世界照明探偵団フォーラム2018 inサンティアゴ
2018/10/17 東悟子
南米初となる世界照明探偵団フォーラムがチリのサンティアゴで開催されました。世界に散らばる探偵団のコアメンバー12名が集まり地元の照明デザイナーや建築家と意見交換をし、サンティアゴの光環境の問題点、美点を発見、改善策を考えました。
トークイベントとオリエンテーション会場となったチリ国立美術館での集合写真
10月18、19日の2日間、南米チリのサンティアゴで14回目の世界照明探偵団フォーラムが開催されました。南米発のフォーラムということもあり社会人の参加が多く、今までの学生主体のフォーラムとは異なり、プロの照明デザイナーや建築家中心のフォーラムとなりました。テーマは「あなたの街の光の英雄と犯罪者」。フォーラムはチリ国立美術館にてこのテーマに沿ったコアメンバーによるリレートークから始まり、チリ大学のキャンパスでのサンティァゴ市の光環境改善案の提案で締めくくられました。
オリエンテーションの様子
バンコク在住の照明デザイナーアチャラワン
眩しい照明に一同目をふさぐ
大統領官邸裏の憲法広場 このあかるさが適度がどうかの議論中
Day 1:10月18日(木)
■リレートーク@チリ国立美術館
「あなたの街の光の英雄と犯罪者」をテーマに探偵団のコアメンバーがニューヨーク、台湾、ハンブルグ、ストックホルム、ベルグラード、シンガポール、バンコクの状況をそれぞれ報告。1人7分弱という短い持ち時間の中でそれぞれの街が抱える光の問題や魅力について語りました。
■街歩き
グループに分かれ、特徴のある5つのエリアを街歩きしました。暗くなるのが20時すぎということで、各班のんびりスタート地点に向かいました。スタートする前に軽食を取りお互いの自己紹介を行う班やビール片手に街歩きの本番前にもりあがってしまった班もあったようです。
◇Team A:SANTA LUCIA
A班はサンティアゴ市内中心部に位置する丘の頂上から街歩きをスタート。サンタルチア通り沿いの国立図書館で建物とその周辺の照明について話し合いました。 Cerro Santa LuciaとVictoria Subercasseaux Street沿いを歩くと、照明の犯罪者の数に圧倒されました。その光環境で最も支配的だったのは、公園に設置された照明器具と広告を流す巨大なLEDスクリーンからの強烈な眩しさ。光の犯罪者は英雄よりも顕著でしたが、LastarriaとGAMの居心地の良い通りに入ると、英雄もたくさんありました。Cultural center GAMを歩き、照明の改善ができる場所を探しました。
最後は古いビルに隠れていたこのエリアで一番の英雄についてのおもしろい議論で街歩き終了となりました。(Aleksandra Stratimirovic)
◇Team B : 森林公園エリア
Parque Forestal(森林公園)は、Mapocho川に続く南北軸に位置する歴史的中心地にある公園。私たちのグループは軽い夕食を取りながら日が落ちるのを待ち、公園の中心部から夜の散策を始めました。
公園の照明は主に “ランタン”照明と背の高い(15m)の投光照明( “テニスコート照明”と呼んでいました)の2種類がありました。両方の照明器具からのグレアがひどく、光の英雄を見つけるのは難しいと感じましたが、公園のランタンが垂直面に設置されている所では足元に花のような光のパターンができ、偶然の英雄を作り出していました。
“テニスコート照明”は、その強烈な眩しさで周りの環境を壊していました。安全上の理由で配置されていることは十分に理解できるのですが、もう少し配慮が必要だという意見が多数でした。
かなり寒い夜だったにもかかわらず、多くの人がベンチや芝生で友人と遊んだりして、公園を使っている、ということに驚きました。人々は明るいか暗いかはあまり気にしていないようでした。
(Lisbeth Skindbjerg Kristensen)
◇Team C:HISTORICAL CENTER
私たちの街歩きの場所は歴史あるアルマス広場から新しいストリートアートの開発が進むエリア。まずTribunales de Justiciaと隣接する建物に注目しました。参加者は、空間と光、特に光の位置、色、強さとその分布に着目し、人々の行動を観察しました。その中で何が光の英雄と犯罪者か、そしてその理由を考え、その状況の改善方法を議論しました。次に移動した公園では、月明かりと影を楽しむべきところを、強烈に眩しい光がだれもいないベンチを照らしていました。夜間は安全でないことは理解できますが、このまぶしい光が人間のニーズに答えているとは思えません。周辺の壁からの反射光で十分な明かりが取れているように感じました。(Acharawan Chutarat)
◇Team D:Moneda宮殿周辺
政治の中心であるチリの大統領官邸を挟んだ2つの広場と公官庁エリアを街歩き。まぶしく均一に照らされた官邸の裏側の憲法広場と全くライトアップされず真っ暗に沈む大統領官邸前の広場と官邸を挟んでの明暗が対象的な場所です。国のシンボルとなる巨大な国旗もポールだけが白々と照らされ犯罪者としてあがりました。また官庁の重厚なビルの壁面がテレビ塔の広告ディスプレイからの光で染まっているのが印象的な光景でした。
広場に点在する銅像なども闇に沈み、なぜ照らさないのかという疑問の声が多く聞かれました。完全の余地が多く見られ、改善案が街歩き中もたくさん出ていました。(東悟子)
◇Team E:パリーロンドン地区
E班はサン・フランシスコ教会周辺の路地を担当。旧市街の雰囲気漂う路地には、クラシックな街路灯が設置されている。ナトリウム灯の低い色温度の光が建物を照らし雰囲気を引き立てます。そこでは、食事をしたりお酒を飲んで楽しんでいる人々がいました。しかし、その光は住宅やホテルの室内空間に影響を与えており、犯罪者としてあがりました。(山本幹根)
英雄と犯罪者の議論が続く
プレゼンテーション会場のチリ大学
Day 2
■グループディスカッション
前日に歩いたエリアの英雄と犯罪者を、そう判断した理由をグループごとに話し合い、改善案をまとめました。犯罪者と英雄を定義し、どうしてそのような環境になっているのかを推理し、改善案にまとめていく、その一連の作業を5時間で行うという密度の濃い時間となりました。
■プレゼンテーション@チリ大学
グループごとに街歩きを通してみつけた「光の英雄と犯罪者」とより良い光環境の提案のプレゼンテーションがチリ大学建築・都市計画学部キャンパスの講堂にて行われました。照明デザインに造詣が深い学生たちとプロの照明デザイナーがディスカッションを重ねて作り上げた提案はCGパースや断面手法図スケッチなどをスライドに取り入れており、趣向を凝らしたプレゼンテーションが繰り広げられました。今回はプレゼンテーションの時間が短く、探偵団コアメンバーの講評の時間が取れなかったのが、残念でしたが参加社からは「視点が変わった」「継続的にこのような活動を行っていきたい」という感想が聞かれ、大変うれしく思いました。
1年に1度ではありますが、世界の照明探偵団員が集い、その地元の人と照明について議論し合うのはやはり継続的に行っていくべき活動だと思います。14回を終え、今までの記録や制作物を眠らせたままにしているので、きちんとまとめて誰でも閲覧できるように整えたいと思います。(岩永光樹+東悟子)

会場は満席状態
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グループごとに改善案を発表