照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.108

Update:

発行日:2021年 12月13日
・照明探偵団倶楽部活動1 / 第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 シンガポールパビリオン Biennale(2021.05.22-2021.11.21)
・照明探偵団倶楽部活動2 / あさがおプロジェクト (2021.10.22-2021.10.23)
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第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
シンガポールパビリオン

2021.05.22-2021.11.21 葛西 玲子+ 坂野 真弓 + Sun Young Hwang + Sherri Goh + 高橋 翔作

©gardestudio
開催前の準備

2019年11月下旬、私たちはシンガポール国立大学(NUS)建築学科の企画担当チームから、「To-Gather: The Architecture of Relationships(ともに在る—関係性の建築)」をテーマとしたシンガポール館の企画提案を依頼されました。
私たちの案は、建築家やデザイナー16組による応募の中から選考を通過し、最終候補に選ばれました。
その後、2020年1月初旬から制作に取りかかり、同年5月23日から11月29日までヴェネチアで開催予定の展覧会に向けて、インスタレーションの設計と製作を進めました。
提示された課題は、「私たちはこれから、どのように共に生きていくのか?」という問いに対する答えを、私たちの活動を通してを探すことでした。

■私たちのアプローチ

シンガポールでは近年、「光害」や「過度な照明」といった言葉が、都市の照明環境を表す際に使われるようになっています。今求められているのは、現在の状況を私たちの「ニーズ」と「欲求」の両面から見直し、バランスを取り直すことではないでしょうか。
果たして光の増加は、より快適な夜をもたらしているのか――この問いに立ち返る必要がありそうです。

■ インスタレーションの設計
主催者によって構想された展示フォーマットは、シンガポールを象徴するホーカーセンターをモチーフとしたものでした。ホーカーセンターは、日常の食事に欠かせない存在として、シンガポールの暮らしに深く根付いています。
参加チームそれぞれに、スツールが囲むテーブルが一つずつ割り当てられ、典型的なホーカーセンターのレイアウトを模した空間が構成されました。私たちは、LPAが2015年に開催した巡回展「Nightscape」で展示された、シンガポールにおける照明の歴史年表をアップデートし、再構成しました。
その内容は、暗幕に印刷され、巻物のように現れては消える形式で展示。ストーリーとともに、背後に隠された電球の存在も浮かび上がるように設計しました。さらに、照明探偵団のこれまでの活動も、テーブル上に展示し、訪れた人々が席に着いて気軽に読むことができるようにしました。

■ パンデミック
シンガポールが4月初旬にロックダウンに入り、ヴェネチアでの展覧会が正式に延期されるという知らせが届いたのは、5月20日のことでした。私たちの制作物は主催者によって回収され、2021年2月まで保管されることとなりました。その間、すべての参加者がインタビューやZoomミーティングに参加し、パンデミックという状況を受けて、自らのインスタレーションの意味をあらためて問い直し、意見を交わし
ました。

■ ヴェネチア
私たちのインスタレーションは2021年3月にヴェネチアへ到着し、渡航制限の影響を受け、設営は協賛企業であるLutronとLinealightの協力のもとで行われました。展覧会は2021年5月22日から11月21日まで開催され、大盛況となりました。シンガポールパビリオンには、1日平均465人もの来場者が訪れ、大盛況でした。

■ 今後について
シンガポール館は、2022年2月に「帰国展」としてシンガポールに凱旋展示される予定です。パンデミックという予想外のトラブルに見舞われつつも、海外と国内の両方で展示の機会をいただけたこと、とても光栄に思います。(Sherri Goh)

あさがおプロジェクト×照明探偵団

シンガポール・タンジョンパガー探訪 2021.10.22-2021.10.23

照明探偵団:葛西 玲子 + Sun Young Hwang + Sherri Goh + Quratuaini Jamil + Shirmine Tan + Xiao Qing
チームあさがお:葛西 華奈 + Victoria Wee + Marielle Ang + Elias Bay

イベントの雰囲気を楽しむ一般来場者
ランタンのまわりで遊ぶ子どもたち
ピクニックを楽しむ来場者

2020年以降、初めての活動!
学生たちの発案により、照明探偵団との共同企画として実現しました。
きらめくランタンに囲まれながら、公園で過ごす夜のひととき

オフィスで制作活動をする学生達

2021年10月、私たちは学生チーム「あさがおプロジェクト」と協働し、Beyond Social Servicesの支援と認知向上を目的としたインスタレーションを実施しました。この学生チームは、セント・ジョセフ・インスティテューション・インターナショナルに在籍する4人の学生で構成されており、本展示は、若者が自ら選んだ福祉団体を支援することを目的とした「Citi-YFC(Young Financial Champions)」キャンペーンの一環として行われたものです。

芝生にハート型に配置されたランタンには、支援対象の若者たちによる絵が描かれていました。
当初はランタン制作ワークショップの開催も予定されていましたが、当時シンガポールは依然としてロックダウン下にあったため、一般の参加は推奨されませんでした。それにもかかわらず、インスタレーションは非常に好評を博し、2日間とも多くの方にお
越しいただきました。これはパンデミック以降、シンガポールで行う初めての照明探偵団によるオフラインの活動となり、限られた時間の中で提案を迅速に承認いただいたシンガポール都市再開発庁(URA)のサポートがあって実現することができました。
また、「Discover Tanjong Pagar」やGuoco Towerの皆さまからも温かいご支援をいただき、地元でのイベント開催が実現したことを喜んでくださいました。今後状況が落ち着き次第、Neil Roadの活性化計画の一環としてさまざまな活動を企画していきたいと考えています。(Sherri Goh)

インスタレーション全体の俯瞰図
ランタンには学生達によるイラストが

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