照明探偵団通信

照明探偵団通信 vol.147

Update:

発行日: 2026年 4月 24日
・照明探偵団倶楽部活動 1 / 照明探偵団Jr. こどもワークショップ(2026.03.20)
・照明探偵団倶楽部活動 2 / 第78回街歩き:新宿(2026.03.05)
・照明探偵団倶楽部活動 3 / 第75回サロン: 新宿街歩きレビュー(2026.03.19)
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照明探偵団Jr. こどもワークショップ

夜の佃島に眠る『宝』を光で呼び起せ!
2026.03.20 瀬川 佐知子 + 黄 思濛 + 野村 桃江 + 東 悟子

3月の春休み前の3連休初日に、こどもワークショップを開催。今回はLPAオフィスのある佃島で光の英雄と犯罪者、そして夜の闇に隠れている宝物を探しに、こども達と街歩き&ライトアップ実験を行いました。

ワークショップチラシ

桜には少し早かった3月20日に、2025年度のこどもワークショップを開催しました。この企画は毎年開催しており、こども達が「光」をテーマに街を探検したり、ものをつくったりして、光の持つ力や影響について学ぶ体験型プログラムです。こども達は暗くなってから外を歩くことがまだ少ないため、普段何気なく見ている風景も夜になると違う姿になったり、光の当て方一つで印象が大きく変わることを体験し、街の中の光の関係について考えるきっかけづくりを目的としています。
今回はLPA事務所のある佃島を舞台に、「光の英雄と犯罪者」は存在するのか、また夜の闇に沈んでしまっているランドマークを探し出し、光を当てることで新たな魅力を引き出す「夜の宝」の発見にも取り組みました。こども達は歩きながら街を観察し、どんなものをどのように光を当てたら面白いかを実際に照らして確かめたり、写真を撮って記録に残したりしました。

佃島は、徳川家康が大阪から呼び寄せた漁師たちによって築かれた歴史ある島であり、現在は江戸の面影と高層マンションが共存するエリアです。隅田川沿いの桜並木や、江戸時代の風情を残す佃小橋や佃堀、家康を祀る住吉神社と、それらと対比するように立ち並ぶ高層ビル群など、古き良き下町と現代的な景観が凝縮されています。そんな魅力が詰まったエリアでのこどもワークショップ。こども達がどんな光の英雄と犯罪者、夜のランドマークを探し当ててくれるのか、とても興味深いワークショップとなりました。(瀬川佐知子)

16 名のこども達に参加いただきました。

当日は5歳から12歳までのこども達16名が参加。まずはオリエンテーションを行い、照明デザイナーはどんなことをする人たちか、照明探偵団は何者か、その活動内容を解説。その後にワークショップの流れを説明しました。あわせて、光の当て方によって見え方がどのように変わるのかを実際に体験してもらい、光の面白さを感じてもらうところからスタートしました。

その後、まだ外が明るいうちにライトアップの対象となる場所を下見しました。どこをどのように照らすと魅力的に見えるかを考えながら歩くことで、それぞれの中にイメージを膨らませていきます。
スタジオに戻ると、早速デザインスケッチの作成に着手。白黒印刷された対象物に色鉛筆でライトアッププランを書き込んでいきます。実際の照明デザイナーの手描きスケッチを参考にしながら、「どこに」「どんな色の光を」「どう当てるか」を考え、まるでプロになったかのように真剣に図面を描いていきます。周りの子のアイデアも気にしながら、それぞれが個性あふれるプランを仕上げていきました。

そうしているうちに外はすっかり暗くなり、いよいよ自分たちの考えた案を実際に試す時間です。今回のライトアップ対象の中で特に人気だったのは住吉神社でした。並ぶ提灯や狛犬、本殿、さらに隣接するレンガ造りの蔵など、魅力的な要素が多く、さまざまな光の演出に挑戦することができました。
こども達はカラーフィルターで光の色を変えたり、懐中電灯のズーム機能を調整したりと工夫を重ね、時には数人で協力して一つの作品をつくる姿も見られました。
オリエンテーションで学んだ「光の英雄」と「光の犯罪者」の考え方もよく理解しており、「これはきれいだから英雄だね」「でも私はあまり好きじゃないかも」といった意見交換も自然に生まれていました。 

光の英雄と犯罪者も探してきました

約30分間のライトアップを終えた後はスタジオに戻り、お弁当を囲みながら、それぞれが見つけた「英雄」と「犯罪者」を発表しました。幼稚園児から小学校高学年まで幅広い年齢のこども達が参加していましたが、光に対する感じ方には大きな違いは見られず、神社入口にあった眩しい街路灯が多くの子どもたちから「犯罪者」として挙げられたのが印象的でした。
今回が初参加の子どもたちも、継続して参加している照明探偵団Jr.のメンバーも、それぞれに光への理解を深めることができた一日となりました。光を「見る」だけでなく、「考える」体験を通して、これからの視点の広がりが期待されます。(黄 思濛)

1年に1回は開催しているこどもワークショップももうすぐ20回を数えます。暗闇体験、夜景スケッチ大会、行灯作成、夜の街歩きと様々なプログラムを日本だけでなく、台湾、香港、シンガポール、ドイツのこども達と行ってきました。
今後も引き続き照明やあかり、暗さに対しての感度が高まるよう、こどもワークショップを継続していきたいと思います。(東悟子)


第78回街歩き: 新宿

光のレイヤーで紐解く、新宿の過去・現在・未来
2026.03.05 坂口真一 + 發田隆治+俵田明

新宿という街が持つ、多様な顔(超高層ビルの近未来感、歴史ある神社の静寂、昭和の面影を残す路地裏)を、照明環境の観点から観察・比較。同じ「夜の新宿」でありながら、エリアごとに異なる「光の密度」と「色彩」が、都市のアイデンティティをいかに形成しているかを体感します。

2025年度最後の街歩きは日本最大のターミナル駅新宿。人でごった返した金曜日夜の開催となりました。広い新宿を、西口歌舞伎町周辺、都庁周辺、南口~西口と3つのエリアに分け、街歩き。人を呼び込むたくさんの光を発見した会となりました。

照明デザイナー角舘さんの解説を聞きながらの街歩き

■1班:新宿駅西口エリア
1班は、巨大ターミナルである新宿のおもに歌舞伎町を中心に、この街をよく知る照明デザイナーの角舘政英さんご案内のもと、都市を形作る「光」のあり方を観察しました。

犯罪者はやっぱり歩行者の目に直接入る眩しさ(グレア)を放つ街灯照明です。不必要に明るすぎる看板や、光源がむき出しの無機質な投光器も見受けられました。明るすぎる看板ですが、新宿歌舞伎町という街ではこれもステータスでこれがないと歌舞伎町という感じがしないのかもしれません。逆に看板がついていないと寂しく感じます。

こんなギラギラした街にも英雄が!新宿区役所の光の原点であるようなガス灯?ゴールデン街のある意味落ち着いた昭和感残る雰囲気、ちょっと照らされているゴジラの爪も私は英雄に感じました・・。ゴジラの爪が街を照らしている!!

新宿は、商業的な喧騒と洗練された都市計画が混在し様々な光の表情がみられる街です。
良い照明とは「すべてを明るく見せること」ではなく、必要な場所に適切な質と量の光を配置することだと改めて感じた気がします。

ギラギラしたザ・歌舞伎町という通り、神社周辺、ゴールデン街、それぞれ個性をもった光があります。新宿は駅周辺の開発がこれからますます進み、数年後に街歩きをするとまた違った表情が見れるのではと思います。(坂口真一)

都庁プロジェクションマッピング

■2班:東京都庁周辺
2班は新宿都庁から調査を開始し、都庁広場でプロジェクションマッピングを鑑賞しました。見上げの角度では都庁内の照明と重なり視認性が低下するため、少し離れて見る方が良いという意見がありました。

その後、新宿NSビルのアトリウム空間へ移動。この建物は1982年に竣工し、2011年に照明改修されています。建築照明として学ぶことの多かった竣工当時の光は今はもう見ることができないのが残念です。現在のEVホールの内照照明は輝度が高く、強いまぶしさを感じる点が課題として挙げられました。

都庁から新宿中央公園へ向かう横断通路では、門構え上部が照らされ、周囲のビル群と調和した落ち着いた光環境が形成されていました。公園内のSHUKNOVAでは照明の統制が取れ、空間に統一感があり来訪者を引き込む魅力がありました。施設内のスターバックスでは、ライティングトラックとスポットライトにより、明るさと居心地の良さが両立されていました。

新宿アイランドでは、光の塔の柔らかく優しい光と水面への反射が印象的でした。一方、パティオはLED化により光が中央に印象的に集められていた以前とは異なる雰囲気となっていました。今回の調査は建築照明の継承について考える有意義な機会となりました。(發田隆治)

高島屋背景に卒業を祝う高校生 新宿夜景が映えスポットに

■3班:新宿南口~西口

新宿の夜を歩いた記録として、見たままを素直に記します。我々第3班は新南口のサザンテラスからスタートし、駅南東、旧アルタ前を通過。そして線路下をくぐって思い出横丁、西口側へと巡りました。新南口の光は陰影を保ちながら人を迎え入れ、ベンチ下やデッキ上では3〜4 lx程度の柔らかな暗さが足元に溜まり、安心と静けさを同時に感じさせます。

高島屋東側軒下の通りは4000Kの統一感の下で300~500 lxでも店舗や買い物客の表情を明瞭に浮かび上がらせていました。

南東ガード下は過去の湿った薄暗さから一変してあか抜け、光の良き仕業による安心感がそこにはあり、ドンキ前はLEDディスプレイの影響で810 lx / 7111 K、鋭く青白い輝きが目を射るようで、周囲の色を奪ってしまいます。武蔵野通りでは270 lx / 3096 Kの落ち着いた暖色が、ビル壁の質感を柔らかく照らし、歩行者の影を長く引き伸ばしていました。ヨドバシカメラ軒下は1011 lx、店内は2355 lxと圧倒的な明るさで、旧アルタ方面の暗部30 lxと強い対比が見られました。

南東ガード下 安心感のある空間

思い出横丁は991 lx / 3072 K、昭和レトロな暖色が木造の壁や暖簾を包み込み、光が和やかさを演出。ただ、横丁から出たとたんに松屋前の強い光が一瞬にして我々を現実へ引き戻してしまいました。

西口歩道橋上に上がると、小田急HALCの壁面にあたるアップライトが新宿らしく、賑やかで騒がしい雰囲気を作り出すと共に、新宿西口のランドマークの役を果たしているよう。またビックカメラの赤、小田急の青が高彩度で空間に深みを与えていました。

色温度の適度な混在、局所的なグレア、温かな提灯や不揃いな電球の共存──これらはこの街新宿の現在の生の光環境であり、良いものも、改善の余地も、すべてが新宿の今の夜の表情としてそこにありました。(俵田明)

エキサイティングな光、我こそはと競うように光の量を足していっているギラギラした光、昭和感残る懐かしい光、人々がくつろげるよう配慮された穏やかな公園やカフェのあかり、新宿にはありとあらゆる光の現象を見ることができました。この様々な夜の表情が観光客を呼び寄せる新宿の魅力の一つにつながっているのかもしれません。
今後も駅周辺の開発が進み5年後、10年後には全く違う表情になっているかと思います。探偵団も今後も新宿の夜のウォッチャーとなって、調査し続けたいと思います。(東悟子)

街歩き後の懇親会では、それぞれの班から英雄と犯罪者が発表される

第75回サロン: 新宿街歩きレビュー

2026.03.19 東 悟子

2026年3月6日に開催された照明探偵団の「新宿街歩き」を受け、1班から3班までの参加者が新宿の照明環境(光の英雄と犯罪者)について発表を行うサロンが開催されました。今回の街歩きのテーマは「光のレイヤーで紐解く、新宿の過去・現在・未来」であり、エリアごとに異なる光の密度と色彩が、新宿のアイデンティティをいかに形成しているかが考察されました。

LPA オフィスでお弁当を食べながらのサロン

新宿街歩きの報告会をLPAオフィスで開催しました。新宿街歩きは東口の歌舞伎町を中心に歩いた1班、都庁を中心に歩いた2班、南口から東口を通って西口のんべい横丁と広範囲を歩いた3班と3つの班に分かれて行いました。レビューではエリアごとの光の特徴が報告されました。

歌舞伎町・新宿三丁目エリアを巡った1班は歌舞伎町一番街や東急歌舞伎町タワーなど「目立ちたい」という欲求が溢れるネオンやサインを観察。サインで十分明るい中、さらにまぶしい街灯やLEDのぎらぎら感の強い照明は「犯罪者」と指摘されました。また、周囲が明るすぎるためか逆にかなり暗く感じる歌舞伎町公園が、街に緩急を与えている点にも言及されました。
一方で、花園神社は喧騒から逃れる避難所のように明るさが抑えられ、レトロな伊勢丹の光とともに、街の静的なレイヤーを感じさせました。ゴールデン街の怪しげな光や思い出横丁の提灯は、思わずカメラを構えたくなる「英雄」として高く評価されました。

今回地図上に写真を投稿していくアプリを初めて試してみました。街歩き時に参加者に投稿してもらった写真をそのまま報告会にも転用できるすぐれもの

2班は都庁広場からNSビル、新宿中央公園周辺の光環境を報告。都庁のプロジェクションマッピングは高層ビル街のアクセント(英雄)とされた一方、残業者の窓の光があればもっと良いという声や逆にその光が邪魔になっている、ショーが業務への支障(犯罪者)になっているのではないかという懸念も聞かれました。
NSビルでは、EVホールやブリッジ下面の高輝度な白色LEDが痛いほどまぶしく、色温度のバラツキとともに犯罪者とされました。さらに、改修工事でウォールウォッシャーからダウンライトに変更された点も残念だとの声が多く聞かれました。
対照的に、新宿中央公園への横断通路の落ち着いた電球色や、カフェ(SHUKNOVA)の居心地の良い照明は、仕事疲れを癒やす英雄とされました。新宿アイランドではパティオの優しい光が評価されたものの、初期の光の演出が失われスポットライトがグレアを生んでいる現状が惜しまれました。

3班からは新宿駅周辺の報告。南口周辺では、昔から変わらない光のグラデーションの美しさが英雄として再評価されました。一方、大型家電量販店やドン・キホーテの巨大LEDディスプレイは「痛いほど眩しい」「暴力的」な犯罪者として厳しく指摘されました。特に、昔ながらの思い出横丁の非常に優しく魅力的な光を体験した直後に浴びる巨大ディスプレイの現代的で支配的な光は、「あまりにも暴力的」だと表現されました。
また、夜空にひときわ目立つNTTドコモ代々木ビルのカラフルな光が、周辺のビル群に映り込んでいる様子も新宿ならではの風景として切り取られていました。

繁竹さんからプロジェクションマッピングの解説を聞く

今回はプロジェクションマッピングの制作の仕事をされている繁竹雄志さんにプロジェクションマッピングの歴史や進化などの解説もしていただきました。

各班の発表を通じ、商業主義的な過剰な光(犯罪者)と、路地裏や神社の静寂、公園の落ち着いた憩いの光(英雄)が混在する新宿の多面性が明確に浮き彫りになりました。高層ビル群から昭和の面影を残す路地裏まで、より快適に過ごせる照明環境のあり方を考えさせられる、非常に充実したサロンのレポートとなりました。(東悟子)

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