照明探偵団通信

照明探偵団通信vol.78

Update:

発行日:2016年12月9日
・照明探偵団倶楽部活動1/国内都市調査 大阪(2016/11/26-11/28)
・照明探偵団倶楽部活動2/第55回街歩き 羽田空港 (2016/10/21)
・照明探偵団倶楽部活動3/第53回研究会サロン@ 照明探偵団事務局 (2016/11/30)

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国内都市調査 大阪

2016.11.26-11.28  林虎+岩田昌大+山本雅文

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調査地MAP

今回の調査対象は大阪。大阪と言っても場所によって個性的な発展を遂げていて光環境も異なる。難波・新天地の人情味のある界隈・大阪湾に面する工場地帯・中之島に残る歴史建造物や現代のビル群と水域・大阪駅周辺に広がる交通網等、幅広い光環境を多角的な視点で調査し、大阪という街を再発見する機会となった。

大阪は日本文化の中心地であり、とりわけ独自の芸能文化や食文化を築き、その様は全国的に知られている。
その地で生きる人々からは、気取らず、義理人情に厚い印象や、心の豊かさを感じることもある。
大阪の夜の光環境も、例えば御堂筋線のホームに吊られた『蛍光灯シャンデリア』のような“おおらかさ”を、どこかに秘めているのではないだろうか。
この照明器具は、大阪らしさの象徴として、東京の吉本興業本社ビルの照明としても採用された。私たちは大阪らしい灯りを探しに夜の街に繰り出した。

■大阪駅周辺
残照時の撮影地点として選んだのは、阪急百貨店へと続く歩道橋からの眺め。
JR御堂筋口と阪急を繋ぐ地上の横断歩道は、渋谷のスクランブル交差点のような位置づけで、関西地区のニュースでは、今の大阪を伝える情景として良く映し出される場面だ。ビルの間にかかる大屋根の方向に列車が進入し、それと交差するように地上は車が走り抜ける。遠くから聞こえるアナウンス、車の騒音、行き交う人々の雑踏、大阪の生まれ変わった玄関口では、今日も沢山の人間のドラマが繰り広げられる。

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大江橋からの眺め 御堂筋線ホームの様子
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ブルーモーメントの頃の大阪駅街区の様子

■なんば
あべのハルカスは2014年3月に開業した日本で最も高い超高層ビルである。最上階には360°見渡せる展望室があり広域を見渡せる。俯瞰して見た大阪の街は白色の灯りが多くみうけられた。御堂筋や阪神高速が大きな動脈のように際立ち、そのナトリウムランプで照らされた脈に車が流れていく。海側方向は高層ビルや工場の華やかな灯りが際立ち、山側を方向は住宅地が多く、整然と少量の灯りが並ぶ区画が広がっていた。周辺には交通量の多い通りがあり、ビルのたもとには、上空から見下げるとアルファベットの『a』の形をした阿倍野歩道橋もあり、街のシンボルとなっている。歩道橋は折り紙状の屋根からLEDのペンダント照明が吊られ、電球色の灯りが路面を照らす。平均80ルクス程度で、周囲に建ち並ぶ商業施設やメディアファサードも相まって、にぎやかな歩行空間となっていた。
(山本 雅文)

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戎橋のクラシックライト

■道頓堀

繁華街にある川と言うとどのようなイメージを持つだろうか。
道頓堀川は水面レベルにウッドデッキの遊歩道や階段が整備されていて、「とんぼりリバーウォーク」という名前で親しまれている。
ライブ演奏を聞く人や飲み屋の屋外席のサラリーマンや川面に映り込むネオンのきらめきを見に来る観光客で賑わい、川の両岸に建つビルのサインの光で包まれる居心地の良い場所であった。
橋の下はダウンライトとフットライトで明るさが確保され、壁際にもたれ掛って談笑したり休憩する人が集まっていた。
道頓堀の繁華街の賑わいと、そこを横断する道頓堀の水辺の空間の賑わいは似て非なる物だが、地元民にとっても観光客にとっても自分の居心地の良い居場所を探し求める事の出来る開放的で魅力的な街であった。
(岩田 昌大)

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道頓堀商店街の様子
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えびす橋から川岸のネオン群をみる
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道頓堀水辺の様子

■中之島
水に囲まれた中の島には近代と現代が共存しており、光環境もそれぞれの時代の特性を表現していた。時代の変化が感じられ、各時代のバックグラウンドを演出している舞台のような場所だった。ビジネス街の中で所々から出てくる近代建築のアップライトと水辺のカラーライトは緊張感を持っているビジネス街の雰囲気をもっとリラックスできるように緩和していた。水に映り込んだ照明は、水の流れや、風の動きによって様々な表情をしていた。
(林 虎)

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中之島の様子
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中之島公会堂
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中之島ガーデンブリッジからの眺め

■工場夜景(南港)

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工場地帯の俯瞰夜景

この日は生憎の雨模様であったが、日没を迎える頃には雨脚が弱まっていた。
地上252mのコスモタワー展望台に上り大阪湾を俯瞰すると街の明かりが灯り出し、埠頭のコンテナ地区はガントリークレーンによるナトリウム灯の電球色、その背後にそびえる建物群は白色、という関係が一目瞭然となる。
工場の埋め立て地は整然とした街区が形成され、主に機能的な照明の性格を帯びているが、都心部の色温度を見ると多種多様な機能が混在している事が分かる。
地上に降り埠頭公園に向かうと夜でも人々が海辺に一列に並び、海釣りを楽しむ風景が見られた。海から駅へ向かう歩道橋は蛍光灯のブラケットが明るすぎた為か間引き点灯されていたが、それでも夜の暗闇との対比が眩しく、水辺で過ごしたゆったりとした時間から醒めてしまい残念であった。

■工場夜景(浜寺)

ベッドタウンが背後にあり重化学工場が近くに立地する浜寺の石油コンビナート地帯ではどんな風景が広がっているだろうか。工場夜景スポットとしても有名な、東燃ゼネラル石油堺工場の辺りを訪れた。工場に近づくにつれて高炉から出る煙とファサードに設置された作業灯が、水路と湾岸線の向こう側から怪しく顔を出す。
水路を挟んで工場が立地している為、人と工場との距離は安心感のある物であった。夜になると作業灯が夜空を照らして明るくなっていたが、工場夜景ファンにとってはそれも含め、工場が作り出す無機質な表情がより魅力的に感じるのであろう。
(岩田 昌大)

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浜寺公園から東燃ゼネラルを見る
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浜寺の石油コンビナート

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埠頭公園では夜に海釣りをする人達の姿も
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間引き点灯しても明るすぎる歩道橋

■まとめ
大阪は、江戸時代に水運の利便性の高さから、『天下の台所』と呼ばれた。全国から特産物や年貢米が集まり、各地へと運ばれた。道頓堀も元々は、そのような運河の名称であった。水と人との距離が近かったのだろう。
現在でもその水と人の関係は保たれており、道頓堀川に架かるえびす橋の下には、ベンチと人が集うための灯りが設けられ、水辺と向き合う環境がつくられている。
また、中之島エリアの水域の演出照明は、明らかに道行く人々の気持ちを水辺へと向かわせ、水都大阪の歴史に思いを馳せる。水辺越しに眺める工場地帯も、静かに水辺で過ごす環境になりうるのではないだろうか。これからも人と街と水辺が心地よい光環境で繋がることを期待したい。
(山本 雅文)

第55回街歩き:羽田空港

羽田空港3つのターミナルから探る、空港のもてなしの光
2016.10.21  坂口 真一+山口大介+若田勇輔+黄 思濛

日本の玄関口となっている羽田空港。その“おもてなし”の光の演出はどのように計画されているのかを探ってきました。

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2つの国内線ターミナルと1つの国際線ターミナルから構成される羽田空港。その3つに光のコンセプトの違いがあるのか。“おもてなし”を感じさせる空間とはどのようなものかを探してきました。

■1班

羽田
第一ターミナルの商業エリア
滑走路を模した光のライン
滑走路を模した光のライン

1班は面出団長他6名で第一ターミナルと国際線ターミナルの街歩きを行いました。
まずは第一ターミナル展望デッキ。ここからは空港全体が見渡せます。床を流れる光のラインがいろいろと変化して訪れる人の期待感を高めます。飛行機をまじかに見るその音の迫力といい迫ってくる明かりや夜景と合わせ展望デッキにいるとワクワクした気分になります。
第一ターミナルはその名の通り一番古くからあるターミナル。あちこちでリニューアルの跡が見え、うまくできているところやできていない所もあるという感想が多かったです。
続いて国際線ターミナル。照度の差がはっきりしているところもありますが、エリア毎にコンセプトがあるのかまとまりを感じるという意見がありました。色温度の高いところ低いところの使い分け、落ち着いて食事や買い物をする江戸小路、出発前の高ぶる気持ちを感じさせる出発カウンター等がきちんとデザインされている印象の箇所が多かったです。残念に感じた方が多かったのは駐車場棟につながる通路にある青緑色の照明。どんなコンセプトであの色が使われたのか理由が知りたいところでした。
今回はいつもの街歩きと違い施設内となりましたが普段何気なく利用している空港で照明を中心に見て歩くだけでもいつもの空港とは違う場所にいるような新鮮な気持ちになりました。それと同時にそれぞれのエリアや場所に応じた居心地の良い照明空間をつくることにの難しさを感じることができました。   
(坂口真一)

■2班

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自動販売機・ゴミ箱
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エスカレーター周辺緑の光 (1)
国際線ターミナルは青い照明が目立っていた

羽田空港第一ターミナルと国際線ターミナルを中心に探索しました。まず、スタート地点である第一ターミナル屋上は、2011 年11 月にリニューアルされていることもあり、屋上から見える景色を邪魔しない落ち着いた雰囲気でありながら、滑走路を模したと思われるラインに時折光が走るなど、人を楽しませる工夫が施されていました。さらに、多くの班員が目を留めた場所は、建築の一部となっているゴミ箱を照らす光でした。夜でもゴミの分別を自然と促すことや、危険物が入っていないか一目で分かるという安全が確保されたこの光は、英雄にふさわさしいという意見で一致しました。その後見た第一ターミナルの内装も、空港ではなくデパートのような印象で、統一感のある光に好感を持てました。
国際線ターミナルでは、エスカレーターの手すりとその付近に利用されている緑色の光が、「なぜこの色なのかわからない」「空間に合わない」という意見が多くの人から挙げられました。
特に駐車場へ続く通路の柱を照らすアッパーライトと天井際壁面の緑の光は、低照度ということもあり不快感を生じさせるもので、全員が犯罪者だと感じたようです。さらに、出国フロアでは支柱に仕込まれたアッパーライトの一つが劣化で変色しており、メンテナンスが行き届いていない点がとても残念でした。
しかしその中でも、観光客で賑わう「江戸小路」と名付けられた飲食・土産物店街の照明は、「安っぽい」という意見もありましたが、飛行機に乗る人・乗らない人関係なく楽しめるような雰囲気作りがされており、日本の入り口にふさわしい場所なのではないかと感じました。リニューアルを重ねている羽田空港は、今後オリンピックなどに向けて様々な工夫がされていく場所だと思います。日本の入り口としてさらに発展した、「おもてなしの光」が生み出され
ることを期待したいです。    
(若田勇輔)

■3班

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第二ターミナルにも滑走路をイメージした照明が
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管理している会社が違うのか同じ通路でもバラバラの器具が取り付けられている

国内線第一ターミナルから第二ターミナルへの移動から始まった3班の街歩き。連絡通路は節電のため照明器具が半分しか点灯しておりませんでした。演色性の悪い白色のあかりで、天井が低い空間であったため、圧迫感が強かったです。同じ空間、同じ天井のデザインでありながら、鉄道の駅と空港の管轄で違う照明計画がなされていた事には大きな違和感を感じました。
第二ターミナル到着ロビーでは暖色のあかりが人々を迎え入れていました。ベース照度は400lx500lxと、全体的に明るめの雰囲気でした。対照的に出発ロビーでは高い色温度の照明で、明るさは80-100lxと抑え気味でした。昼間は天窓から昼光を存分に取り入れ、夜は天井の構造を間接的に照らすことで必要照度を確保しており、建築の形態を生かした照明計画であると感じました。使用している器具の色味がバラバラで、赤味が強かったのが残念でした。
国際線ターミナルは内装や使用している照明器具は新しいものの、到着と出発ロビーの照明計画(色温度、明るさ)は同じでした。出発ロビーに設けられた江戸小路は“和”を強調した落ち着きのある場所で、日本を発つ外国の方に強い印象を残せる、という事でメンバーから絶賛されました。到着ゲートの電光掲示板の前のダウンライトだけグレアレスのものが使用されており、照明へのマニアックなこだわりを感じました。
展望デッキから見た滑走路の青い光が天の川のようですごく綺麗でした。最後にメンバー全員で空港でしか見られない光を満喫して今回の街歩きを終了しました。      
(黄 思濛)

■4班

江戸小路
江戸小路のおもてなしのあかり
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懇親会の様子

4班は第一→第二→国際線ターミナルへと渡り歩くコースでした。
まず一つ目に注目したのは夜景の見せ方です。夜景が一番きれいに見えたのは第一ターミナル展望デッキでした。その理由は、デッキ全体の照度を抑えてあること、自動販売機からの光源を壁などで隠していることなどです。2011年に「景色を楽しむことで、旅への憧れに夢を膨らませる空間」をコンセプトにリニューアル工事を行ったようです。工事を行う立場として細部までこだわることの大切さを学びました。
2つ目は国内線と国際線での照明演出の違いでした。まず出発ロビーですが、照度はどちらも同程度でしたが、色温度は国際線が低めになっていました。海外からの旅行客を出発時間の直前までもてなす心遣いなのでは?と考えました。一方到着ロビーですが、色温度は同程度でしたが、照度は国内線が高めに設定されていました。国内線は照度を事務的な明るさに設定し、空港での滞在時間を短くして流動性を高めているのでは?と推測しました。そのように照明計画を行っていると考えると他の空港を利用する際にも色々おもしろく見て回れると思いました。
3つ目は連絡通路を歩いた際に、都市施設と京急線で照明設備が全く異なっていたことです。都市施設は、光源が蛍光灯でかつランプを間引きして省エネを図っていました。一方京急線側はLED化で省エネを行っており、かつ青色に統一することでデザイン性も高めていました。この両極端な照明が同じ通路に整備されていました。照明設計をする際は自分の担当部分だけでなく、他施設との調和も大事だな、と思いました。
今後旅行に行く際は今回感じた感性を忘れずに施設を見ていきたいです。    
(山口大介)

第53回研究会サロン@ 照明探偵団事務局

2016.11.30  荒木友里

羽田空港の街歩きから約1か月、再び集まり班ごとに発表を行いました。
羽田空港の3つのターミナルビルをそれぞれの班で駆け足で回ったのですが、同じ所でも照明に対する評価がだいぶ分かれている印象をもちました。各班の発表内容をご紹介します。

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撮影してきた写真を見ながら街歩きを振り返る

■1班
第一ターミナルのトイレの意匠が男女でまったく異なっていて、女性用トイレは色温度の低い暖かい空間、男性用トイレは色温度の高いシャープな空間となっていました。知らなかった他の班のメンバーからは驚きの声が。第一ターミナルと第二ターミナルのバス発着場の比較では、照度はどちらも同じ150luxくらいなのに、色温度が違うことで雰囲気がまったく変わってしまうのがよくわかりました。

■2班
第一ターミナルの展望デッキについては景色を楽しむため最小限の照明が施されていて評価されているポイントが多くありました。全体としては、色温度が適当でないことやバラつきが多く見られたことについて犯罪者だという指摘が多く、色温度の重要さを改めて実感しました。国際線ターミナルには不可思議な光が多く、国内線の方が英雄は多かったようです。

■3班
展望デッキからみた滑走路の誘導灯がイルミネーションのように素敵な景色をつくっていて印象的だと評価が高かったです。また、京急線の駅構内と羽田空港とで照明がくっきり異なってしまっていたことが指摘されました。違和感があるという意見が多く、大規模施設においては管理区分による問題というのも多く発生してしまいがちのようです。

■4班
第一ターミナルの展望デッキは高評価で英雄だとされるポイントが多くありました。対して国際線ターミナルの展望デッキは店舗からの漏れ光が強すぎてもったいないという意見が。フォトスポットとして意図されているであろう日本橋を摸して作られた羽田日本橋の金屏風飾りについては照明器具のグレアがきつくもうすこし工夫があれば良かった、という意見がありました。また、国内線ターミナル内の各所で計測したduvがプラス側に偏り、国際線ではduvがマイナス側にふれている、というのはとても興味深い発見でした。

【4班発表資料】161130_羽田空港街歩き(最終版)_ページ_16
発表資料。羽田日本橋が一番の犯罪者に
【4班発表資料】161130_羽田空港街歩き(最終版)_ページ_23
細かな資料まで作成

■まとめ
2011年にリニューアルされた第一ターミナルの展望デッキの照明についてはどの班でも評価が高かったです。国際線ターミナルの連絡通路における青緑の照明については意図がわからず犯罪者だという評価が多かったですが、中には格好良かったという意見も。江戸小路については、おもてなしという意味では英雄だ、あまりにも偽物すぎて犯罪者だ、と見る人によってとらえ方が二分されていました。
どちらのターミナルにおいても、到着ロビーは色温度が低く照度が高い、出発ロビーは色温度が高く照度が低いという環境についても、旅の目的によって捉え方が違うようですね。
普段は一所に留まる時間が長い空港ですが、今回は短い時間で空港の多くのエリアを歩きまわることで、これまでと違う表情がたくさん発見できました。
次回の街歩きはすみだ水族館です。皆さんのご参加をお待ちしております。

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各班ごとに意見を持ち寄って発表
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軽食を取りながらの和やかな雰囲気のサロン

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