照明探偵団通信

照明探偵団通信 vol.149

Update:

発行日: 2026年 7月 29日
・照明探偵団倶楽部活動 1 / 都市照明調査: 大手町&室町 東京(2026.05.22)
・照明探偵団倶楽部活動 2 / 第79回街歩き: 高輪ゲートウェイシティ(2026.05.21)
・照明探偵団倶楽部活動 3 / 第76回サロン: 高輪ゲートウェイシティレビュー(2026.06.25)
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都市照明調査:大手町&室町 東京

2026.05.22 發田隆治 + 柳俊韓 + 向山恵介

大手町と室町は、どちらも東京都心の中心部にあり、徒歩で行き来できるほど近いエリアだが、雰囲気や役割がかなり異なる。この二つを同時に調査することにより、新たに気づけることがあると考え、調査を実施した。

大手町と室町は都心を代表するエリアであるが、大手町は日本有数のオフィス街、室町は歴史と商業が融合した街という特徴がある。その特徴は光としてどのような違いとして現れているのだろうか。建築のファサードと屋外エリアに着目し、二つの街を歩いた。

ファサード照明

大手町に多く見られるガラスのファサードと光

大手町にはオフィスビルの高層建築が立ち並び、その低層部分の多くはガラスのファサードとなっている。このガラスのファサードから漏れてくる光が、夜景の形成に大きな影響を与えている。エントランスエリアは光壁や光天井、ウォールウォッシャー、天井間接照明といった明るさ感をつくる照明手法が用いられ、そのあかりが街を明るくしている。都市というスケールで考えるとガラスのファサードが街を照らす超大型の行灯とも考えられる。

対して室町エリアは商業施設が並び、装飾的なファサードとなっている場所が多い。そしてそのファサードをライトアップすることにより、夜の街を華やかに演出している。

室町の中央通りの店舗ファサード 歴史的建築のファサードを照明で印象的に強調している

大手町も室町も低層部分の多くは電球色が使用されていた。二つの街を比較すると、大手町は少しクールで、室町はより暖かみを感じた。その要因は二つあると考える。一つ目は大手町は建築素材にグレー系の無彩色が多く使用されている。それに対して室町の外装はベージュ系やブラウン系の色味が多く使用されることで、色温度がより低く感じられ、暖かみのある景観を形成していた。(使用しているLED 光源自体の色温度は、大手町と室町で大きな差はない)その裏付けとなる実験を調査後に行ってみた。
直接光が3100K のLED 光源をベージュの素材に反射させると反射光は2400K 程度まで大幅に色温度が下がる事が確認できた。

大手町がクールに感じた二つ目の要因は建築の形状によるところも大きい。大手町でよく見られるのは大型の水平、垂直が強く意識された形状の建築で、それ自体がクールな印象ある。それに対して室町では細かな装飾を伴う柔らかな形状の建築が多い。光と建築形状が相まって、それぞれのイメージがつくられていると考えられる。

大手町の景観と歩道空間

大手町の街並みを皇居側(大手門)から眺めてみると、当初予想していたより暗い印象であった。この理由としては二つ考えられる。一つ目は国道1 号線が通るこの道路の両側には街路樹が並んでいるが、各建物のエントランスから漏れる光がこの街路樹によって遮断されていること。二つ目はエントランス自体が大手町、東京駅側を向いている場合が多く、皇居側に漏れてくる光の量がそこまで多くはないことがあげられる。

室町の景観と歩道空間

商業施設が並ぶこのエリアは、ファサードがライトアップされている建築が多く、さらに自発光する車歩道照明が連続する。それらが街路樹に遮られることなく見えてくることにより、明るい景観がつくられている。場所によっては建築から歩道を照らすスポットライトも設置されており、夜間の街を安心して歩ける工夫がされている。

OTEMACHI ONE 外構 メリハリのある空間に

大手町と室町の屋外エリア

屋外エリアとしては主に4 か所を調査した。

大手町仲通り 2 階の鉛直面輝度が明るさ感に寄与している

① OTEMACHI ONE
大手町エリア最大級の再開発プロジェクトとして2020 年に開業した複合施設。この外構照明は整形のランドスケープの中に間接照明として光が納められている。外構全体としては明るくはないが、明るいポイントをつくることによりメリハリのある景観がつくられている。ベンチ下と広場の照度差は約100 倍となっている。

コレド室町テラス 落ち着くしっとりとした空間

②大手町仲通り
大手町ファイナンシャルシティのビル群の間にある歩行者空間は、オフィスワーカーの憩いの場所でもある。夜間の光として印象的なのは2階レベルに連続する木質の壁面である。ここは間接照明となっているが、輝度は約30cd/㎡であった。この空間は床面照度以上に明るく感じられたが、鉛直面輝度が高いことがその大きな要因になっていると考えられる。

③ コレド室町テラス
大屋根広場にはテーブルと椅子が置かれ、夜間をゆっくりと過ごす人たちが見られた。この空間において大きな面積を占める天井や壁面をいくつか測定してみたところ約7cd/ ㎡程度となっていた。室町テラスは、落ち着いたしっとりとした雰囲気となっているが、それはこの抑えられた輝度によるところも大きいのではないかと考える。
④福徳神社~コレド室町仲通り
連続する行灯や提灯により和の賑わいの雰囲気がつくられている。江戸時代に商人の街として発展した歴史を照明にうまく活かし演出していると感じた。

まとめ

大手町、室町はいずれも照明計画に力を入れているエリアであり、光はその街の雰囲気をつくる大きな要素であることを改めて感じた。
そして、新たな建築は街から影響を受けると同時に、その建築が街の光環境にも影響を与え、街の光は少しずつ熟成されていく。街と建築の光が呼応し発展していく。より照明の質を上げていくには、街全体としてどのような雰囲気をつくろうとするのかを明確にしつつ、それを実現する光を緻密にコントロールすることが重要であると考える。
今回は年齢が異なる3 人が語り合いながら、東京調査を行ったが、好きな光に対する共感と新たな発見が多くあった。この調査を次の計画に活かしていきたい。  (發田隆治)

コレド室町仲通り 賑わいある雰囲気を演出

第79回街歩き: 高輪ゲートウェイシティ

100年後を見据えた街の照明計画を探る
2026.05.21 金山聡美 + 小谷弥 + 東悟子

2026年3月に全面開業した高輪ゲートウェイシティで街歩きを開催。34名という多人数を3班に分け、90分間で見どころ満載の広い施設を駆け足で巡りました。

高輪ゲートウェイシティ全体図 (JR 東日本提供)
いつもは25 名の枠に34 名の参加希望が 3 つの班に分かれて街歩きしました

2026年度初回の街歩きは3月に全面開業した高輪ゲートウェイシティ。100年後を見据えた街づくりを謳っている街の照明には何か発展的なものが見られるのか、期待たっぷりでのスタートとなりました。今回はエリアを分けて街歩きする通常のものとは違い、同じ高輪ゲートウェイシティ内を、3つの班のリーダーが紹介したいスポットに引率するという形をとったので、重複したエリアも多くありました。

■1班

1班は、駅前を含む商業施設の周りからスタートし、その後THE LINKPILLAR1、THE LINKPILLAR2、MoN Takanawaの順番で回りました。参加メンバーには、高輪ゲートウェイ駅周辺のまちづくりに携わったかたもいらっしゃり、お話しを伺いつつ観察できました。

進行方向をみると天井からまぶしい照明が目を刺す

まず、THE LINKPILLAR1 SOUTH周辺では、下りエスカレーター横のウォーターウォールのアッパー照明や、施設1階の庇のライン照明など、進行方向に向いている人たちの目へ眩しさを感じさせる照明が犯罪者となりました。

その後、NORTHへ。1Fロビーは、木質の天井とタイル壁を中心とした無機質さが混在しながらも、それぞれ照明の色温度を変え、落ち着きと上質感を与えるとともに、視認性と機能性を確保することで、店舗棟であるNORTHとオフィス棟であるSOUTHをつなぐ共用ロビーとしての役割を果たしていました。

28F-29Fのレストランフロアは全体的に暗い印象でしたが、「来訪者にとって魅力的と感じる空間になっている」、「この暗さを事業主に納得させたことはすごい」と、メンバーには高評価でした。

MoN Takanawaは、他の低層部と調和するように外部の照明が暖色なのに対し、内部が白色なため、全体としての統一感を阻害しているという意見も。外部のテナントが入っているわけではないので、もう少し統一できたのではないかと思うとのことでした。

今回は学生の参加者も多く、これから設計に携わる学生、現在設計に携わっているかた、この街の開発者のかたが同じ班となりました。設計の実務者や開発者にとっては若者の新鮮な感性に触れる機会となり、学生にとってはプロの専門的な知見や開発の意図を直接学ぶ場となりました。
高輪の各街区の高層部の照明デザインは、海の上につくられた街として、海に停泊していたであろう帆船に見立てられているそう。これからできる2棟を含め、6棟の高層部が統一感を持っており、他にはない事例として英雄となりました。(金山聡美)

■2班
2班は、LINKPILLAR 1 NORTHから街歩き開始。エントランスの「暗さ」に感動を覚えながら中に入ると、壁面上部に設けられた間接照明によって空間全体がやわらかく包み込まれるように照らされており、最初から心をつかまれるような印象を受けました。

壁面上部の間接照明で間全体をやわらかく包み込む照明
暗さが導線を作っている

28階に上がると屋上庭園があり、道しるべの役割を果たす照明や石を美しく照らし上げる照明が配置されていました。多様な草木が点在する中で、照明は草木を照らすだけでなく、さまざまな照明手法によって視線の移ろいを生み出し、空間そのものを楽しませる大きな役割を果たしていました。しかし、下をのぞいてみると、投光器によってまぶしく看板が照らされており、とても残念に感じました。
屋上庭園を出てレストランエリアに入ると、「暗さが導線をつくる」ことで店舗との境界線を生み出していることに驚かされました。
29階では、行きは壁面照明のみで照度が確保されており、意匠性が高く素晴らしいと感じましたが、振り返ると、先ほどまで美しく見えていた照明が目に刺さり、行きと帰りで表情が変わる照明を発見しました。

MoN Takanawaに向かって歩き出すと、左側は半分だけ、右側は360度照らされている、照明によってバランスが取れていない2つの植栽柱がありました。これは満場一致で犯罪者となりました。 MoN Takanawaでは、壁面にスカラップが出ていたり、屋上庭園の色温度が統一されていなかったりと、照明計画の大切さを身に染みて感じながら建物を出ました。少し引いた位置から外観を見ると、演出照明によって建物全体にリズムが生まれており、まるで建物が呼吸して生きているように見えました。

今回の街歩きには学生も多く参加しており、面出団長といつも以上にさまざまな意見が飛び交う、楽しい街歩きとなりました。(小谷弥)

■3班
街歩きのルートは3つの班でほぼ同じなので、3班が発見した光の英雄と犯罪者で意見が二分したものを3つ紹介します。

暗さに挑戦しているが、足元が真っ暗で怖いという意見も

まず一番の議論になったのは、屋上庭園の暗さ。照明は植栽を照らすアップライトのみで足元は暗い。お籠り感がありいい雰囲気ではあるものの、階段の段差が見えづらかったり、奥に進むのが怖かったりと意見が分かれました。

2つめは、食品を販売しているエリアの天井照明。販売しているオリーブオイルや野菜などの商品の状態がよくわかる白い光なので英雄だという意見がある反面、黒子に徹するべき照明器具の存在が大きく、設置位置も低いので圧迫感がありすぎるという意見も聞かれました。

3つ目はMoN Takanawaの外観照明。煌々と建築を照らすのではなく、控え目な光が美しいという高評価もありましたが、中からの漏れ光と色温度に差があり、違和感があるという意見も聞かれました。
見るところが盛りだくさんの高輪ゲートウェイシティを90分で見るというタイトスケジュールだったため、駆け足の街歩きとなりましたが、発見が多い街歩きでした。

全体的に空間に余裕がある街で、ところどころに座って休むスペースが設けられ、照明もリラックスできるよう配慮されているように感じました。木を照らしすぎていたり、器具の配光がうまくいかずまぶしすぎたり、暗さに挑戦しすぎて足元が真っ暗だったりと、犯罪者だとする意見も聞かれましたが、たくさんの挑戦が詰まっているプロジェクトのように思いました。またじっくり見に来ようと思います。(東悟子)

街歩き後の反省会の様子 写真を見ながらレビュー

第76回サロン: 高輪ゲートウェイシティレビュー

2026.06.25 東悟子

5月に開催した高輪ゲートウェイシティ街歩きのレビューを行いました。

5月の高輪ゲートウェイシティ街歩きのレビューを探偵団事務局にて行いました。今回の街歩きは同じ施設(高輪ゲートウェイシティ)を全部の班がまわるという街歩きだった為、見てきたエリアはだいぶかぶっていたのですが、一番多く上がった光の英雄と犯罪者、一番意見がわかれたところをひとつづつ伝えします。

サロン発表資料 英雄

まず一番英雄にあがったのはTHE LINKPILLAR1のNORTHとSOUTH両方のタワーのエントランスの照明。オフィスのエントランスとカフェなどの店舗をつなぐロビーとなっていますが、オフィスエントランスのさわやかな色温度の照明と木質仕上げの天井のあたたかな風合いを生かす照明が両立しており、この広いスペースが夜も心地よい空間になっているということでどの班も高評価でした。

犯罪者の声が多かったのは、『木を照らす照明』。同じ空間なのに過剰に照らされているものと全く照らされていない植栽があることに違和感を感じるという意見や、レストラン階の植物への育成用のスポットライトが大きくて多すぎるので圧迫感があるという意見もでました。隣同士に植えてある植栽のアップライトの色温度が違うのには何か理由があるのかという疑問の声も多く聞かれました。

サロン発表資料 犯罪者 樹木の照明への指摘多数

一番議論になったのが、高層階にあるレストラン街の屋外庭園。ほぼ全員が『暗い』と感じています。ただこの暗さを『果敢な挑戦』と受け取るか『足元が危険』と評するかで分かれました。庭園にはお籠り感のあるベンチやパーゴラなどがあり、東京の夜景を楽しめる工夫が随所に見られます。但し、階段もあるため、段差が認識しづらく、足元には気を付けて歩く必要があります。不特定多数が訪れる空間でこの暗さを事業者に納得してもらう為にどのように説得したのか担当者に話を聞きたいとの意見もあがりました。

総括すると魅力的な暗さへの挑戦や丁寧に照明が配されている空間などが多く見られる半面、安全性の担保やテナント・植物の育成灯を含めた光の統制という課題も確認できました。

今後の都市照明デザインを考える上で、多くのサンプルを提示しているプロジェクトだと思います。
今後サロンでは街歩きのレビューだけでなく、議論したい内容を持ち寄るような場にできたらと考えています。議論したトピックがある方は、是非事務局までお送りください。(東悟子)

サロン発表資料 英雄? or 犯罪者?

 

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