立て

照明探偵団は、日本人美術作家の伊東篤宏氏とコラボレーションをしました。伊東氏は、蛍光灯を用いた自作音具「オプトロン」を用いたサウンド・パフォーマンスの活動をされています。今回のシンガポールナイトフェスティバル10周年を記念して、”Light up the Beat!”と題したパフォーマンスを行いました。

■“蛍光灯の音楽隊”
近代的な地区とは対照的に、古い歴史遺産をもつWaterloo地区は、蛍光灯がLEDに置き換わっていく今の時代において、古く親しんだものを象徴するような街並みでした。近くのシンガポール・マネージメント大学(SMU)では現在、蛍光灯からLED光源に置き換えていっており、そこで取り外された41本の古い蛍光灯を使って、“ブレーメンの音楽隊”のお話を髣髴させるような、新たな物語をつむぎだしました。建築照明を引退した第二の人生として、インスタレーションの中で蛍光灯たちは闇夜の中をリズムとともに点滅し踊る楽器として、私たちを楽しませてくれました。

■デザインのジレンマ
まずデザインする上で、大きさの問題から美しい構造体をデザインすることは簡単ではありませんでした。1.2mの蛍光灯を設置するための頑丈で現実的な大きさ、そして現場で設営や調整できるようにしなければなりません。グリム童話になぞらえた動物たちを表すために、土台を4段に折り重ね、そこに200本の蛍光灯をどう設置するかの検討から始めました。6mにもなる構造体はシンガポールの現地のPE承認を受ける必要があります。200本の蛍光灯の荷重と電気容量を満たすことは現実的に難しく、また激しい雨の場合は火災の恐れが懸念されます。お年寄りが多く住む閑静な住宅街が近いということもあり、明るさや騒音の心配もありました。何度も何度も悩みに悩んでブレインストーミングとデザインの変更を重ね、そして二度にわたるモックアップの末、60本の蛍光灯を設置することとなりました。そして設営する日を楽しみ待ちました。

■構造体の組み立て
サイズが大きいため、構造体の組み立てと溶接は現地で行いました。屋外での作業は天気に左右されるため、天気については大きな掛けでした。LPAとしては、このような大きな構造体の現場管理や安全管理は初めてのことで、当初心配していましたが、合計で最終調整を含み5日間かかって設営を終えました。

メディアプレビューとオープニングの週末
最初の調整から一週間後、16日の夕方のメディアプレビューと18日の開催の夜に向けて準備が整いました。インフルエンサーやデジタルメディア、そして主流のメディアといった報道グループの代表が5社ほど、私たちのインスタレーションに取材に来てくださいました。蛍光灯の安定器の振動数によって音が発せられることに驚いていました。オープニングの週末は、近くで起きた乱闘とケーブルの損傷により少しの間中断はありましたが、順調に始まりました。

■Lighting up the Beat!
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たくさんの人が集まりました

パフォーマンスの週末はあっという間でした。LPAシンガポールオフィスは、通り掛かりの方々にワークショップの案内を夕方の早い時間から始めました。その際に興味を持ってもらおうと、メタルツールや楽器のサウンドテストをしたところ、5分もしないうちにたくさんの方々が関心を持って足を止めて集まってくださいました。伊東氏は聴衆と一緒に20分ほどのウォーミングアップから始めました。ほとんどが通り掛かりの方々でしたが、徐々に増えていき45人を越える方々に集まっていただき、その活気がすばらしい雰囲気を作り出し、蛍光灯のパルスに更なる活気をもたらしているようでした。家族連れや、友達同士、お年寄りからお子様まで、楽しそうに手拍子していただきました。
初日にはお客さんの一人が、音に合わせて踊って楽しませてください、二日目に飛び入りで参加してくださったギタリストのRavenも聴衆たちを大いに沸かせてくださいました。

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LPAのスタンド
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観客も踊りで参加

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ワークショップ
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熱烈なデュエット

このようなイベントが実現し、成功させることができたことを感謝いたします。
また次のイベントでお待ちしております。

(Sherri Goh)

開催地:Waterloo Artsplace
協力:Krislite

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