2022.06.28 岩永光樹+ 董曉藝+ 川田ひかる
昨年春に運行を開始した日本初の都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」や客船ターミナルの「横浜ハンマーヘッド」、ハワイの名門高級リゾートホテル「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」などここ数年で慌ただしく開発を進めるみなとみらいだが、観光資源といっても過言ではない”みなとみらいの夜景”はきれいに保たれているのか調査する・・・はずだったが。
■ゾーニングと街路灯の関係性
横浜港周辺の埋め立て地だったみなとみらい
地区は大きく分類すると「中央地区」「新港地
区」「横浜駅東口地区」の3つの区画に分けら
れる。その中でもランドマークタワーやクイ
ーンズスクエアタワーなどの高層ビルが立ち
並ぶ「中央地区」と赤レンガ倉庫や横浜ハン
マーヘッドなど商業施設や文化的な施設が多
い「新港地区」の2地区にフォーカスして光
の特徴を調査した。この2つの地区の街路灯
を調査すると臨港幹線道路や首都高速道路と
並行する通りはナトリウム色の街路灯、いち
ょう通りやけやき通りなど港へ向かう通りは
色温度4000-5000K の街路灯が配置されて
いることがわかった。向う方角によって色温
度が変わる計画は一見整理された色温度計画
のように感じられるが、みなとみらい地区の
建物の色彩計画では中央地区は明るい無彩色、
新港地区は赤レンガ色に準ずる暖色系の色と
いうガイドラインがあるため(『みなとみらい
21新港地区 街並み景観ガイドライン』よ
り)街路灯の色温度計画も建物の色彩計画と
調和していた方が地区ごとの都市景観がより
一層際立つのではないかと感じた。( 董暁藝)
■節電要請を受けたみなとみらいの夜景奇しくも我々が調査した日は、電力ひっ迫による節電要請発令期間であった。開通したばかりのYOKOHAMA AIR CABIN は本来ゴ
ンドラ自体が様々な色に発光するのだが、調査日は消灯され、遠景からはどこを運行しているのかわからないような状況であった。その他にもコスモクロック(観覧車)の電飾やインターコンチネンタルホテルのフラッドライト、アニベルセルのファサードライトアップやワールドポーターズのクラウン照明など、みなとみらいの夜景を構成する代表的な光の要素はすべて消灯されていた。
コスモワールドは閑散としており、節電の影響で来客数に影響が出ているのかチケット販売スタッフに尋ねてみたが「節電による影響は出ていない」とのことだった。これは調査日が平日だったこともあるだろう。照度の観点では上記で挙げたような光の要素が消えてもなお、「中央地区」から「新港地区」を歩いて路面照度を計ってみると15-30lx 程度の路面照度がとれていたため歩行するには十分な明るさがあった。周囲をみわたすと海沿いで黄昏ている人々がいたり、赤レンガ周辺にスケボー少年が集まっていたりと周辺住民には消灯時のみなとみらい夜景を寂しがる様子はなく、華美な輝度感がなくなったみなとみらい夜景をむしろ居心地よく感じているもかもしれない。 ( 川田ひかる)
■都市としての節電夜景の作り方
代表的な夜景の要素が消灯される一方でランドマークタワー付近のグランモール公園円形広場では誰も使っていない状態にもかかわらず約500lxもの照度で必要以上に路面が照らされており、1000cd/ ㎡を越える輝度の光柱は目に突き刺さるように眩しかった。この不必要なエネルギー消費をもっと別の有効な照明要素に流用することでみなとみらい夜景に貢献できるのではないか、もっと節電すべき箇所を精査する必要があるのでは
ないか、と思った。
きらびやかなイメージのみなとみらいを想定して調査に臨んだため今回の節電の影響は少し衝撃的だった。象徴的な明かりが消えたみなとみらいの夜景はバランスが損なわれており、都市夜景は
調和されていることが肝なのだと再認識した。しかし脱炭酸に歩みを進める日本では節電と都市夜景の問題はこれから長きにわたり調整していく必要がありそうだ。董団員はコスモクロックの電飾について「消えている時は視線が通って奥の夜景がみえることが面白い」と評価した。確かにコスモワールドは20:00 閉園だがコスモクロックは24:00 までみなとみらいの景観のために点灯し続けている。20:00 以降は時報的に点灯する瞬間と消灯している時間があっても良さそうだ。
まだまだ開発途中であり、地域が一体となって都市を築いていくみなとみらいだからこそ、未来
環境都市としての矜持を持ちエネルギーを最大限に有効活用した都市節電夜景を創造していくこと
に期待したい。 ( 岩永光樹)