探偵ノート

第57 号 – 素人の視点から見たデザイン

Update:

Interviewer: Jio Yeung

Jio:私はゲームデザイナーを目指していましたが、残念ながらあきらめました。

デザインは素人だと思っているので、今回のインタービューは色々勉強になりそうで楽しみです。まず、面出さんにとってデザインは何でしょうか?

面出:デザインを辞書で調べると、「設計」という意味しか記載されていませんが、私は「意図」だと思っている。生活の中の小さな工夫だと思う。形がないデザインもあるね。味覚、音覚、視覚、触覚、嗅覚…言わば五感で感じるもの。料理もデザインだ。色々な食材を工夫し、人を幸せにさせるよね。

Jio:では、いいデザインとは何でしょうか?

面出:生活をアップグレードさせながら万人を感動させる、言わば“幸せのドア”かな。

Jio : 私も面出さんと同じ考えがあります。やはり人が感動する、幸せを感じさせるのが重要なポイントですよね。一方でデザインは人の好みにもよりませんか?

面出:もちろんデザインの好き嫌いはあるよね。例えば日本のデザインを中国やインドに移しても、受けられないことも多い。でも、良いデザインは皆に受け入れられる理由があるはず。例えは文化的に、健康的に、もしくはエコに繋がっているとか。一本のペンでもどんな形にして、どう握ればよいか技能研究する人間工学という専門もある。

Jio:私は自然界にもデザインは存在すると思っています。この写真は私が旅行中に撮ったものですが、真横に伸びているこの木は人工ではなく、木が自ら光を求めた結果自然とこうなったものです。生物の進化はまさにデザインであると思いますし、何故人間が二足で歩くができ、魚が魚の形になり…という風に様々な物事から自然界のデザインを感じ取れます。木漏れ日は太陽の光が木の葉に当たり、光がまた地面に漏れていくといった情景で、これは人工のものではありませんが、感動します。

面出:そうだね、日本には“八百万の神”と言う神様がいて、自然界のあちこちに神様が宿っている。砂浜を歩きながら貝や折れた珊瑚を拾って見た事あるでしょう。自然のファクター、黄金比があって、これが美しさの秘密につながっている。優れたデザイナーは皆自然の美しさを学んで設計しています。

Jio : 芸術と美学とは何でしょうか?

面出:美学は美しいを科学する学門。一方で芸術は、人を理屈なく感動させるものだね。美術や音楽の価値観も時代と共に変化していくからね。

Jio:私はよくゲームをしますので、3Dの進歩が良く分かりますが、今の3D技術は人間をまるで本物のように作る事ができ、変な感じもします。こんな綺麗な肌はないとか、やはり人工物だという印象を受けます。面出さんから美空ひばりさんの3D画像の話を伺ったと思いますが、音声まで作り上げてたんですよね。

面出:そう。あくまで3Dとは技術の進歩によるもの。どう美しく表現し、人を感動させるのかはデザイナーの仕事になる。芸術は人の感性を引っ張り出すのが重要だと思う。

Jio : ストックホルムへ旅行した時、議事堂の天井を見て絵画と構造体に光も当たっていて、とても綺麗で感動しました。東京国際フォーラムのアトリウムの構造体も同じ感動がありました。また建築スタイルとしてはインダストリアル風と構造主義が好きですね。私はデザイナーではないので、上手く言えませんが、柱や構造体をあえて明確に表現している、スチームパンクが格好良かったと思います。

面出:Jioさんが自分は「素人」と言いましたが、私は、生活者は皆デザイナーでもあると思っている。もちろんレベルの差はあるけれど、インテリアでも、料理でも、テーブルセッティングでも、誰でもちょっとしたデザインをすることは出来る。誰でも小さな事からデザインを楽しむのがいい思うよ。

Jio : 2013年の映画“ライフ”の台詞ですが、面出さんにシェアします。英語からの直訳ですが、“美しいものは注意を求めません。”

面出:いい言葉だね、デザインの目的は人の目を引く事ではない。デザインを商品化してやり過ぎることが多いけれど、下品なデザインにならないようにしたいよね。

Jio:そうですね、今日は色々勉強になりました。

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