照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.14

Update:

発行日:2002年10月25日
・海外調査レポート1/「窓あかりを探し求めて」~サンフランシスコ~
・海外展示会レポート1/「ライトフェアー2002」~サンフランシスコ~
・海外展示会レポート2/「PLASA 2002」~ロンドン~
・海外調査レポート2/「照明探偵団 in London」~サンフランシスコ~
・国内調査レポート/「五箇山合掌造り民家生活」~富山県・五箇山~
・照明探偵団倶楽部活動1/街歩き報告(横浜大さん橋 + 赤レンガ倉庫)
・照明探偵団倶楽部活動2/研究会サロン報告
・“Eyes in TOKYO”/~新宿・歌舞伎町~
・面出の探偵ノート
・探偵団日記

「窓あかり」を探し求めて 

 

San Francisco, U.S.A 2002/06/02-06  森 秀人 + 田中 謙太郎

1.サンフランシスコ・アラモスクエア
サンフランシスコ・アラモスクエア

機能主義のために明け方まで照らしつづけている都市の光と安らぐことを求めた住宅の光は、相反する性格を持つ。今回はその安らぎを感じるであろう光を少しでも垣間見る為に、住宅の窓あかりを探し求めた。
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3.高級住宅のあかりは多く点灯していた
1. 高級住宅のあかりは多く点灯していた
4.あやしいカーテン越しのあかり
2. あやしいカーテン越しのあかり
5.スタンドなどの間接照明が多かった
3. スタンドなどの間接照明が多かった
6ホッとさせるエントランスのあかり
4. ホッとさせるエントランスのあかり

■ 灯らない窓

暑いのか寒いのかわからない6 月初旬、まずは探偵の基本である足で街を歩き周り、ほのかに光る窓あかりと煌々と輝く都市の光を観察できる場所を探した。地図で見るとたいした距離でないのに、さすが坂の街サンフランシスコ、足が棒になった。ここは中心部から40分ばかり歩いた住宅地の小高い丘、アラモスクエアというところである。そこにはビクトリア様式の住宅が建ち並び、背後にはサンフランシスコ市内の摩天楼が見える絶好のポイントである。日没の近い8時30分ごろようやくこの場所にたどり着くことができた。
カメラを構え待つこと40分、薄暮の空に煌々ときらめく摩天楼が現れてきた。しかし、期待していた住宅の光は、数件の玄関灯と1つの窓あかりだけ。その窓もカーテンにより閉ざされており、中の状況はわからない。想像だけの長い時間だけが流れた。結局、気配も感じられなかった。
全て光が灯ることの方がおかしいと思いながら、足早に次のポイントを捜し求め夜を徘徊したが、想像していたより、はるかに窓あかりが少ない。夜遅くまで遊んでいるのか、寝ているのか、空家なのか知る由もないが、明るい街路灯の光だけが目に付いた。

■ ボケた窓あかり

中高層のマンションが建ち並ぶ、見慣れた景色を見つけた。白や電球色のばらばらな光が、外観を特徴付けている東京の景色と比べ、サンフランシスコは全て電球色でぼんやり見えて、何か物足りなさを感じた。
中が見える窓があった。そこには天井を照らすフロア-スタンドが幾つかあるだけ。他の部屋を見ても、同じであった。東京のような照明器具が天井にないのである。スタンドの光だけで部屋全体をやさしく照らし出している。外から見ている我々には、照らされた天井だけが見えてる訳で、天井の照明器具がそのまま見えている東京の窓あかりより、ぼんやりしているのである。しかし、その窓あかりには、東京では感じられなかった光のこだわりが感じられた。その後、2日間、電車、車などで窓あかりを捜し求めたが、最初の印象と同じだった。
予想通り、光は電球色、スタンドを用いたぼんやり見える窓あかりが多かった。


Eyes in Tokyo 第2回 新宿・歌舞伎町

Khoo Wee Shen

外国人の目にトウキョウの街はどんな風に映っているのだろうか? “Eyes in Tokyo” 第2 回は人種のるつぼ新宿・歌舞伎町の街をシンガポーリアンのS h e n に歩いてもらいました。妖しげなあかりに誘われて彼が見てきたものは何だったのか???

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You must have heard a lot about this famous section of Tokyo, and quite likely everything you’ve heard is true.

Tokyo’s infamous Red Light District, Kabukicho, has been servicing the personal needs and desires of locals and visitors for fifty years.

At dusk the neon lights come on, the barkers come our, and the salarymen come in en masse. There is a certain charm to the area thanks to the brightly coloured neon lightsthat tempt you to linger longer. Yes lights. Not sex. Truth to speak, the lights compliment the sex that is the trademark of this district. The lights reflect the tolerant attitudes towards prostitution, soft drugs and pornography
and an acceptance that these things are human. More than that, that these things are business – great business indeed. Like the illuminated advertising billboards that line the façade of the buildings of 42nd Street in New York City, the neon lights at Kabukicho call out to the innocent passerby to wander
into it’s narrow but active streets and even into the “entertainment” establishments housed within its buildings. In fact, from a distance you almost do not see the buildings, just the neon lights. The image of Kabukicho, near or far, is almost always represented by . the image of the multi-coloured neon lights.With these bright neon signs, colours,crowds, hasslers and the smell of sex all over, the whole environment is one of almost complete chaos – perfect for a place like this.

In many ways Kabukicho is the very best and very worst of Tokyo. There are some thirty Yakuza gangs controlling the streets in and around Shinjuku, and especially in Kabukicho.The exploitation of women is rampant, and after three a.m. Kabukicho turns into a wasteland of nightlife leftovers. But remarkably, it is still safe. Even during the peak evening hours when an estimated half-million people make their way into Kabukicho there is an amazing collection of social and class diversity. Construction workers rub shoulders with salarymen and students in a carnivallike atmosphere free from animosity. Even the gangs have achieved a kind of social integration. Currently, the Chinese Mafia rule
the streets of Kabukicho. The complexity of life on the street level is almost reflected by the complexity of lights above. From afar, Kabukicho stands out even amongst the bright lights of the neighbouring shopping hub. The intense, loud multi-coloured sea of neon seems to reflect the intensity of the activities and life that goes on within. Each neon sign blares out in its out colour, brightness and rhythm but is hardly perceivedalone. The multitude is these neon signs melt together to form a whole – a sea of lights that activates and forms a veil to the activities.

Yes these lights are indeed a veil to what goes on within – sex, food, entertainment and business. Despite the seeming chaos, there is a hidden structure to the place and it can be read in layers – lights, people, money. The lights appear as the outermost layer screaming, declaring the existence of this mega-entertainment hub. Then comes the people who gives life to this place – the barkers, prostitutes, bartenders, customers, pachinko players, students, gang members etc. And finally behind this lies the bottomline – money. At the end of the day the lights and the people exist in Kabukicho for one reason and that is Money.  (Khoo Wee Shen)

PLASA 2002

  

London, England 2002/09/08-11窪田 麻里 + 田中 智香

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1. 会場を2 Fから見渡した

13.PLASA2002アワードの展示エリア
2. PLASA2002 アワードの展示エリア
14.噴霧&プロジェクター・ミラースキャン
3. 噴霧&プロジェクター・ミラースキャン
15.VARILITE。大きいし、器具の機構が見えてすごい!
4. VARILITE。大きいし、器具の機構が見えてすごい!
16.ライトテーブルのブース
5. ライトテーブルのブース

毎年1 回ロンドンで催される「PLASA」は、ちょうど今年で25 周年を迎えた。オープニングに当たる8日にはロンドン入りできず、普段に増してイベント盛りだくさんであっただろう会場の様子は残念ながら目にすることが出来なかったが、恒例のLJ (ライト ジョッキー)などのイベントが行われにぎやかな幕開けとなったようだ。
このPLASA、“エンターテインメント テクノロジー ショー” といった位置付けで、普段はなかなか間近で見ることの無い巨大なキセノンライトやムービングプロジェクターといった照明器具をメインに、噴霧器・噴煙器、ステージの鉄骨ユニット、はたまたクラブシーン無くしては語れないロンドンのナイトライフには必須のDJ盤の数々、etc… 、イベント関連プロダクト全般の展示会である。

今回、照明器具のジャンルで新開発商品として取り上げられていたものの1 つが、Martin 、CLAYPAKYなどのブースで展示されていた1200 W のムービングプロジェクター。ハイパワーの大きな灯体でいながらスムーズな首振りとかなり抑えられたモーターのノイズ、従来の様々なゴボパターン、水・波のような自然のテクスチャー、レンズでの幾何学的模様のバリエーションに加え、このシリーズでは、モーター制御による内蔵バンドアで投影イメージのスムーズな変形が可能となったそうだ。
もう1 つの目玉は、やはりLEDを使った製品である。こぶし2つ程の大きさのヘッドの小型プロジェクターや、リニアのLEDユニットが乳白アクリルチューブに入って発光し、連結して調光・カラーチェンジが自在に制御できる

ような製品、また巨大な網面にRGBのLEDの粒を一面につけたモニター等々、かなり輝度もしっかりしていて、従来の光源の一部を担える代替製品として着々と進化しているように見えた。LEDを光源とした室内ユースの小型ムービングプロジェクターがめまぐるしく動き、スピーカが割れそうなほどの大音響が溢れたあるブースでは、LEDを使った発光するドリンクテーブルなども製品化されていて、さすがは大人のナイトライフ文化がきちんと根ざしているお国柄、ビジネスにもちゃんと反映されているのだなぁ、などと思いながらビデオをまわしていると、すっかりそのブースでバー・モードに入っていた(アルコールも入っていた?) お兄さんたちに手を振られ、ちょっぴり気恥ずかしくなってスタコラそのブースを後にしたのだった…。


第14 回街歩き 横浜港大さん橋国際客船ターミナル+ 赤レンガ倉庫 

2002 年8 月19 日 

■街歩きレポート・その1

17.横浜MM21の夜景に見とれる団員たち
1. 横浜MM21 の夜景に見とれる団員たち
18.赤レンガ倉庫のライトアップ
2. 赤レンガ倉庫のライトアップ
19.両側に見えるのが赤レンガ倉庫1・2号館.中央は大さん橋
3. 両側に見えるのが赤レンガ倉庫1・2 号館.中央は大さん橋

話題の建築が次々オープンした横浜M M21地区。今回の街歩きでは、4月に文化・商業施設としてリニューアルオープンした赤レンガ倉庫と、6月に部分開業した国際客船ターミナルに行ってきました。当日は台風13号の影響で開催が危ぶまれた街歩きでしたが、幸い集合時には雨もおさまり一安心でした。
まず、最初に訪れたのは大さん橋国際客船ターミナル。この建築は、’95年の国際コンペで1 等案として選出されたf o a の設計によるもので、柱や梁の無いその有機的形態が話題になりました。全長約430m 、幅70m の巨大な施設が海に突き出すように延びて、波打つ床面は全てウッドデッキで覆われています。全体としては、まるで大きな空母が漂着しているような印象です。さて、これだけ斬新なデザインの建築なのだから、その照明は…!と、期待して見に行ったのですが、その第一印象はまず暗い、ということ。ことに屋上広場は24時間開放されているのに、その明かりには約3mの「く」の字型のポール灯が設置されているのみで、閑散とした感じがしました。照度を計ってみると、ポール灯から離れた所で0.2 ~ 0.3 ルクスと満月の夜の明るさほどでした。

残念ながら新しい光というのは見当たりませんでしたが、特筆すべきは、その屋上広場からの眺めるM M21 の夜景の美しさ。対岸の赤レンガ倉庫や横浜ベイブリッジなどのライトアップまで見えて、団員の皆さんも周囲の景色には目を奪われたようでした。
そして、大さん橋から徒歩にて赤レンガ倉庫へ。ここは1989年に倉庫としての使用が禁止された2棟が、1号館は文化施設、2号館は商業施設として再生されたものです。光の印象としては、建物の鉛直面がライトアップされているのみで、十分に明るく感じられました。ただ、団長からはアップライトしている床埋込みの器具のグレアがひどくて、段差を踏み外しそうになるとの意見も。それでも大さん橋とは対照的に、色温度がオレンジ系の暖色で構成されていて、なかなか居心地よく思えました。今ホットな横浜、まだ足を運ばれていない方は、ぜひ1度ご探訪あれ!(井元純子)

■街歩きレポート・その2

20.内部の折板構造をライトアップしているスポットライト
内部の折板構造をライトアップしているスポットライト

あたりは静かだった。遠くで空がかすかに鳴っている。台風上陸予定だったこの日、照明探偵団は横浜港大さん橋国際客船ターミナルへ向かった。
ここは雑誌で何回も見ていた。初めて目にした時には衝撃を受けたのを覚えている。だから夜の光景は一層楽しみだったのだが・・・アレ?蛍光灯がいたるところにバラバラとついているだけ。足元は真っ暗だ。あのダイナミックなウェーブ状のデッキ、そこから得られるシークエンスは演出されていないようだ。これはショック!この建築、夜は営業していないのかしら。にしては、蛍光灯に徹夜を強いられているような・・・パソコンじゃないけれど、スリープ機能をつけてあげたくなった。

海を少し隔てた向こうには、横浜 MM21 の見事な夜景が広がる。ホテルが建ち並ぶ脇に、赤くボーッと光る塊が見えた。赤レンガ倉庫だ。歩く事15 分、倉庫前に近付くと威圧とも言える、そのどっしりした構えに足が止まった。歴史を感じさせるのは、下方からの強いライトアップのせいかしら。シンボリックに映っている。しかし一つ残念な点があるとすれば、それは昼間と似通ったイメージな事だ。レンガ色に近いオレンジ一色で統一している。心地よい裏切りを夜にはつい期待してしまう先程の大さん橋をこちらから眺めると、白い点が集合し、これも一つの塊になって見える。距離をおくと、建築は構造体から、やがて生物の魂のようなあかりに姿を変

横浜MM21 地区の夜景が、私はとても好きだ。きれいな光は、人を出迎えてくれている気がするから。こんなあかりが、私の住
むまちにも静かに息づくといいな、帰り道にふとそう思った。雨が降り出した。(加藤直子)

五箇山合掌造り民家生活 

 
富山県・五箇山 2002/09/12-16
面出 薫 + 田中 謙太郎

私達、日本人の生活の中に電気による人工照明が入り60年が経つ。今ではありとあらゆるものが人工照明で照らし出され、非常に明るい環境の中で生活をしている。その環境に慣れてしまい、本来の夜の暗さ(闇) などというものは全く忘れてしまっている。今回はそのような本当の闇を体験しながら自然照明(火の灯り) にこだわって調査を行った。

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1.いろりを囲んでミーティング
2. いろりを囲んでミーティング
2.ろうそくの灯りの測定。ゆらめく炎が室内を浮かびあ
3. ろうそくの灯りの測定。ゆらめく炎が室内を浮かびあがらせる。
3.建物の実測。古い建物と資料を見ながら四苦八苦。
4. 建物の実測。古い建物と資料を見ながら四苦八苦。
4.差し込む日差しの元でスケッチ
5. 差し込む日差しの元でスケッチ
5.いろりのあかりでほのかに照らされる
6. いろりのあかりでほのかに照らされる

今回の調査は、都内ではなかなか体験することが出来なくなった闇の中での「火の灯り」の体験調査。合掌造家屋の「測量調
査」などである。メンバーは、面出団長の教え子である武蔵野美術大学・空間演出学科の面出研究室の生徒たちと探偵団メンバーで合計18名である。富山県の五箇山にある合掌造の日本家屋「無名舎」に4泊5日で調査を行った。東京から高速バスの班と自家用車の班に分かれ、朝9時頃出発し現地に到着したのは、夕方6時過ぎであった。最後の高速道路を降りる頃には、あたりは暗くなり闇に包まれていった。そこから幾つかのトンネルを越え、深い山間に立つ「無名舎」に到着した。3階建ての建物はその名の通り合掌した手のような茅葺屋根に覆われ、長い年月を感じさせるすすのしみ込んだ深い色で僕らを迎えてくれた。土間に入り履物を脱いで居間へ進むと中央には、いろりがある。そのいろりの上には灰の巻上げ防止や熱を効率よく居間全体に行き渡らせるための囲いのようなものがあり、まったく昔話に出てくる風景そのままである。実測を主体に行ったのは2日目である。合掌造の構造や寸法を計測した。それと共に障子越しに入ってくる自然光の計測も行い、外部で地面などに反射し、それらが障子によって拡散し室内に入り込む様子を計測した。建物は大きく3つのパートに分かれる。土間+ 炊事場、居間、居室といった順になるのだが、中央の居間は一番天井が高く5.5 m程。奥の居室は2.2 m程の天井高で、上部に天井高さ1.2 mほどの2階がある。茅葺屋根が壁となる3 階はそれらの上で最高天井高さが2.2 m程である。この3 階は主に養蚕で使用されていた。全ての部屋は日の入る開口部は少なく、仕切りは障子のみ。そこから入り込む自然光は、下方向けでなく上方にもやわらかい光を運んでいる。また自然光で発光した障子は室内側から見ていても明るさ感のある面として存在していた。夜には、囲炉裏に火を灯しそれによる照度も測定した。やはり火であるからなじみのある蛍光灯と比較するのはばかばかしいのだが、現代の住居の居間が暗い方で50 ~ 150 ルクスにに対して、囲炉裏際で20 ~ 5 ルクス。3 m
くらい離れると2 ~ 0.5 ルクスと言ったところである。この数字の通り確かに暗いのではあるが、数字だけではない効果がある。
それはその火によって浮かび上がる人の表情である。自然と火の周りに集まった人の表情を下方からゆらゆらと浮かび上がらせる囲炉裏の火。それは陰影が美しく、心落ち着かせるものである。目が慣れると室内全体もわずかな灯りで照らし出され、大きな梁や大黒柱が火の灯りで揺らめき生きているように陰影を躍らせている。日頃、あふれるような明るさの中で暮らしている僕たちは、このような自然の陰影の美しさを忘れていたような気がする。昔の人はこのような火の灯りの中で暖をとり、煮炊きをしていたのだろう。現在から見れば決して機能的な明るさとは言えないが、作業をする必要に応じて明るさ(火の強さ)が調節されるような仕組みは必要充分であったのだろう。そして夜がふけたら自然と寝ていたのであろう。今回はあいにく天候に恵まれなく、月あかりを体験できなかったが、このような環境の中で月あかりや星々のひかりはさぞかし美しいことだろう。夜には非常に寒く、少々過酷な調査であったが、火の灯りの繊細な表情を感じることのできる良い機会であった。 ( 田中 謙太郎)

照明探偵団 in London 

 
London, England 2002/09/08-13
窪田 麻里 + 田中 智香

6.Westminister Stn. コンコース
1. Westminister Stn. コンコース
7.Waterloo Stn. コンコース
2. Waterloo Stn. コンコース
8.ロンドン市庁舎
3. ロンドン市庁舎
9.ミレニアムブリッジからテートモダンを望む
4. ミレニアムブリッジからテートモダンを望む

今回の照明探偵団in London 、現在開発の進んでいるテムズ川沿いに、近年開通したJubilee Line のWestminister 駅からNorthGreenwich 駅までを各駅下車で調査してみた。
1863 年に世界で初めての開通となったロンドンの地下鉄“tube” は、向き合った座席に人の膝が並べばその間を敢えて通ろうとは思わない程サイズ的には日本のそれより一回り小さく、駅全体も古く暗いイメージがあるが、新しいJubilee Line は日本でいうところの都営12 号大江戸線で、色々な建築家が1 つ1 つ駅をデザインし、新たな地下空間を創造している。
駅舎のデザインが違えば当然照明計画も各駅様々。アワードをとった駅の一つWestmin-ister 駅は、つぶした六角形と長方形の組み合わせのようなコンクリ梁天井に白い中華なべのようなリフレクションパーツとアッパーライトのユニット。お隣のWaterloo 駅は、古い煉瓦造りのワインセラーを思わせるアーチ柱の建物で、天井はそれになぞらえたかのようにメタルでアーチ面が形成され、そこにリニアのアッパーライトが連なっている。
Southwark 駅で地上に出て徒歩でテート・モダンそしてミレニアム・ブリッジへ。日中と夜と二度足を運んだのだが、テート・モダンの青と紫のビミョーな発光体クラウン部や全面ガラスの7F に溢れる光といった夜の景は、昼間の印象ほどにぱっとせず、ミレニアム・ブリッジにいたってはフットライトとしてライトチューブが入っていたものの点灯しておらず、それ以外橋下のアップライトも何も照明は無しで期待はずれ…。7月に竣工したばかりのフォスターのロンドン市庁舎は、形のインパク
トもさることながら、夜になると内装の黄色が照明によって一層際立ち、建物の外へにじみ出てくるようだ。
川沿いの照明は、クリアなボールがトップのオーソドックスなポール灯と、それをネックレスのようにつなぐ小さな白熱ランンプといったシンプルなものだが、行き交う水上バスの灯りが揺れる水面に移り、そんな川沿いの夜景をベースに、現在進んでいるThames River沿いの再開発では市庁舎の他にも目玉建築達がまだまだ竣工を控えている。個性的な光の華が次々と添えられてゆくであろうことを思うと、是非また数年後この地を訪れてみたい。
10.london_tube_map
5. LONDON TUBE map

第19 回 研究会サロン街歩き 
団長のワールドカップ観戦記、ビルバオ美術館体験談など

  
2002 年8 月28 日

夏も終わりといってもまだまだ暑い8 月の末、今回のサロンは30 度を超す気温にもめげず集まってくれた団員のみなさんのもと開催されました。

11.横浜・街歩きの様子を紹介
1. 横浜・街歩きの様子を紹介
12.熱狂のワールドカップの様子を面出団長が解説
2. 熱狂のワールドカップの様子を面出団長が解説
13.照明付き鏡を紹介する古川団員
3. 照明付き鏡を紹介する古川団員
14.妖しげに光る青いうちわ
4. 妖しげに光る青いうちわ

■街歩き報告

まずはじめに8 月19 日に実施された横浜大桟橋と赤レンガ倉庫の街歩き報告が行われました。最初に報告をしたのはシンガポールに在住しているシェン団員。彼は大桟橋のコンペの行方をずいぶん前から興味深く見守っていて、大きく期待をしていたそう。今回の街歩きの他にも個人的に日中に訪れてその昼夜の状況を比較したりしたようです。そんな彼は、「昼はダイナミックかつ有機的な建築なのに夜の光によっては何もそれらの特徴が生かされていない」ことを残念がっていました。他の団員たちからも、木の質感を生かすような光やきれいな芝生のための光などは全く見受けられなかったと報告されました。「結局予算が問題で、照明も後付けになってしまったのが問題なのでは」というのが参加者全体のまとまった意見のようでした。

■団長のビルバオ美術館体験談

さてつづいては団長がスペインのビルバオに行った際に訪れた「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」についての報告です。団長の持論では「美術館はその内部に美術品を内包する空間であり、建物そのものはシンプルかつ機能的であるべき」としていたそうなのですが、この建築はシンプルとはほど遠くて・・・それでもここを訪れた人がみな高く評価しているのが気になって「一度この眼で確かめなければ」とかねてから思っていたそうです。そしてついにここを訪れた団長の感想というのがズバリ、「脱帽」。想像をはるかに超えた迫力ある造形美、複雑だけれども回遊性のある見事な空間構成となっていたとのこと。残念ながら内部は撮影が禁止されているため団長がこっそり撮影した数枚の写真しか披露されなかったのですが、照明に関して言えば複雑な建築にシンプルながらも様々な展示形態に対応できるシステムが整っていたそうです。やっぱり美術館の照明は「シンプルかつ機能的」につきるのかもしれませんね。

■団長のワールドカップ観戦記

前号の探偵団通信「面出の探偵ノート」でも掲載しましたが、サロンでは再び写真を紹介しながらのワールドカップ観戦レポートが行われました。決勝戦だからといってただただ楽しく観戦するわけじゃありません。この貴重な機会に団長は自らスタジアム照明をチェック。夜間の試合ということもあってもちろんスタジアム照明は全点灯。ピッチ内の水平照度はもちろんのこと、スポーツ施設にあっては全方向の空中照度も必要なのでどんなにグレアに考慮しても照明器具のどれかはこっちを向いている状態です。
「きっとプレーしている選手たちも眩しいに違いない。いったい誰のための照明なのか・・・・・・」と思ったときに団長はテレビ中継での観戦を思い出し、その照明環境の恩恵を最も受けることができるのがテレビによる中継であること気付いたそう。選手の顔やボールの足さばきなど、そのさまを忠実に映し出すために必要な光はグレアと相反するところに存在していたようです。

■ヒカリモノ

さてさてこの日のヒカリモノは、古川団員の所属している会社TOTO の照明付きハイクオリティ鏡の紹介です。どこがハイクオリティかというと、その薄い本体の裏に冷陰極管が仕込まれていて、その光を正面にもってくるのにきちんと設計された反射板を使用しているところなのです。鏡の前は(とくに女性にとっては) やっぱり顔を明るく見せたいもの。かといってブラケットなど出っ張るものは付けたくない・・・という人にはうってつけかもしれません。このほか季節ものとして光るうちわなども紹介されました。(橋本 八栄子)

ライトフェアー 2002 

San Francisco, U.S.A 2002/06/03-05
森 秀人 + 田中 謙太郎

■ ライト・フェア―インターナショナル

会場はサンフランシスコ中心部ヤーバブエナ・センター内(再開発地区) にあるモスコーニ・コンベンションセンター。今回のライト・フェアーでは、長寿命・省電力をアピールした光源が目立ち、一般的な照明器具(ダウンライトやスポットライト) などを展示しているブースは少なかった。特にLED (発光ダイオード) を使った器具は多く、主流はライン照明やインジケーションなどのサイン照明としての器具が多く出展されていた。LED は消費電力も少なく、サイズも小さく納められるので将来が期待される光源である。最近では以前よりも高輝度のものが開発され、照度確保可能な器具が生まれつつある。一般的な蛍光灯などは安定器との組み合わせにより2 倍の長寿命化(12000 hから30000 h) したランプが発表されていた。またハロゲンランプでも2 倍以上の長寿命化(2000 hから5000 h) したランプが発表されていた。

15.開催されたモスコーニセンター外観
1. 開催されたモスコーニセンター外観
16.床埋込型LED パネル
2. 床埋込型LED パネル

17.壁埋込LED インジケーション
3. 壁埋込LED インジケーション
18.長寿命ハロゲンランプの展示
4. 長寿命ハロゲンランプの展示

■ サンフランシスコ再開発地区

サンフランシスコの中心地の北東側に位置するヤーバブエナ・センターは、1961 年から着手し、約30 年の歳月をかけて1990 年に完了した再開発である。以前は古い居住区で犯罪が多いエリアであった。現在ではライト・フェアーが開催されたモスコーニ・センターをはじめ、多目的ギャラリーや劇場、美術館(SFMOMA) などがあり、文化・芸術の場として広く利用されている。この計画は広大な敷地を有するコンベンションセンターを半地下にし、その上部を庭園として計画されている。これらのエリアでは、街中では見られない少し変な照明器具(主にポール灯) が立っていた。広場を照らすボール型スポットがハイポールについているものや、昼間は真っ直ぐで夜になると首をグルッと廻して光を出すものなどがあり、昼間の形だけでなく場所と機能を配慮した配置が施されていた。夜間は比較的明るく、犯罪などが起きにくいように配慮されているのだろう。

19.SFMOMA ファサード
1. SFMOMA ファサード
パーク内の発光ポール
2. パーク内の発光ポール

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面出の探偵ノート

●第30 号 2002 年08 月7 日( 水)
Guggenheim Bilbao 万歳!

PFrank O. Garry の設計したBilbaoGuggenheim Museum を積年の思いで訪ねました。なぜ積年かというと、そこを訪れた誰もが「大変いい美術館でした」という賛辞を送るばかりで、あのぐじゃぐじゃした不可思議な形態の美術館を悪く言う友人に会ったことがなかったからです。どうしてか・・・。あのぐじゃぐじゃした・・・・。う~ん・・・・。自分の目でしっかり見なければ。
というのも、私は半ばこのF. O.Gerry という鬼才の臭いを嫌っていた感があり、美術館というのはできるだけ楚々として、かの Louis I. Kahn の名作のように強く自我を主張しないものだ、と信じていたからです。特に現代アートを収めるための美術館という器は、極力シンプルに機能的に展示空間のフレキシビリティを保証すべきで、Gerry の建築はあまりにそのものの芸術性を狙いすぎている、と批判してました。彼の押し付けがましく有り余る個性を好きになれなかったのです。だから、かのFrank L. Right 設計の本家NYC のGuggenheim でさえ、建築的には見事だけれど、螺旋状のスロープ展示室は、やはりいただけない・・・と思っていたし、Hans Holain のいくつかの名作でさえ、好みではなかったのです。
しかし、この美術館には脱帽しました B私の浅薄な想像は打ち砕かれました。すばらしい美術館です。建築は人を自然に回遊させるすばらしい彫刻作品になりえました。こんな複雑怪奇な寸法と形態をしていながら、そこに安置されている多くの現代アートより以上の迫力ある造形美を見せています。切り取られた空間の形とボリュームに引き付けられます。これは建築家が芸術家の端くれとして十分に認められるべき成果です。
私は偶然、ほぼ1年前にNYC で開催されたGarry の建築作品展を見る機会を得ました。おびただしい数の設計プロセスを示す図面や模型が展示され、その設計にかかるエネルギーに圧倒されたのですが、それよりも、こんなにたくさんのゴミのような建築模型を、しかも何十年も捨てずに保存していることにびっくりしました。普通だったら「そのゴミ捨てろ!」というようなものまで丁寧に展示されているのです。つまり、自分たちのデザインの結果だけでなく設計の格闘そのものを、かなり重要に誇りを持って語る機会を待っていたに違いないのです。とてつもなくエネルギッシュな展覧会でした。B i l b a o では1階から3階までの展示室を細かく回遊してきました。残念なことに館内での写真撮影が禁止されていました。なんと心の狭いことでしょう。もちろんいくらかは黙って撮影してきましたが。照明はすこぶる簡素で十分な効果のシステムに集約しています。天井直付けにされた箱型のウォールウォッシャー器具と、低電圧スポットライトがペアになったもので、色々な展示に対応しています。それと建築構造を少しライトアップしているスポットは梁と同色( グレー) に塗られた低電圧スポットです。E R C O の自信作だそうで、彼らのP R 誌に詳しく紹介されています。とても複雑な建築にシンプルな照明システム。照明器具の存在は目立つのですが、それをわずらわしく感じさせないほどの迫力ある内部空間でした。ひたすら脱帽、眼からうろこ・・・の体験報告まで。(面出 薫)

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面出団長講演 World Lighting Fair in TOKYO 2002

10月3日から5日まで、パシフィコ横浜を会場として行われた 『World Lighting Fair in TOKYO 2002』。
舞台やホールの演出、 エンターテイメント照明を中心とした器具の展示会が行われましたが、 そのフェアーのイベントとして10月4日(金)に面出団長が講演会を行いました。
“Architectural Ligthting Projects for Theaters and Halls 1991-2001” というタイトルで劇場やホールの照明について紹介しました。 トークセッションを行った海外の建築家からの質問も様々で、 建築照明に対する関心の高さが伺えました。

24.講演会場風景
講演会場風景
25.他の講演者とのトークセッション
他の講演者とのトークセッション


照明探偵団日記

先日衣替えをしました。照明探偵団は冬であろうとも亜熱帯の国に行く可能性もあるので、T シャツたちをたんすの奥深くまではしまうことは出来ませんでしたが、引き出しを開けたらすぐ見えるところには秋冬色の服を並べてちょっと気分は秋。衣替えをする時は大抵大掃除になります。いつも捨てられないものを一気に捨ててすかっとしてみたり、ポストカードを季節に合わせて変えてみたり。今回は以前から変えたい変えたいと思い続けていたベッドスタンドもこれを機に衣替え。で、スタンドが売っていそうなお店に見に行きました。無い・・・。とにかくシンプルで柔らかい白熱のあかりのものであればというだけなのに、意外と思い描いた通りのものって無いものです。結局「普通の暮らしにもっとデザインを」というコンセプトでお手頃価格のスタルク作” miss sissi” を購入。点灯すると、ポリカーボネートを透かした柔らかなあかりが美しい。同じ空間が全く違って見えるから、ほんとあかりって不思議です。(田沼彩子)

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