2003年1月28日
今回の照明探偵団サロンは、五反田のデザインセンターで行なわれた第1回トランスナショナル探偵団、イエメン共和国、京都鞍馬の火祭、汐留開発地区「カレッタ汐留」の街歩き、この4つの報告で盛りだくさんであった。その中でもこの2つ、イエメン共和国と汐留開発地区の報告が得に面白かった。
イエメンの1枚目の写真は、自分のいる時代さえもわからなくなりそうな、石と日干しレンガで造られた家々。かつてここが海のシルクロードの要衝として栄えていた輝かしい過去はすべて歴史の彼方に過ぎ去ったような茶色の景色だった。レンガの壁にむきだしに備えつけられた街灯。「やはり照明デザインについての意識のレベルはまだまだ低いようです...」とLPAの方が報告されている一方、横のテレビの画面に映っていたイエメンの夜明け前の静かな山の景色に私は夢中だった。青く発光した空は、アラビアンナイトの魔法の絨毯が本当に飛んでいそうな深い青色だった。東京の都心は1日中、街頭や広告塔の照明が絶えることはなく、そんな光りに溢れた場所では絶対に見ることのできない夜明け前の空の色。夜起きても、パチッと電気を付ければ明るく怖い思いもしない家で育った私が言えることではないが、貧しさがイエメンの魅力を損なっているかといえば、その逆に感じた。
最後は汐留開発地区「カレッタ汐留」。地から上ヘ上へと何十層にも重なる、超高層ビルは、平面の地図には表せないような場所だ。そのビルに照明がつけば、その場の様子はさらに変化する。開発中の六本木ヒルズもそうだが、現在の東京は、平面から、空に向かう街作りが主となった。そんな完璧な建築の中の人工照明に驚くことはあっても感動することは少なく、その建築の内側に立っていると、自分の居場所が無い気がしてしまうことが多々ある。自然光の下で感じとった居心地の良さを感じることが少ないのは、人工光の下にいる時にも、自然光から感じとった記憶を探してしまっているからかもしれない。偶然訪れた建築の中に、居心地の良さを感じたとしたら、過去にどこかで感じた記憶を無意識に重ね合わせているにいがいない。(高橋桃子)