第58 回街歩き「蒲田」
1班 JR 蒲田駅西口 東急沿線
1班はJR 蒲田駅の西口東急沿線を担当。ルートは、グランデュオ西館→長さ400mのアーケード街“サンライズカマタ”→昭和40 年最初に天蓋が設けられた“サンロード”→魅力的な飲食店の多い“バーボンロード”。
西館を出て、団員が驚いたのは駅エントランス周りの暗さ。路面にも鉛直面にも光だまりがなく、路面で10 ㏓程度。軒下のダウンライトは不点灯。安全・安心のためにも改善を求める声が多く聞かれました。
駅前の東急プラザファサードにはLED 面発光の強い光を放つ広告と垂れ幕広告がありますが、垂れ幕への光量が周囲の看板照明と比べて不足しており、広告効果が薄いという意見がありました。
サンライズカマタは、通りと直行する直管FLによって、路面400lx、4700K のほどよい明るさで、安くて品揃えの豊富なお店が多く、古い下町の風情がありました。しかし、最近目にすることが多いLED で縁取った立て看板は、正面への配光が強すぎに感じられました。サンロードや、天蓋のないサンロード以西では、光の犯罪者と英雄が多数混在。夜空の見える通りに、メタルハライドランプがまる見えで白い光を放つ街路灯はグレアを強く感じました。温かな光の店内に、棚下のFL の白い光が雰囲気を壊している靴屋もありました。
一方、全員が英雄に挙げたのは、昭和の香りが漂う大衆食堂、真っ白な外壁と店内の怪しげなネオンカラーのペンダントライトが目立つタイ居酒屋、店内から溢れる電球色の温かい光が、歩行者に安全を提供していた天ぷら屋。飽きの来ない街全体の賑わいと、見え隠れする個性的な光が共存共栄する“親しみやすい繁華街”と蒲田を共通認識したようです。 (古川智也)
初参加5 名に街歩きの心得を伝授
サンライズロード入り口 400M のアーケードが続く
昭和の雰囲気が残るバーボンロード
2 班 JR 蒲田駅西口 住宅エリア
2 班は蒲田駅西口から出発、商店街や繁華街から少し外れた住宅街を歩きました。小型飲食店が並ぶクロス通り商店街は古いお店が多い為か、照明は白熱球やフィラメント電球、メタハラの光源が多く、色温度が低いオレンジの光で風勢ある下町の雰囲気が感じられました。通行人も多く、賑わいある通りでした。
通りを抜けると一気に雰囲気が変わり、急に暗いエリアに突入。東京工科大学付近ではほとんどデザインされた照明はなく、通行用の最低限の光を提供するポール灯しか見当たりませんでした。ガラスボール型ポール灯は同じデザインでありながら場所によって乳白や透明が混在し統一性がなく、グレアも強かった為犯罪者に。キャンパスの建物は繊細な建築デザインがあるのに全くライトアップされておらず、もったいないとの意見が多数ありました。
そのまま北に向かって歩き、西蒲田の方へ向かうと整然な住宅街が広がります。駅周辺の賑やかさからは想像できないほどの静けさと道路の暗さに驚きました。あまりの暗さに普段は犯罪者として挙げられるドラッグストアやスーパーの白い過剰な光も、道の明るさに貢献しているという事で英雄。所々で見かける小さな居酒屋やお店の柔らかな照明はノスタルジックな昭和の光とのことで英雄に。街路灯の多くは住宅街だからこそ配慮すべき家の中への光の侵入があり犯罪者に挙げられてしまいました。
普段足を踏み入れない場所を歩いたことで蒲田の印象が変わり、蒲田のもう一つの顔が見れた事が団員にとって一番の収穫になったのではないかと思います。 (黄 思濛)
賑やかさと静けさの境界
3 班 JR 蒲田駅東口周辺
3班は、その甘美な遊興街から駅前商店街・官民学連携のもと近年区画整理されたさかさ川通りおよび行政エリアを含む蒲田駅東口周辺を調査しました。
遊興街はイメージ通りどこまでも主張する灯りの犯罪者が多くみられましたが、その中に設計意図を感じられるスロット店を発見。伸びやかで柔らかなファサードは意外性も相まって団員から高評価。
また街のシンボルである商店街は、管轄が異なる為なのかその通りごとに多種多様な街路灯が存在し、周りの明るさに埋没しながらもその個性を十分に発揮していました。それが蒲田“らしさ”を補っている半面、種類の異なるLEDが通行人の視線の位置に露呈され、白く悪目立ちしていたのは非常に残念な犯罪者に感じられました。もしかしたら、光源の形を考えることで、個性ある英雄になり得るのかもしれません。
続いて、蒲田の中心にありながら裏通りとなって久しい旧逆川道路やその先の行政エリアにあるアプリコホール等は、近年再整備がされ想像以上の環境デザインが確立。雰囲気を損なわないポールライトが配置され好印象。中でも、眩しさを放つ埋込式投光器をカラーコーンで塞いだ事で、淡く漏れた灯りは満場一致の英雄でもありました。このような何気ない偶然の産物が目に留まる事こそが、探偵団の醍醐味だなと改めて感じる街歩きとなりました。
今回感じた蒲田の灯りの印象は、団員みな街歩き前に想像した通りだったようです。ただ、その景観の不統一感による独特の街並みがこの街の魅力へと繋がっている事も明確になりました。街自体ゆっくりと変化をみせており、グレーなイメージの蒲田の夜が人の集う街づくりとしての新たな試みも進めていて、今後はもう少し意図された照明計画がなされるのではないか、課題がクリアなだけに蒲田の可能性に期待できるという意見で合意しました。 (成本志保)
意外にも評価の高かったスロット店のファサード照明
公共施設アプリコホール
4班:京急蒲田駅界隈
4班は京急蒲田駅寄りの商店街「あすと」、駅前広場、駅南側の住宅街を歩きました。そこには落ち着いた仄暗さやレトロ感も残しつつ、おしゃれにゆったりと生活をされている様子が伺えるようなあかりがありました。
「あすと」は8~9mほどの高さをもつアーケード商店街で、蛍光灯で照度を確保し、各商店は提灯やスポットライトで個性を出していました。アーチ上にはカラーの電飾や駅側入口にパネル状のカラー照明があり、まとまり感がある
とは決して言えるものではありませんでしたが、街並みや人の温かみを感じるようなレトロ感のあるあかりでした。
「あすと」を抜けた駅西口広場は全体に仄暗くも心地良いあかり空間でした。商業施設「あすとウィズ」のファサードは、例えば、パチンコ店なのに奇抜さを一切露呈せずそれと感じさえないあかりの表情だったり、街に彩りを添える街路樹は、歩行者動線からのグレアは感じられず、静寂な潤いを与えたりしていました。路面照度は10 ルクス未満でしたが、店舗ファサードや駅に繋がるデッキには点や面の輝度感が広がっており、多くのメンバーが「英雄」と評価したポイントになりました。
駅の南側をしばらく歩いて見つけた蒲田4 丁目の公園。古風な街路灯から漏れる白色光は10ルクスに届かずとも決して陰気な印象はありませんでした。高温多湿な上、無風で汗が止まらない中でも、この仄暗さがメンバーの疲れを癒し、ちょっとした休憩の中で会話が弾む要因にもなったようでした。
最後に歩いたのは住宅街。同じく仄暗い中に時折現れる暖色で植栽や建物を照らすあかりのマンションや理髪店、ワインショップ、ファッションホテル、通りを抜けた交差点のカフェレストランなどは、蒲田の街の印象を覆すレトロで
おしゃれなあかりの溜まり場でした。ここに見てきた仄暗さやレトロ感のあるあかりはどれも心地よく、それまでの蒲田という地域に抱いていた雑踏感を完全に払拭するものばかりでした。
京急蒲田駅が高架化され駅前広場も含めて近未来的な装いに生まれ変わったせいか、あかりもそれまでの良いところは残しつつ、周辺地域とともに生活者に根差したものに変貌しつつあるのかもしれません。 (武内永記)
蒲田4 丁目の公園 暗いながら落ち着いた空間に
「あすと」 アーケード商店街
昭和の雰囲気を色濃く残す商店街から一歩外に出ると暗い住宅街へ続く道。環境デザインが整ってきている公的施設。蒲田は光の境界線はあいまいですが、たくさんの光の要素であふれており、それが蒲田のにぎやかさを創出しているという印象でした。(東悟子)