照明探偵団通信

照明探偵団通信 Vol.43

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発行日:2011年2月28日
・照明探偵団倶楽部活動/国内調査:京都「秋の京都・色彩探訪」(2010/11/17-19)

国内調査:京都  秋の京都・色彩探訪 

2010.11.17-19 藤井美沙 + 本多由実

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京都の調査マップ

秋の探偵団調査ならば、紅葉のライトアップ!朝から晩まで、 紅葉と大勢の人で賑わうお寺を巡ってきました。夜のライトア ップでは小技を効かした照明や大胆に木々を照らし挙げるもの まで、夜空を背景に色鮮やかな景色が描かれていました。ま た、お昼には自然光が見せてくれる繊細な光の景色を調査する ことが出来ました。

■印象深い八つのお寺
今回の調査は、秋の紅葉をひとつのテーマに、昼間 の自然光と夜間のライトアップ、ふたつの対照的な 光が見せてくれる光の技や景色を調査してきました。 3日間で巡ったお寺で特に印象深かった 8 か所のお 寺の光をご紹介します。

DAY 1:11月17日

■青蓮院 青蓮院ライトアップは内原智史デザイン事務所監修 のもと行われています。入口の門をくぐるとブルーに 染まった小路が出迎え、苔庭にはブルーの LED が 星屑のように配されていたりと、全体としてブルーが 印象的なライトアップです。小道には、ブラックラップ が巻かれ、まぶしさのない足下灯が置かれています。 路面の照度は 0.2lx ~ 1.0lx 程度でした。お庭を眺め ていて、輝度として見えてくるのは紅葉や竹、池や岩 などのお庭の要素のみ。照明器具のまぶしさが隠さ れているため、それらを気持ちよく楽しむことが出来 ました。お茶席からの眺めは、5000 ~ 6000K の青白 い光で照らされた竹林を背景に、手前にはハロゲン ランプで照らされた紅葉や岩が重なり奥行きのある 構成となっています。また、園路を回ると小路に葉の 影が落とされていたり、ダイナミックに竹林がライト アップされていたりと大小の光が点在し、ちょっとし た発見が楽しいライトアップでした。
00_赤い紅葉の奥、青白く照らされた竹林が神秘的な印象を与える
赤い紅葉の奥、青白く照らされた 竹林が神秘的な印象を与える。

02_小路に落ちる葉の影
小路に落ちる葉の影。
01_竹林のライトアップ
竹林のライトアップ。

■永観堂 「紅葉の永観堂」と呼ばれ、全山に 3000 本あるとい う紅葉の量と色づきが見事でした。多宝塔と池を囲 むように赤い紅葉がライトアップされ、昼も夜も華や かな賑わいがありました。至る所にスポットライトが 設置され、多くの樹々へライトアップが紅葉のボリュ ームを感じさせるものとなっており、通りに並んだ行 灯も暖かみがあり印象的でした。ただし、スポットライ トには遮光のフードが取付けられているものが少な く、紅葉を眺めていても強い光源が目に入り眩しさが 感じられます。少し視線を下げて猫目線から楽しむ のがおすすめです。

03_美しい紅葉と共に、眩しい光源が目に入ってしまう
美しい紅葉と共に、眩しい光源が目に入ってしまう。
04_暖かい灯りでつつまれた石畳
暖かい灯りでつつまれた石畳。

DAY 2:11月18日
 
■衹王寺(昼間)
苔の豊かな庭と小さな庵からなる静かなお寺。庵内には吉野窓があり、光のしかけを楽しむことができます。庭からの光を竹編みの格子によって分光し、淡く色づいた影が障子に映りこむので、虹窓という呼び名がついています。秋の晴れた日の午前中が美しいと聞き、朝早くに到着をしました。お庭は柔らかな苔で覆われ、頭上には淡い赤や黄色の紅葉。自然光の美しさをよく感じることができる空間でした。
虹窓は、深い軒をもち、直射光が入らない日本家屋でみられる現象。調査日は、空の青色と竹林の緑、前庭の緑からの光が注ぎ、庵内には緑がかった光が漂う環境でした。虹窓をじっくりと見つめていると、さまざまな緑の色彩が浮かび上がってくるようで、日差しにより刻々と濃淡や色味を変える様子が、窓が呼吸をしているように見えました。

05_淡い紅葉と苔の色のコントラストが自然光の美しさを感じさせる
淡い紅葉と苔の色のコントラストが自然光の美しさを感じさせる。

■高台寺
高台寺では、イタリア人照明デザイナーにより「悠久・禅の心」をテーマにライトアップが行われていました。紅葉や竹林のライトアップとともに、方丈庭園での光のアートを特徴としています。臥龍池では、池の水面は流れがなく波がないためにがたたないので黒い鏡のようになり、ライトアップされた紅葉と渡廊をくっきりと映しこんでいました。また、方丈庭園では、白砂に対し映像がプロジェクションされ、BGMと共に光の色の変化するオペレーションが月夜に浮かび上がります。静止した鏡池と、移ろう白砂上のアートが対照的な全体構成となっていました。

08_紅葉が映りこむ静止した水鏡
紅葉が映りこむ静止した水鏡
09_プロジェクションとBGMによる方丈庭園の移ろう光のアート
プロジェクションとBGMによる方丈庭園の移ろう光のアート

■清水寺
サーチライトが夜空に象徴的に放たれた清水寺のライトアップ。設置されている照明器具は少なく、敷地全体でライトアップをしているのではなく、仁王門や三重塔など要所を絞って見せ場となる建造物のライトアップで展開されています。使用されている器具にはLEDが含まれ、清水の舞台の屋根を支える柱の根元には、小さな箱状の器具が取り付けられていました。
また、奥の院を通り過ぎ少し行くと、京都の街の明りを借景として清水寺の夜の景色を楽しむことが出来ます。代表的な建造物が周囲の暗い森の中から現われ、サーチライトの光の筋の先に、京都タワーや街の明かりを望む景色は、見ごたえがあり日本を紹介する夜景として代表的なもののひとつではないかと思います。

12_京都の街の明りを借景とした清水寺の夜景
京都の街の明りを借景とした清水寺の夜景

■実相院(昼間)
洛北にある池泉回遊四季庭園と枯山水庭園が有名なお寺。このお寺でも一風かわった粋な紅葉の楽しみ方があります。「床紅葉」と呼ばれ、書院のよく磨かれた黒光りする床に庭の紅葉が映り込む現象です。庭の樹々にあたった自然光のみが室内に入ってくるお昼12時頃に一番美しく見ることが出来ます。はじめにコントラストの効いた赤い紅葉の映り込みが印象的に目に飛び込んできます。少し時間がたつと障子の上の欄間部分にお庭からの間接光が分光された赤や緑の光の影、ふすまに描かれた絵がゆっくりと見えてきて一段と深みが増します。

13_黒光する床の部屋の中ではどのような光が感じられるのだろうか
黒光する床の部屋の中ではどのような光が感じられるのだろうか

■貴船神社
山間にひっそりと佇む貴船神社。参道の階段には春日灯篭が立ち並び、白熱球の暖かい光で参拝者を迎えてくれました。本殿の前にはかがり火がおこされ、暖かさとともに神秘的な雰囲気を与えていました。京の奥座敷と呼ばれる料理旅館街の通りや、川の中に行灯が置かれ、夕刻に料亭の方が点火をされていました。旅館街から離れ山道を歩くと、周囲をすっぽりと暗闇に包まれ、先程までの旅館街の鮮やかで暖かな灯りがより印象に残りました。

14_朱塗りの春日灯篭の灯りが列をなすと幻想的である
朱塗りの春日灯篭の灯りが列をなすと幻想的である

■叡山電車
線路沿いに紅葉が並び、「もみじのトンネル」を通りぬけるとてもきれいな路線です。大きな窓を備えた車両からは、窓いっぱいの紅葉を楽しむことが出来ます。紅葉エリアでは徐行運転に変わり、乗客からは歓声やため息が聞こえてきました。また、夜のライトアップ時には車内の蛍光灯が消され紅葉だけの空間を走ります。オレンジ色に照らされた紅葉は昼間よりも妖艶な雰囲気を出していました。

16_真っ黒な線路沿いに真っ赤な紅葉が浮かび上がる
真っ黒な線路沿いに真っ赤な紅葉が浮かび上がる
15_大きな窓を備えた叡山電車
大きな窓を備えた叡山電車

■京都のライトアップと自然光
紅葉主体のものから、境内を総合的に光の空間としてデザインしているものまで、紅葉のライトアップにも色々な種類があることがわかりました。しかし、朝の祇王寺で頭上を見上げ、太陽の光を透かす紅葉が一番美しいと感じました。人工照明が自然光と同じように紅葉を照らすことはできないので、ただ明るく照らしあげるよりも、昼間とは異なる雰囲気を与えられたものがライトアップとして成功しているように感じました。高台寺や青蓮院などは木々に合わせて光の色味や強さを調整していました。照度計で測ったときに驚いたのが、これらの境内がとても暗いことでした。周囲の鉛直面の輝度が空間の明るさ感をつくっていることを実感し、また、足元が真っ暗な場所や、オペレーションにより照明がすっと消える時などには夜空や星の明るさを改めて感じました。夜の暗い京都の町であるからこそ、より巧みな光の使い方により、月明かりのように繊細なライトアップが展開していくことが期待されました。
また、今回の京都調査を通して、自然光の移ろいの中に多くの色彩を感じることができました。時間をかけて眺めることで感じ取れる光ばかりなので、紙面では伝えきることが出来ません。皆さんも自然光の色彩が残っている京都のお寺をぜひ巡ってみてください。 (藤井 美沙 + 本多 由実)
17_太陽の光を透かす紅葉が美しい

19_夜が暗い京都では月や星のかすかな光にも安心感を抱く

18_紅葉だけでなく、朝霧に濡れた苔の豊かな緑も人々を魅了する

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