世界都市照明調査

東京:戸越銀座

東京調査:戸越銀座

商店と街の光
2014.11.07 黄 思濛+岩田 昌大+畢 雲

全長約1.3kmに及ぶ戸越銀座商店街。戸越銀座商店街の端から端までを一直線に歩き、3つの連なる商店街を大きな視点からそれぞれの商店街の光の特徴を探った。

とこし銀座マップ合体

3つの商店街を読み解く

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店が並ぶ商店街、シンボルともなる戸越GINZAの看板が暗い。

閉店後の銀六会商店街2
閉店後の銀六会商店街
LED化された店内の照明
LED化された店内の照明
混在する2種類の街路灯
色温度の低い街路灯は消灯され寂しい印象
色温度の低い街路灯
色温度の低い街路灯

この3つの商店街は同様のゲートの看板や街路灯があるにも関わらず、それぞれの印象は様々であった。通過するだけでは気づきにくい光の特徴を探る事で商店街の本質に迫る。

商栄会の商店街には2種類の街路灯があり、色温度の高い蛍光灯が点灯し、新設された電球色の街路灯は消されていて残念であった。更にこの商店街の顔とも言えるゲートの看板照明も消され、直下で115lxと他の商店街よりも照度は低い。ゲートをくぐるという経験はこの商店街の特徴の一つであるので活かして欲しい所だ。ここは店舗数よりも築年数の長い戸建て住宅数が多いため、他の商店街よりは暗いが、明るくするだけが全てではないので、照度の抑え方や見せ方にも工夫が見られると、この場所の良さが出てくると感じた。

中央街は店舗が多く集まり中央には駅がある。コンビニやファーストフード店といった店舗が多数あり、漏れ光と賑わいが道に溢れているのが印象的であった。新設された個性的な形状の街路灯やLED化している店舗もあり照明に対しては積極的な姿勢が見られた。時間帯によって明るさはさほど変わらず、光環境がたくさんの人を捌く仕組みとして成功している印象を受けた。

銀六会の商店街は他の2つの商店街と大通りを挟み分離している。電球色の街路灯で統一されていて、店舗が閉店していても街路灯の光によって鉛直面に明るさ感が感じられ、住みたいと思わせる魅力を持っていた。駅近という立地に加えて、近年この地区で集合住宅の開発が進んでいる事がそれを裏付けている。住宅街寄りで落ち着きを演出する商店街、賑わいを作っていく商店街、今後開発が進んでいく商店街、それぞれの特徴を引き立てる工夫が出来れば、店舗と居住者と来訪者にとって居心地の良い商店街になるだろう。(岩田 昌大)

店ごとの照明特徴

商店街を構成する基本単位は店であり、業種により、それぞれ店ごとの照明も特徴がある。
演色性を求めるため、白熱電球を使用している花屋が多く見られる。ある意味「美」を扱う店なので、配灯や取り付けなどは一定のこだわりがあると感じられた。比較的飲食店の照度と色温度が低く、落ち着いた雰囲気を演出しているようだ。うす暗い空間作り故に、隣テーブルの客の様子が気にならず、プライベートが重視されていると感じられた。
一方、効率を求め、低い演色性、高い色温度の蛍光灯を多く使用している自転車屋には、赤やオレンジなどの鮮やかさがなくなり、機械的な雰囲気が漂っている。客のターゲット層にも関係が大きいと感じるが、八百屋や雑貨店といった店などは高い色温度(5000k以上)の照明を好んで使う傾向がある。平均照度も高く、300lxを超えている店もあった。それは商品をはっきり見せるための結果だと考えられる。
これといった特徴がある照明を持つ店は少ないが、照明について、全く考えていない訳でもないようだ。職種や客のターゲットが照明に強く反映されていると感じる。白くて(色温度が高い)明るければ(照度が高い)、照明としてよいという安易な発想は、まだまだ現状としてあるようだ。(畢 雲)

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商店街周辺の光環境

中央街から伸びる道、女性一人で歩くには危険
中央街から伸びる道、女性一人で歩くには危険
東京調査断面スケッチ
商店街の断面スケッチ

商店街が暖かい光で構成された心地良い空間だという事は分かったが、周辺の環境はどうなっているのだろうか?

商店街から一歩離れて垂直に交わる通りに沿って歩いてみた。写真を見ても分かるように明らかに商店街の光は路地にはつながっていなかった。一歩外れると暗闇の世界に入り込んだ様な感じだ。目が明るさに慣れているため横道に入った瞬間は目の前が真っ暗になる、とても安全とは言えない環境であった。所々に商店街のポール灯が1本だけ立っているが、ほとんどが4500Kの蛍光灯が約3.5mの高さにそのまま取り付けてあるだけだった。住宅からの光はほとんど無く、蛍光灯のまぶしさから逃げるように住宅の2階はほとんどカーテンが閉め切られていて居住感は全く無かった。商店街の光が暖かい3000Kの光で包まれていただけに、横路地が通っている箇所は闇の世界への入り口の様で気味が悪かった。何かしら商店街から連続してくる光があれば全然違った形になっていただろう。商店街の中は各組合の格差はあるものの、光は統一されていて各要素の取り合いも上手く調和していた。ただ商店街から一歩離れると光環境が180度変わってしまい、商店街と周囲の境界線が露になっていた。自治体が違うので計画は難しいと思うが、地域に根付いた商店街なのでもっと周囲を巻き込んだプランニングが出来れば、と思った。(黄 思濛)

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