探偵ノート

第015号 – 真剣なまなざしの若者たち

Update:

またもや東京の喧騒を抜け出してきた。今はルフトハンザ機の中で、得意の懺悔と瞑想の時間に入っている。東京を離れるたびに、地上を離れて気持ちが無国籍になるたびに、ひたすら毎日走り続けている自分の姿が健気にも可哀相にも思えてくる。どうして私はこんなにも「お仕事」から離れ難くなってしまったのだろうか…?

いつものパターンにはまると、「明日からはやり方を大幅に変革して…」「自分の毎日を余裕をもって評価できるように…」「ようし明日からは…」という風に言い聞かせる。つまり自分で選択している多忙に満足しているくせに不満足。典型的な欲張り型の二重人格としか言いようのない様である。

それでももう一度「来年の1月からは生活のリズムを換えますぞ~」。すっきりしました。

昨日(11月20日)で2カ月におよぶ展覧会「面出薫+LPA展・建築照明の作法」が終了した。「やっと終わったか」というほっと肩の荷をおろした安堵感とともに、1990年にLPAが設立されてからの10年が区切られたような空虚な感覚にも捕らわれる。この展覧会では私たちLPAや照明デザイナーの生きざま、手の内を隠すことなく紹介したので、自分自身のかなりの気持ちがリセットできたに違いない。これまでに皆と一緒に鍛えてきたつもりのものも、あっけらかんと露呈してしまった今となれば、もっと早く脱ぎ捨てるべき宿便のようなものだったのかも…。いずれにしても身が軽くなった壮快さを得たことは何よりの収穫だ。およそ2カ月のギャラリー間の展覧会には、4,000人を越える方々がいらしていただけたそうで、一昨日に行った「ギャラ間+LPA関係者感謝パーティ」は和やかな笑顔に溢れていた。TOTO出版の展覧会記念の本・ギャラリー間叢書「建築照明の作法」も予想以上の善戦で売れているそうだ。

私が何より嬉しかったのは、展覧会の会場を訪れるたびに、真剣なまなざしの若い人たちを多く見かけたこと。会場に置かれた大きな丸テーブルや長いカウンターも功を奏した様子で、時間を掛けて一生懸命にメモをとったり、レジメの内容をノートに写し取ったりしている。壁に貼られた私たちのスケッチをカメラに収める人もいる。たまたま会場に来た私を見かけると、色々な質問がとんでくる。

これは展覧会場でなく、ワークショップ会場のような雰囲気だ。
私たちが先人から真似てきたたくさんの所作が、若い人たちにも真似されて行くだろうことに大変満足している。展覧会は大成功であった。たくさんの人たちの協力のお陰で、建築照明デザインという姿が日本の歴史の中に小さく刻印された。さて、世紀末にリセットした私たちは更に先陣を切って時代を走り抜けるための力を宿しているに違いない。大改革した精神をもって新しいキャンバスに向かいたい。

ちょっと今日は興奮し過ぎているかな? ちょっと恥ずかしい大げさな言葉だな。まあ、いいか。次は軽くしますから…。

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