照明探偵団通信

照明探偵団通信 vol.140

Update:

発行日: 2025年 8月 6日
・Light-up Ninja in 広州(2025.06.11-06.12)
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Light-up Ninja in 広州

中国で初のライトアップ忍者イベントを開催!
2025.06.11-06.12 林 晃毅

中国の広州で「ライトアップ忍者」を初開催しました。広州美術学院の学生たちは地域コミュニティと一緒に仮設的な夜間アートを制作し、持続可能な都市の闇と文化的な物語を通して、光の犯罪者と向き合いました。

ライトアップパフォーマンス
今回のイベント『ライトアップニンジャ』のポスター

2025 年6 月11 日から12 日にかけて、広州大学城の南亭村で「ライトアップ忍者」を中国で初めて開催しました。今回は広州美術学院と共同でこのイベントを企画し、同学の教員である林紅教授、楊一丁先生、陸海峰先生方も熱心に参加くださいました。また、広州照明学会からも支援を受け、CDN ライティングからは照明器具や技術スタッフなど、多くの支援を頂きました。

ライトアップニンジャの主な目的は、タワーや橋、城などを贅沢に照らすようなモニュメンタルなものをライトアップすることではありません。むしろ、日常に埋もれた風景を照らすことで、ごくありふれたものの中に夜の魅力を発見する実験的試みです。学生たちに、光を付加するだけでなく、不必要で不快な光を排除することで、ちょっとしたことでも劇的に身近な夜景に美しさと快適さを生み出すことを学んでほしいと考えました。

■ 1日目:6月11日
LPAとCDNのスタッフ、教授陣、そして約30名の学生が、広州美術学院のアート&光環境ラボに集まり、オリエンテーションが行われました。林紅教授は「夜間生活のための夜間照明」について講演し、面出団長は「都市照明の未来」と「照明探偵団について」をテーマにレクチャーを行いました。その後、東からは「ライトアップ忍者」イベントの進行について説明がありました。

学生による光の提案

短い休憩の後、参加者たちは現地調査とライトアッププロポーザルを発表しました。「Respect: Ancestral Hall」「Confluence: Square」「Float: Ferry」の3つの学生チームが、それぞれの調査とデザイン案を発表。面出団長は3つの提案すべてに強い関心と支持を示し、特に夜景を創り出すパフォーマンス的なアプローチを高く評価していました。その後、教授陣が各グループのコンセプトをさらに洗練させるための専門的なアドバイスを行いました。

学生の発表に続いて、CDNのスタッフから機材の使用方法(配線、ケーブルのセットアップ、スイッチ制御など)について詳細な説明が行われ、各チームそれぞれどのように器具を配置するかなどのディスカッションが行われました。

日没後、各グループは南亭村のそれぞれ指定された3つの場所に移動し、照明テストを行いました。先生方は各グループを順に訪れ、指導と改善案を提示しました。日没が19:30頃と遅かったためこの作業は21:00過ぎまで続きました。

豪雨のため一旦お寺に避難

■ 2日目:6月12日
ライトアップニンジャ当日、再びライトラボに集まり、本番のパフォーマンスの実施について話し合いました。各チームは、照明を拡散するための装置の製作、照明のオン/オフ手順、参加者の移動方法、照明シークエンスのロジック、そしてダイナミックなストーリーテリング効果を達成する方法を体系的に確認し、本番で正確に行えるよう厳密な計画を練り上げました。

その日はちょうど台風がこのエリアを通過中であったため、チームが現場に向かう途中、突然激しい雨が降り出し、一部のメンバーは祖廟の中に避難しました。幸いなことに、午後5時頃には天候が回復し、「忍者たち」は再集結して現場での作業を再開することができました。この予期せぬ天候は、プロジェクトにさらなる試練を与えることになります。

雨が上がった後の午後遅く、チームはそれぞれの指定された現場に到着し、最終準備を開始しました。CDNの技術チームが正確な照明器具の配置と微調整を指導し、安定した電力供給が確保されました。「忍者たち」は、照明の位置とパフォーマンスの動きを注意深く確認し、フラッシュモブの照明パフォーマンスが完璧に展開されるよう、繰り返しリハーサルを行いました。

■ フラッシュモブ発表
夜には、3つのチームがそれぞれのテーマに沿ってフラッシュプレゼンテーションを実施しました。これは「ライトアップ忍者」の核となる価値観――日常の中に美しさを発見し、育むために光を使う――を体現する劇的なシーンを創造したものです。

◇ チーム「Respect: Ancestral Hall」
祖廟での現地調査を通じて、光と影の4幕構成の物語を作成。空間を生き生きとした場に変容させました。

  • 1幕 「光を灯し、福を招く」: 縁起の良さを象徴する赤い光の「カーペット」。ベース照明が扁額や対聯(ついれん)を照らし、太鼓の音が赤い輝きを通して厳粛な氏族の結束を強化。
  • 2幕 「輝きと繁栄」: 赤い懐中電灯がオレンジ色の投光器と重なり、提灯のテクスチャーを透過する。温かい色合いが揺らめく炎を模し、儀式空間に家族の活力を吹き込む。
  • 3幕 「魚と福」: ほぼ完全な暗闇の中、太鼓の音が地球のように響き、浮かぶ魚の提灯を導く。懐中電灯はトラッキングライトとして機能し、竹の影の模様がリズミカルに絡み合い、「福の海に魚が躍る」情景を喚起させる。
  • 4幕 「子孫繁栄」: 静寂が4本の光線によって破られ、輝く舞台が現れる。参加者のシルエットが祖廟のファサードに投影される。光を墨、人を筆として、子孫の繁栄を描き出す。

廟という独特の雰囲気を持つモチーフにこの4幕のストーリーがうまくマッチし、荘厳だけどミステリアスなパフォーマンスとなりました。

Team リスペクト本番 幸運の赤い光で照らされた廟

◇チーム「Confluence: Square」
「集まり」をテーマに、ガジュマルの木の広場における人々の夜の繋がりを再燃させることを目指し、4つのシーンがデザインされました。

  1. ガジュマルの木を縦に冷白色の光で照らし、遠くからも見える印象的な柱を形成する。
  2. 地表からの白い光がエリアを区切り、集会のための「光のカーペット」を作り出す。
  3. 樹木の根元から放たれる温かい黄色の光が、樹冠を包み込み、心理的な快適さをもたらす温かい光のゾーンを確立する。
  4. インタラクティブなフィナーレ:シェアサイクルのカゴに置かれた色が変わる懐中電灯が、ダイナミックな光の点と影を投影。参加者は光源を操作したり、設置場所を移動させたりすることで、影の形を変えることができる。これにより、遊び心のある個人またはグループの体験を生み出し、没入型の参加を通して「Confluence(集合)」が出現する。

ガジュマルの下に自転車やダンサーなど動きのあるものが集い、様々な色の照明に照らされ場面が次々と変容して行く。日常から非日常へと場面を転換させることがとてもうまくできたように思います。

Team 集合本番 ガジュマルの下はカラフルな広場に変容

◇チーム「Float: Ferry」
現地調査の結果、南亭埠頭が広府地域の伝統的なドラゴンボートの漕ぎ場であり、豊かな地域文化を持つことが明らかになりました。この遺産に触発され、「自然光から学ぶ」というコンセプトも取り入れ、自然の「月光」の持つ、柔らかく、静かで、微妙に神秘的な輝きを照明の原型として採用しました。「月誕生」「龍昇り」「龍舞」の3つの段階からなる物語が展開されました。

  1. 「月誕生」:月がゆっくりと昇り、小島や水面に銀色の光を投げかけ、その下で休眠していた舟を目覚めさせる。
  2. 「龍昇り」:舟が生命を得て、その静止した形から脱皮するように見える。
  3. 「龍舞」:空間を縫うようにダイナミックな龍へと変貌。

この3幕構成のシーケンスは、地域文化、自然光のインスピレーション、照明技術を絡み合わせ、人間と光の間のインタラクティブな体験を創造しました。

雨でポータブル電源が故障したり、ワイヤーが水没したり、地元の人に場所を移動してほしいと言われたり、本番1時間前に様々な問題が挙がりましたが、何とか無事全チームパフォーマンスを完成させることができました。

Team フロート場所を移動させられ、意図とは違う演出に
広州美術学院のアート&光環境ラボにて集合写真

■ 閉会式
ライトアップ忍者ワークショップは記憶に残る形で終了しました。その後、参加者は多目的ホールに集まり、ワークショップの成果を振り返るサロンと閉会式が行われました。広州美術学院の卒業生の劉美亮氏と海綿氏の素晴らしい広東オペラの披露もありました。

また当日は面出団長の誕生日だったこともあり、参加者全員で、伝統的な広東式で誕生日をお祝し、照明探偵団リーダーに心からの感謝を伝えました。

2日間という短時間に内容ぎっしりのワークショップでしたが、学生にとっても我々にとって実りあるすばらしい時間となりました。(林 晃毅)

お疲れ様でした!

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