発行日:2017年7月3日
・照明探偵団倶楽部活動1/第57回街歩き:TX(つくばエクスプレス)沿線 (2017/05/12)
・照明探偵団倶楽部活動2/第55回研究会サロン@ 照明探偵団事務局 (2017/05/29)
第57回街歩き:TX(つくばエクスプレス)沿線
首都圏最後の大型路線~つくばエクスプレス~沿線の光の開発は成功した?
2017/05/12 田村聡+若田勇輔+坂口真一+古川智也
団員23名が参加し、開業10年を超えたつくばエクスプレスの4つの駅をピックアップして街歩きしてきました。
新しい沿線での街開発とともに光の開発も成功しているのかを見てきました。
首都圏最後の大型路線と言われる「つくばエクスプレス」が2005年に開業して早10年以上経過。当初更地であった沿線も、徐々に開発が進んでいます。今まで陸の孤島であったり、何もなかったりした所にどのような街ができたのか、その街の光はどのように設計されているのかを、屋外をはじめ、ショッピングセンターなどの屋内も見て回り調査しました。
柏の葉のマンション 見た目はおしゃれでも、住民にとっては?
柏の葉 隠れ英雄、工事用仮囲いにあった3,000Kの仮設照明
流山おおたかの森SC 全体的にまだ新しく、照明全て好印象
流山 旧住宅街前の道路。全体的に暗い印象
■A班:柏の葉キャンパス駅
A班は柏の葉キャンパス駅周辺(駅前広場→ららぽーと柏の葉→三井ガーデンホテル周辺→マンション街→Tサイト→駅前広場)を街歩きしました。スマートシティーと銘打って統一的な開発を行っているせいか、全体的に3,000K程度の落ち着いた光でまとめられており、光の英雄が多いように感じました。以下各エリアの英雄・犯罪者を紹介します。
駅前広場のポール照明・バス停の照明は非常におしゃれで好評でしたが、TXのホーム照明が雰囲気を台無しにしており残念でした。
マンション街も落ち着いた光で統一されており、居心地の良い住環境になっていました。驚いたのは、工事現場の仮設照明も3,000Kの光で周囲になじむように考慮されていたところ。このような細かな配慮が大切だと感じました。また、木々を照らす光は良かったのですが、住居ベランダに侵入しているのは犯罪者ではないかという意見が出ました。
Tサイトは、天井はむき出しながら、ポイントポイントでおしゃれな照明が配置され、限られたコストの中で心地よい雰囲気を作っており非常に好印象。外の調整池のライトアップも英雄との意見で一致しました。
初参加の人も多かったのですが、「普段何気なく見ている照明について色々議論をすることで、新たな発見があり楽しかった。」という感想をいただきました。また、その後の懇親会やサロンにおいて他駅と比較することもできて、同じ沿線でも違いが多々見られて面白かったです。都心部だけではなく、たまには玉石混交である郊外を街歩きするのも面白いと思いました。(田村聡)
■B班:流山おおたかの森駅
B班は流山おおたかの森駅から歩き始めて新興住宅街と旧住宅街を見比べながら歩きました。おおたかの森駅は開業してまだ10年弱ということもあり、全体的に綺麗な印象でしたが、天井にある間接照明の光源が見えるなどの荒さも見えました。
その隣にある流山おおたかの森S・Cでは、お店の照明計画にこだわりを感じるという意見が多かったです。
その後、新興住宅街へ向かいましたが、フォレストレジデンスというマンションの前の広場は非常に暗く、それだけでなく植栽を照らすアッパーライトに点灯していないものがあるなど、バランスの悪さが目立ちました。しかし、フォレストレジデンスのエントランスのダウンライトは、一見建築そのものが光っているのではないかと思うほど均等に、かつ光源が見えないような工夫がされており、全員が好印象を抱いていました。
また、その周辺の道路は、駐輪場の明かりが道路を照らしていたり街路灯が道を明るく照らしていて、防犯上良いという意見が多かったです。一方で、旧住宅街周辺は寂れている印象を受け、とくに旧住宅街前の道路は点灯していない照明があり、防犯上危険ではないのかという意見のある場所もありました。
全体を通して見てみると、新興住宅街と旧住宅街とにか関わらず問題はいくつか存在しており、今後よりいっそう安全で活気のある街にしていってほしいと思いました。(若田勇輔)
八潮公園 もう少し照明計画に工夫があってもよかったのでは?
八潮駅前通り 比較的色温度の低い街路灯
■C班:八潮
八潮駅は10年前に首都圏最後の大型路線として開業した駅。照明は色温度が高めに設定されており、TXの他の駅も同様の雰囲気の駅が多いようです。駅の上部にある八潮駅という駅名標が夜は真っ暗になってしまい駅名がわからないのは、駅の目印としてはいまひとつの印象がありました。
駅周辺は大型ショッピングモールやマンションが立ち並び、また建設予定の箇所もあり、道路や歩道も広く整備され、まさにベットタウンとして開発が進んでいます。歩道等は割と色温度も低めで落ち着いた雰囲気。しかし圧倒的なあかりで自己主張をアピールする店舗(ラーメン屋やうどん屋)、街並みに合わせたように色温度の低いファーストフード店等、よく見ると統一感はとれていない感じがしました。そしてどんどん増えていくマンション群。新しいマンションは共用部の照明も落ち着いた雰囲気で統一されている箇所が多く、団員から高評価でした。
あまり印象が良くなかった箇所は八潮公園。もう少し照明計画を考えるといい空間にできたのではという意見がありました。
八潮駅の前にあるショッピングモールは、一目でそれとわかる明かりで照らされており外から見ても目立ちます。夜はこのあかるさでお客を集客しているのでしょうか。
中の店舗は、落ち着いた雰囲気の店舗がある一方、蛍光灯で統一された店舗があり、あまり照明はきちんと計画されていないという印象を残念ながらうけました。
ベットタウンとしての開発が進んでその街並みを整備していくのであれば、行政等を中心として、もう少し照明計画にもルールを決めて行ってもよいのではという感想をもった今回の街歩きでした。(坂口真一)
北千住 宿場町通り
北千住きたろーどの紳士服店 通りでひときわ眩しい照明
北千住駅前で照度の測り方をレクチャー
■D班:北千住
江戸四宿のひとつに数えられる宿場町「千住宿(日光街道と奥州街道の共通宿)」として発展し、現在、5路線が乗り入れる北千住駅を中心に、旧街道の街並みが残る西側商店街と、再開発で建てられた東京電機大学のある東側を調査しました。
まず全員が光の英雄にあげたのは、宿場町通りの照明。千住宿から各宿場までの地図と順番を記載した看板が付けられた街路灯は、通りの途中で町内会が変わった途端、器具デザインだけでなく照度も色温度もガラッと変わります。路面中央で75lx、3000Kの適度な明るさで暖かい光の向こうに、スズランのような低照度の丸く白い光がパースペクティブに見える光景は、奥行き感が増して、奥へと誘導されました。
また、「これぞ、下町!」的な歴史を感じるファサードに、ぼやけた光のネオンが点いたスナックでは、まるで映画セットのようと立ち止まり、郷愁や哀愁を感じた団員がいました。
一方、光の犯罪者としてあがったのは、LED化で高輝度になってグレアを感じる街路灯、紳士服店、蕎麦屋等でした。紳士服店ではファサードや入口天井に設置された蛍光灯の白い光が、周囲の光環境を壊すほど大量に照射されていました。店舗前歩道で1500lx、4500K。
蕎麦屋では看板を縁取った高輝度のLEDの光が、前方のみ照らして、看板を照明していないため、近寄らないと読めませんでした。
大学建物は現代的なデザインで、建物を魅力的に見せる建築照明が施されていました。学内の学びと休息・癒しの空間は、照明で明確に区分されて居心地がよく、また生垣のある裏道路は最小限の光で光源も見えず、安全性と落ち着いた雰囲気が両立した光環境でした。
大阪から初参加した団員もいた4班のメンバーは、他の調査対象駅に無い下町の情緒溢れる街並みと、新しい学生の街が共存する北千住に、住人の気概や活力を感じたようでした。(古川智也)
4つの駅それぞれにいい点や工夫している点もみられたようですが、まだまだ改善の余地がある、といった感想をもった団員が多かったように感じた街歩きでした。次回の街歩きは8月の蒲田です。是非ご参加ください。(東悟子)
第55回研究会サロン@ 照明探偵団事務局
つくばエクスプレス沿線街歩きレビュー
2017/05/29 東悟子
5月12日開催のつくばエクスプレス沿線街歩きのレビューを行いました。街歩きテーマの“首都圏最後の大型路線~つくばエクスプレス~沿線の光の開発は成功した?”への解答は出たのでしょうか。
5月に開催したつくばエクスプレス沿線街歩きのレビューを開催しました。参加者15名と少人数ではありましたが、その分濃密なディスカッションが展開されました。
つくばエクスプレス沿線の街歩きは柏の葉キャンパス前、八潮、流山おおたかの森、北千住とそれぞれ特徴の違う4つの駅を班に分かれて行いました。サロン内の各チームの発表では、なかなか英雄を見つけにくかったという声が多く聞かれました。
2005年に開業したつくばエクスプレス沿線を中心に開発がすすめられ、つくばにも東京にもアクセスしやすいことが売りの新興住宅街とショッピングセンターを中心にそのエリアを拡大、発展させているようですが、照明計画には多くの改善の余地がありそうでした。
エネルギーを無駄にしたギラギラな照明が氾濫しているところがあるかと思えば、必要なところに光が当たっておらず暗い印象を与えているところも。新しいマンションはきれいな照明計画なのに、近くの公園は明かる過ぎたり、逆に暗過ぎたり、全く居心地のいい空間になっていない。町に合わせて落ち着いた色温度にしているファーストフード店があるかと思えば、目立てば勝ちのような従来のラーメン店があったりと、町の開発と一緒に照明のガイドラインなどがあるわけではなく、町としての統一感は感じられなかったようです。駅周辺の街路灯は、他の町と比較して明るすぎず色温度も高すぎずと好印象のコメントもきかれました。
街歩きのテーマだった「光の開発は成功した?」との問いへは、いくつかのいい光環境や工夫が見られたが、街としての光のガイドラインがあるわけではないので、町全体としていい光環境になっているわけではない、という結論でした。
2014年開催の中央線沿線の街歩きの時も感じましたが、同じ沿線上のいくつかの駅周辺を比較する街歩きは、短時間で効率的にたくさんのことが発見でき、とてもいい企画だと思うので続けていきたいと思っています。
またいつも街歩き後の懇親会でその日の街歩きのレビューを簡単に行うのですが、そこで上がった意見+αをプレゼンテーション用にまとめて、サロンで各班のリーダーが発表されます。毎回凝ったプレゼンテーション資料を作成され、興味深い発表内容になっていますが、いつも探偵団通信に一部しか掲載できていません。街歩きやサロンに参加できない方もみられるように、今後探偵団のWEBサイトで、資料全体を紹介していきます。(東悟子)
班のリーダーから街歩きのまとめを発表 簡単な軽食を取りながらの和やかな会
光の英雄と犯罪者のプレゼンテーション資料
犯罪者とも英雄とも判断できない場所も多く存在
周囲の住宅に色温度を合わせたマクドナルドに一同称賛!
駅の照明は改善できる箇所がたくさんみられたとの意見が
機能、エコ、デザインを基準に採点する班も