照明探偵団通信

照明探偵団通信 vol. 115

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発行日: 2022 年 12 月 15 日
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面出薫/ 照明デザイン塾

LPA の照明デザインのプロから照明デザインのノウハウを教わる3 日間の照明デザイン入門編のワークショップを開催。23 名の大学生が参加し、高密度なワークショップとなりました。最初はなかなか打ち解けられなかった学生も街歩きやその後の懇親会、グループディスカッションなどを通して、親睦を深め、お互いの意見や考え方、表現の仕方の違いを尊重するようになり、いい関係が築け、実りの多い会となりました。

コロナの影響で照明探偵団の活動も制限されていますが、それ以上にこども達や学生がその頃にしかできない体験を制限されていることに強い懸念を持っています。とくに照明デザインは現場に行って体感したり、観察するのが重要な一歩となります。照明デザインの大切さや現場を実際に見ることで得られる感覚を学生に伝えるワークショップがどうやったらコロナの中でもできるかを検討し、9 月の連休での開催に漕ぎつけました。
(東悟子)

■ワークショップ主旨
私はかつて東京芸術大学デザイン科、東京大学建築学科、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科、という大学で照明デザインに関わる授業をそれぞれ10 年ほど担当していました。そこには光に対する興味の深度の違いがあって、教え方にも苦労をしました。私が照明デザインの道に入ったのは偶然なのですが、その道を進んでくると照明デザインという道と仕事の重要性が段々と分かってきました。そして今、未来の照明デザインを健全に導くための若者に対する期待が膨らんだのです。私塾は寺子屋のようなものです。私は照明デザインに対する志の高い学生たちに、高邁な思想と感性と技術を伝授したいと考えました。LPA というプロのデザイナー集団が、ボランティアで学生を指導することに意義を感じます。
このワークショップを体験した学生がどの様な未来を創って
いくかにも期待しています。
(面出薫)

4 班に分かれて銀座、有楽町、日比谷中心に街歩き

■ Day 1 照明デザインレクチャーと街歩きワークショップ
初日はLPA のプロの照明デザイナーによる様々な照明デザインのレクチャーと外部講師2 名によるレクチャーを行いました。また夜には4 班に分かれての街歩きを行いまし。 照明デザインのレクチャーは面出の『LPA と照明探偵団= 文化としての照明』を皮切りに、公共空間の照明デザイン、都市照明、演出照明、ホテル照明をLPA スタッフがそれぞれ担当。外部講師に東洋大学の越智信彰氏と地域力創造デザインセンター代表理事高尾忠志氏をお招きしそれぞれ光害と街づくりにおける夜間景観の大切さの講義をいただきました。夜は、銀座・有楽町エリアを中心に4 つの班に分かれて街歩き。探偵団メソッドに則り、光の英雄と犯罪者を探します。各班にはLPA のスタッフがそれぞれ2~ 3 名入り、照度の測り方、写真の撮り方、議論のとっかかりのヒントなどを提示しながら、約90 分間の調査。照明に焦点をあてて夜の街を歩いたことのなかった学生にとって、英雄と犯罪者の基準が数値や概念ではっきり判断できるものではなく、同じものでも一人一人個人で捉え方が違うことに、戸惑ったり難しく考えてしまったりもしたようです。LPA スタッフが一つの事象をどのように判断するかを明示することは避け、学生主体の議論をしてもらうことで、自由に発想を飛ばしてもらうことができたように思
います。私たちも多くの気づきがあり楽しい街歩きとなりました。


■ Day 2 街歩きの振り返り・プロポーザル制作
2 日目は街歩きの分析と照明プロポーザルを2枚のパネルにまとめる作業を行い、最後は全員のプレゼンテーションを行いました。まず各班毎に前日の街歩きのレビューを行い、それぞれの英雄と犯罪者を選出。班全員が納得いくまで議論が行われました。ほとんどの班は意見がなかなかまとまらず、英雄と犯罪者を決めるのに時間を多く使い、プロポーザルを考える時間が足りなくなっていました。
プロポーザルの作成ではLPA スタッフが光のデザインの表現方法を伝授し、それを手本に作成。今まで照明プロポーザルを考えたことがない学生がほとんどでしたが、プレゼンテーションを行うまでになんとか漕ぎつけていました。予想を超える奇抜なプロポーザルは出なかったものの、短時間で各班の特徴を出した個性的なパネルにまとめ
上げていました。
班ごとのプレゼンテーションではパネル2 枚を使い、歩いたエリアの英雄と犯罪者の分析とそう判断した理由の説明、そしてそのエリアに対しての光のプロポーザルを発表しました。 他の班のまとめ方、プロポーザルの提案の仕方や発表方法を目の当たりにした学生達は、お互いにだいぶ刺激を受けたように感じました。LPA講師陣からのコメントも受け、何がうまくいったのか、また何が足りなかったのか、各々反省もでき、3 日目の個人課題のヒントにもなったように思います。
プレゼンテーション後は懇親会も開催。1 日の緊張感を開放する時間を設けました。班を超えた学生同士のコミュニケーションや、他の班の指導をしているLPA スタッフとの対話の時間を取ることができ、大盛り上がりの会となりました。
(東悟子)

■ Day 3 個人課題
最終日の3 日目は個人課題に取り組んでもらいました。その日の朝課題が発表され、4 時間で回答を出すという想像力と瞬発力、表現力、プレゼンテーション力が問われる課題です。課題は以下の5 つから1つ、自由に選択しても
らいました。①桂離宮をあなたの生活空間として照明デザインせよ② コルビジュェ設計・サヴォア邸の照明をデザインせよ③浅草(雷門・仲見世・伝通院通り)を光で再生せよ④光の茶室をデザインせよ⑤ 2050年の「住宅」 or「 地下空間」 o「r コンビニ」の光環境を提案せよ。課題の①②③は具体的な建築や環境に対する照明デザインですが、④⑤は自由な発想でのデザインプロポーザルが要求されました。よーいどんで一斉に始めた個人課題ですが、その取り組み方は様々。どんどん調べて、どんどん手を動かす人もいれば、どの課題を選ぶかで長時間費やす人も。前日に習得した光の表現方法を個人課題にも活かし、苦労しながらも光の設計に取り組んでいました。個人課題の発表では1 人4 分の持ち時間。それぞれの個性を活かした興味深いプレゼンテーションとなりました。個人課題は面出が優秀と判断したものが表彰され、浅草の光環境をデザインした学生が最優秀賞となりました。最優秀賞だけでなく、3 日間最後までやり遂げた学生23 名には修了証を授与。最後にデザイン塾の感想や反省点を全員が述べて会が終了。後には全力でダッシュしたような爽快感と疲労感、そして充実感が残りました。企画立案からイベント当日まで2 か月という短い準備期間でしたが、参加した学生からも所員からも評価が高いワークショップとなりました。学生のバックグラウンドがバラエティーに富み、個性豊かだったことも成功の一因だったように思います。
1 日目に座学でインプットし、その夜街に出てインプットしたものを実際に見て体感し、そこで見たものを持ち帰りグループで議論し、改善案をグループで提案。そこまでで得たものを最後は個人に立ち返り、個人課題を熟考しアウトプットする。この密度の濃い3 日間は、参加学生にとっては効果的だったのではないでしょうか。レクチャーの時間配分、参加人数や会場レイアウト等、再考すべき課題も残りましたが、我々スタッフにとっても、照明デザインをわかり易く解説できる方法を検討して準備したり、学生と一緒に街歩きやディスカッションを行うことにより、学生の視点を知ることができたりと、いい刺激になりました。このデザイン塾は今後もLPA の活動としてスタッフが順番に携わり、更に内容の濃いプログラムに育てていきたいと感じております。学生団員の方は是非来年ご参加下さい。   
(東悟子)

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