世界都市照明調査: 重慶
2019.07.04 – 2019.07.05 岩田昌大+Clement Lee
7 月4 日と5 日の2日間、中国の重慶を調査。宋王朝時代から続く重慶の歴史や文化や生活が、新たに進む開発とどのように向き合い共存しているか、または変容しているか、照明の進化による人々のアクティビテ
ィーや街づくりによる影響を探った。
重慶といえば火鍋で有名な街である。初めての訪中で期待を胸に、火鍋の山椒よりも刺激的な出会いを求めて調査の旅へ出た。
重慶の人々の生活
調査の拠点は中国人民政府が位置する重慶市渝中区である。そこは東西6km、南北2km 程度のコンパクトに発展した新市街で、長江と嘉陵江に囲まれた島のような地形をしている。吊脚楼と呼ばれる伝統建築様式によって人工地盤が造られていて、海に浮かぶ山のようであり、建物の反対側に行くには地下1 階から地上11 階のEV を上がるか、遠回りするような場所もある。重慶は別名「山城」と言われているくらいで、そのような立体交差する都市であるからか人々のアクティビティは縦で繋がっていて、何層ものレイヤーが立面的に可視化されている状況が面白く、それぞれが特徴的な場所であった。
調査中は雨雲に遭遇したり曇っていたりと天候には恵まれず、日中も街全体が茶色がかってどんよりとした暗い雰囲気であった。バスの社内は日中でも照明は点けておらず暗い。個人経営の飲食店でもLED 電球一つを店の中にぶら下げている所も少なく無く、室内より明るい屋外に出て作業をしていたりと、皆その暗い状況を受け入れているように見えた。
日中は茶色がかった街並み
昼間は消灯するバスの車内
LED 電球一つのみの飲食店も
洪崖洞から見るライトショー
重慶の有名な観光地として洪崖洞(ホンヤートン)という場所がある。その名の通り崖にある洞のようで、先程述べた高低差のある商業施設である。建物は電球色でライトアップされており、日没前からその施設を目当てに訪れる人や対岸のライトショー目当てに集まる観光客で溢れかえっていた。ライトショーの規模は深圳や香港にも引けを取らないスケールで、東西4kmに及ぶビル群のファサードが連動するメディアファサードは迫力があり、重慶の勢いを象徴するような演出として印象的な風景であった。
ライトショーを目当てに洪崖洞に集まる人々
メディアファサードが連動するライトショー
深夜帯のアクティビティー
瓦屋根の照明器具スケッチ
23 時を過ぎるとライトショーや街のライトアップは徐々に消灯していき、同時に川沿いに集まる人の足取りもまばらになり、施設の中へと集まり出す。金曜の夜という事もあり、施設は多くの人で賑わっていた。0時を過ぎてから家族連れで火鍋料理を食べに来ていたり、果物を売る露店が並び出したりと、重慶の人たちの活動時間帯が遅くまであるという事も伺えた。
観光地調査の後はWFC という重慶で最も高い金融ビルの展望台へと向かった。島の先端には6 本のビルを横に連絡通路で繋いだ形状の開発中の複合施設が工事中の為暗く沈んで見えていた。島の先端で船の帆を広げたようにも見え、竣工後は重慶を象徴する新たな存在となる事は間違いないだろう。夜景としては全体的にクラウンのや川沿いや橋梁や屋根など、輪郭を強調している手法の傾向が見られた。その後は中心街の解放碑広場を調査した。この広場を待ち合わせ場所としてここから夜の街に繰り出す人で溢れかえっていた。照度としては広場の中央で140lx と周囲のビルのインテリアやスクリーン広告からの漏れ光の影響もあり十分な明るさだった。
電球色でライトアップされた観光地
深夜に並び出す露店
解放碑周辺
まとめ
重慶の街の照明と人々の生活はある程度リンクしていた。日中は多少暗くても外が明るいので昼光に頼り、夜のライトショーの後は火鍋を食べ、深夜にはささやかな光で照らされた果物をお口直しに買って食べながら街を散歩する。そんな人々の生活が想像出来た。川に囲まれた場所であるからこそ空は広く、風景としては開放感を覚える場所が多く、立体的なレベル差がある事で場所によって多様な表情が生まれていて、関係はお互いに干渉せず緩やかに分節されていると感じた。( 岩田昌大)
WFC からの俯瞰夜景