コーヒーブレーク: 面出さんと私
Interviewer: 本多 由実
テーマ:『早起き/生活時間』
本多 面出さんは朝早くから会社にいらっしゃる「朝型」なので、その生活リズムと照明デザインという仕事の組み合わせは一見あっていないように思えます。私も朝型派なので、今日は早起き/生活時間について一緒に話したいと思います。
照明の仕事をしていると現場に行ったりだとか夜型の生活になりやすいです。そもそも夜の街の景色がきっかけとなって、この仕事に就いたということもあるのですが、面出さんはどうなのでしょうか?昔から朝は早起きだったのですか?
夜の名残と朝の光
旅先での朝日は更にフレッシュ
面出 ということは、今日のテーマは「照明デザイナー朝型のすすめ」かな。僕は昔から早起きですが、本多さんは朝の方が調子いい?
本多 調子がでないときもありますが・・・朝日を浴びるのが好きですね。
面出 私はどちらかというと夕日だな
本多 夕日は夕日で好きなのですけど、やっぱり朝日はフレッシュな気持ちになれます。たとえ眠れなかったときの夜明けでも。
枕草子の「春はあけぼの やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」とか、「冬はつとめて」冬の早朝は寒いですけど気がピシッとして好きですね。
面出 確かに、何かがリセットされた爽快感があるな。
僕は朝起きるときに「今日は嫌だな」と思うことが全く無くて、いつも調子がいいんだよね。朝にはさっさっと色んなことができる。
本多 それはいいですね!
面出 都市もそうかな。眠らない都市とはいっても、朝を迎えることによって一日の毒気や人のアクティビティがリセットされるよね。 朝と夕は大気の状態も違って、大気も朝の方がフレッシュだ。夜は人と一緒に何かをすることが多いのに比べて、朝は孤独で自分らしい時間の過ごし方ができる。朝早くからいきなり人と飲みだすこともないしね (笑) 本多さんは照明デザイナーとして朝の光にインスパイヤされることはあるかな?
本多 明け方の空が白っぽくなってきて、建物の輪郭が浮かび上がってきて・・・という朝の風景が好きです。
高層ビル群は夜のライトアップが有名なことが多いですが、朝の青白い空にすっと浮かび上がる姿は個人的におすすめですね。迫力があります。
面出 夕日は、時間かけながら高度を落としていって、最後にすとんと沈むけど、朝日の方が朝焼けがあってもスッとのぼっちゃう気がするなあ。
本多 でも、上る前の白んでくる時間は長く感じますよ。場所によるのでしょうか。
昨年は1年間シンガポールに出向していて、23階に住んでいました。カーテンも窓も開けっ放しで過ごしていたんです。空や街の様子がとてもよくみえました。シンガポールは日の出の時間が遅いのですが、朝日がのぼってすぐに昼の青空になるんですね。だから、短い朝の空を楽しんでました。
ある日はとても紫ぽくて、ある日は全く青っぽい朝で・・・。日によって全く違うのが見飽きなかったです。よく写真に撮ったりもしていました。(←この写真を載せます)
そして、明け方の少し明るい空と、団地の廊下の灯りがよくあうんですね。暗い窓に明かりが灯って、街が徐々に起きだしてきます。夕暮れに街明かりがつくのとは、受ける印象が随分違いますよね。
面出 やっぱり都会でも、自然を感じるのは朝かな。
我が家は目の前が隅田川の水面で、水の色は時間によってどんどん変化する。とくに朝は対岸の窓を反射する光とか、色んな光を楽しめるんだ。寝室はちょうど東向きで、朝カーテンを開けるとダイレクトに朝日が入ってきて、ベッドの中で読書したり新聞読んだりね。
朝に色んなことを思い当たることは無い?ぼくは朝にいろんなアイディアが浮かぶから、ちょこちょこメモをすることが多くて、ベッドの周りには走り書きのためのメモ帳が欠かせない。
昔ね、磯崎新さんが早起きという話を聞いて、建築設計者が朝型というのが意外で新鮮に思ったんだ。そういえば、伊東豊雄さんも朝早くて、昔は神宮球場でゴルフの打ちっぱなしの練習をしてから事務所に来ていたらしいよ。自分でピュアに考えるような時間を、朝に感じていたんじゃないかな。
本多 私は通勤電車の中ですね。一回眠ってリセットされた感じでスッとでてくるというか。
あと、同じ時間に出勤していると、季節の変化を感じやすいですね。ちょっとした変化に気が付きやすいです。
とくに今の季節はあたりに緑が増えてくるのが日に日にわかりますね。
面出 我々の仕事は、夜活躍する職業なんだろうけれど。日暮れとともに眠って、朝日とともに目覚めたいね。
「自然光に学べ」というのが私の信念でもあることだし。
本多 朝は眠っていた五感が動き出すので、自然光についても繊細なところを再発見できる時間ですよね。
早起き照明デザイナーの会でもつくりましょうか。
これからも朝の時間を楽しみましょう!