第55回街歩き:羽田空港
羽田空港3つのターミナルから探る、空港のもてなしの光
2016.10.21 坂口 真一+山口大介+若田勇輔+黄 思濛
日本の玄関口となっている羽田空港。その“おもてなし”の光の演出はどのように計画されているのかを探ってきました。
2つの国内線ターミナルと1つの国際線ターミナルから構成される羽田空港。その3つに光のコンセプトの違いがあるのか。“おもてなし”を感じさせる空間とはどのようなものかを探してきました。
■1班
第一ターミナルの商業エリア
滑走路を模した光のライン
1班は面出団長他6名で第一ターミナルと国際線ターミナルの街歩きを行いました。
まずは第一ターミナル展望デッキ。ここからは空港全体が見渡せます。床を流れる光のラインがいろいろと変化して訪れる人の期待感を高めます。飛行機をまじかに見るその音の迫力といい迫ってくる明かりや夜景と合わせ展望デッキにいるとワクワクした気分になります。
第一ターミナルはその名の通り一番古くからあるターミナル。あちこちでリニューアルの跡が見え、うまくできているところやできていない所もあるという感想が多かったです。
続いて国際線ターミナル。照度の差がはっきりしているところもありますが、エリア毎にコンセプトがあるのかまとまりを感じるという意見がありました。色温度の高いところ低いところの使い分け、落ち着いて食事や買い物をする江戸小路、出発前の高ぶる気持ちを感じさせる出発カウンター等がきちんとデザインされている印象の箇所が多かったです。残念に感じた方が多かったのは駐車場棟につながる通路にある青緑色の照明。どんなコンセプトであの色が使われたのか理由が知りたいところでした。
今回はいつもの街歩きと違い施設内となりましたが普段何気なく利用している空港で照明を中心に見て歩くだけでもいつもの空港とは違う場所にいるような新鮮な気持ちになりました。それと同時にそれぞれのエリアや場所に応じた居心地の良い照明空間をつくることにの難しさを感じることができました。
(坂口真一)
■2班
自動販売機・ゴミ箱
国際線ターミナルは青い照明が目立っていた
羽田空港第一ターミナルと国際線ターミナルを中心に探索しました。まず、スタート地点である第一ターミナル屋上は、2011 年11 月にリニューアルされていることもあり、屋上から見える景色を邪魔しない落ち着いた雰囲気でありながら、滑走路を模したと思われるラインに時折光が走るなど、人を楽しませる工夫が施されていました。さらに、多くの班員が目を留めた場所は、建築の一部となっているゴミ箱を照らす光でした。夜でもゴミの分別を自然と促すことや、危険物が入っていないか一目で分かるという安全が確保されたこの光は、英雄にふさわさしいという意見で一致しました。その後見た第一ターミナルの内装も、空港ではなくデパートのような印象で、統一感のある光に好感を持てました。
国際線ターミナルでは、エスカレーターの手すりとその付近に利用されている緑色の光が、「なぜこの色なのかわからない」「空間に合わない」という意見が多くの人から挙げられました。
特に駐車場へ続く通路の柱を照らすアッパーライトと天井際壁面の緑の光は、低照度ということもあり不快感を生じさせるもので、全員が犯罪者だと感じたようです。さらに、出国フロアでは支柱に仕込まれたアッパーライトの一つが劣化で変色しており、メンテナンスが行き届いていない点がとても残念でした。
しかしその中でも、観光客で賑わう「江戸小路」と名付けられた飲食・土産物店街の照明は、「安っぽい」という意見もありましたが、飛行機に乗る人・乗らない人関係なく楽しめるような雰囲気作りがされており、日本の入り口にふさわしい場所なのではないかと感じました。リニューアルを重ねている羽田空港は、今後オリンピックなどに向けて様々な工夫がされていく場所だと思います。日本の入り口としてさらに発展した、「おもてなしの光」が生み出され
ることを期待したいです。
(若田勇輔)
■3班
第二ターミナルにも滑走路をイメージした照明が
管理している会社が違うのか同じ通路でもバラバラの器具が取り付けられている
国内線第一ターミナルから第二ターミナルへの移動から始まった3班の街歩き。連絡通路は節電のため照明器具が半分しか点灯しておりませんでした。演色性の悪い白色のあかりで、天井が低い空間であったため、圧迫感が強かったです。同じ空間、同じ天井のデザインでありながら、鉄道の駅と空港の管轄で違う照明計画がなされていた事には大きな違和感を感じました。
第二ターミナル到着ロビーでは暖色のあかりが人々を迎え入れていました。ベース照度は400lx500lxと、全体的に明るめの雰囲気でした。対照的に出発ロビーでは高い色温度の照明で、明るさは80-100lxと抑え気味でした。昼間は天窓から昼光を存分に取り入れ、夜は天井の構造を間接的に照らすことで必要照度を確保しており、建築の形態を生かした照明計画であると感じました。使用している器具の色味がバラバラで、赤味が強かったのが残念でした。
国際線ターミナルは内装や使用している照明器具は新しいものの、到着と出発ロビーの照明計画(色温度、明るさ)は同じでした。出発ロビーに設けられた江戸小路は“和”を強調した落ち着きのある場所で、日本を発つ外国の方に強い印象を残せる、という事でメンバーから絶賛されました。到着ゲートの電光掲示板の前のダウンライトだけグレアレスのものが使用されており、照明へのマニアックなこだわりを感じました。
展望デッキから見た滑走路の青い光が天の川のようですごく綺麗でした。最後にメンバー全員で空港でしか見られない光を満喫して今回の街歩きを終了しました。
(黄 思濛)
■4班
江戸小路のおもてなしのあかり
懇親会の様子
4班は第一→第二→国際線ターミナルへと渡り歩くコースでした。
まず一つ目に注目したのは夜景の見せ方です。夜景が一番きれいに見えたのは第一ターミナル展望デッキでした。その理由は、デッキ全体の照度を抑えてあること、自動販売機からの光源を壁などで隠していることなどです。2011年に「景色を楽しむことで、旅への憧れに夢を膨らませる空間」をコンセプトにリニューアル工事を行ったようです。工事を行う立場として細部までこだわることの大切さを学びました。
2つ目は国内線と国際線での照明演出の違いでした。まず出発ロビーですが、照度はどちらも同程度でしたが、色温度は国際線が低めになっていました。海外からの旅行客を出発時間の直前までもてなす心遣いなのでは?と考えました。一方到着ロビーですが、色温度は同程度でしたが、照度は国内線が高めに設定されていました。国内線は照度を事務的な明るさに設定し、空港での滞在時間を短くして流動性を高めているのでは?と推測しました。そのように照明計画を行っていると考えると他の空港を利用する際にも色々おもしろく見て回れると思いました。
3つ目は連絡通路を歩いた際に、都市施設と京急線で照明設備が全く異なっていたことです。都市施設は、光源が蛍光灯でかつランプを間引きして省エネを図っていました。一方京急線側はLED化で省エネを行っており、かつ青色に統一することでデザイン性も高めていました。この両極端な照明が同じ通路に整備されていました。照明設計をする際は自分の担当部分だけでなく、他施設との調和も大事だな、と思いました。
今後旅行に行く際は今回感じた感性を忘れずに施設を見ていきたいです。
(山口大介)