2001年10月5日
少し日が短く感じられるようになったと思ったら外はすっかり秋の気配。今回のサロンは「芸術の秋」をテーマに行なわれた 2つの調査報告と団員による活動の報告が行なわれました。
まず、 10月1日に実施された横浜トリエンナーレの街歩き調査報告が行なわれました。当日はあいにくどしゃぶりの雨でカメラや計測機器の使用もままならない様子だったらしいのですが、雨の中で撮影したみなとみらいの夜景はまた一味ちがう雰囲気。いつもの道路も路面が濡れて車のライトを映していたり、高層ビルの頂部が霧に包まれていたりと幻想的でした。面出団長曰く、「横浜は夜間計画を積極的に計画していて、実際汽車道などはなかなか良い計画がされているけれどまだ課題は残されている。多くの照明デザイナーが夜間計画に携わっているが、照明計画は平面図上で見るものと人間が実際に立った視線でパースペクティブに見るのとでは全く見え方が違うのだからもっと計画時に実際に歩いたような気分で立面の見え方を重視しなければならない」とか。ウォーターフロントの計画は、たとえばパリのセーヌ川河畔などは川に向かっての見え方を重視した計画がなされているけれど、東京の隅田川は逆に川に背を向けた状態で計画がすすんでしまったため、今になって浸水公園を造ろうとしてもなかなか面白くならないのだそうです。横浜の夜景も水際の景色を見て楽しめるような計画にすればもっと楽しくなるのでは、とのことでした。
続いてアートフェスティバル「 art-Link上野-谷中2001」の調査報告が行なわれました。 「 art-Link 上野-谷中」は、1997年にスタートしてから今年の秋で5回目を迎え、すっかり上野の秋のアートイベントとして定着してきました。照明探偵団では『art-Link 98「照明探偵団 谷中に現る」』でご存知の方も多いはず。今回調査に行ったのは上野の森美術館の参加企画「和田みつひと〈光のかたち〉公園灯プロジェクト」です。場所そのものを作品化していく和田さんは、今回上野公園内の公園灯8本を使って光のインスタレーションを行なっていました。既存のポール灯のガラス面に黄色の透明シートを貼って風景を変貌させるというもので、またそのポール灯が上野駅から公園を訪れる動線上に位置していることから突然目に飛び込んでくるようになっています。薄暗い公園の中で生い茂る木々の間から漏れる黄色い光は、ついそちらに足を運んでみたくなるような雰囲気。主張しすぎることなく「あ、そういえばこんなところに公園灯があったんだな」と思い出させられるような、そんな光のはたらきかけを感じたのでした。
最後はヒカリモノの紹介で、今回は探偵団倶楽部団員の田中盛志さんの作品が発表されました。コイズミ国際学生照明デザインコンペにおいて佳作を受賞した「みんなのぼつぼつ。」という作品で、視覚障害者のための黄色いサインブロックを光らせるという斬新なものでした。使用した材料のサンプルや、他の入選作品の紹介なども併せて行なわれ、関心をもった人たちの質問も多く寄せられました。こういった作品や気になるものを持ち寄って皆で話し合うとやっぱり盛り上がりますね 。
また、今回のサロンには遠く神戸で照明探偵活動を行なっている方 2名が参加してくださいました。神戸といえば夜景の美しい街。阪神大震災がきっかけとなって自分たちの街を復興させようと発足した神戸照明探偵団は現在団員約100名と盛り上がっています。独自に制作したパンフレットにはきれいな神戸の夜景の写真が盛りだくさん。これらの写真もプロの写真家によるものではなく、自分たちで好きなスポットの写真を撮って持ち寄ったのだそうです。今後も活動内容を報告してもらえると嬉しいですね 。