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面出薫/照明デザイン塾 2025

Update:

面出薫/照明デザイン塾
3 day student workshop 2025
2025.09.13-09.15 東悟子

今年で4回目となる照明デザイン塾。全国から19名の学生が集まり、照明デザインについてじっくり学ぶ3日間。今年から新しいプログラムも増え、さらに進化したワークショップとなりました。

19 名の学生が全国から集まりました

2021年に試行錯誤で始めた照明デザイン塾も今回で4回目。今年も全国から集まった19名の意欲ある学生と盛りだくさんのプログラムをこなしました。バラエティーに富んだ9つのレクチャーに加え、今年は照明メーカーでの研修やプロジェクト視察も行いました。

■レクチャー
照明デザインの基礎知識、デザインプロセス、LPAの照明デザインの哲学や作法のレクチャーを皮切りに、石川県立図書館、高輪ゲートウェイ駅や大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンといった具体的なプロジェクトの紹介等、全9つのレクチャーを行いました。レクチャーのテーマや内容は数回にわたる社内のブラッシュアップを経て、無駄がそぎ落とされたもの。かなり質の高いレクチャーになっていたように思います。
また各レクチャーの合間には質問コーナーも設け、コーナー内で答えられない質問への回答は掲示することで誰もが読めるようにし、学生の疑問にできる限り答えられるようにしました。

■個人課題
参加する学生には、ワークショップ1か月前に個人課題が出されます。今年のテーマは『光のRedesign』。自分の住んでいる町、いつも使っている駅、商店街、学校、自宅など身の回りの光を見つめなおし、リデザインする。これをA3用紙2枚にまとめて提出してもらいます。ワークショップ初日の午後に一人5分間で発表し、みんなで一番問良いと思うものに投票。最優秀賞を決定します。今年の最優秀賞は歩行者道のリデザインが選ばれました。歩行者のための道が夜間は暗いため使用されず、危険な車道を歩かざるをえなくなっている現状を、優しい光と楽しい照明計画をコンセプトに歩きたくなる歩道にRedesign。参加学生の半分の票を獲得していました。

高輪ゲートウェイ駅で担当デザイナーによる解説

■照明メーカー研修
今年新たに追加したプログラムの『照明メーカー研修』。昨年まではLPAが保管している照明器具を紹介していましたが、もう少し詳しく知りたいという要望が多かったため、遠藤照明さんにご協力をいただき実現させることができました。遠藤照明さんのショールームに学生19名が集合し、90分の研修。実際の照明器具を使って、照度が同じでも当てている素材によって明るさ感が違うこと、演色性が違うと色や対象物の見え方が変わってくること、器具の位置で空間の雰囲気が変わることなど、照明メーカーでないと紹介できない盛りだくさんの内容になりました。学生のアンケートでも、一番興味深かったという声が多く聞かれました。

■プロジェクト視察
昨年までは夜の街歩きを実施していましたが、今年はLPAのプロジェクトを実際に見てもらおうということになり、東京国際フォーラム、東京駅、高輪ゲートウェイ駅をめぐりました。レクチャーだけでなく、実際に目で見て体感することで腑に落ちることも多かったことと思います。実際にプロジェクトを担当したデザイナーからの解説を聞き、普段は意識せず通っていた場所の見え方がだいぶ変わったのではないでしょうか。

■グループ課題

グループ課題 まずは平和を定義

個人課題、様々なレクチャーやプロジェク視察を終えた後は、グループでアウトプットしてもらいます。今年のグループ課題のテーマは『平和のための照明デザイン』。現存する多くの理不尽、偏見、差別、戦争などを照明デザインの力で和らげることができるのか、という課題にグループで取り組みました。参加者は3つのグループに分かれて課題スタート。初対面の人といきなり平和について議論し、1日で何かしらの『平和の照明デザインを形にしてプレゼンテーションするというタフな課題です。表現方法は自由。絵を書いても良いし、模型を作っても良いし、身体で表現してもOK。

グループ課題中間発表

まずは平和を定義するところから。考え方のアプローチがそれぞれ全く違うことに戸惑いながらも、どうにか歩み寄りながら意見を取りまとめていく。最後はえいやっ!とプレゼンできるところまで力技で持っていっている感じがしましたが、どの班もそれぞれ面白いものが出来上がっていました。小さい個の明かりが家を形成し街も作る案、いつも集っている教会のカーテンが光る布でできていて、災害時にはそのカーテンを切り分けて身を包むために配布し、平時に戻ったら、それをまたカーテンに戻すという案、感情を光の色であらわし、それが他者と合わさることで様々な光の様相になっていくという案、表現方法を決めなかったことで難易度が高かったと思いますが、三種三様に面白い提案になりました。参加した学生も、他の班の主張や表現に多くの刺激をもらったのではないかと思います。

集中して他の班の発表を聞く参加学生たち

■懇親会
各日の終わりにはみんなで夕飯を囲みながらの懇親会を設けています。レクチャーの合間には聞けなかったことをLPAスタッフに聞いてみたり、学生同士で話す機会になったりと、関係性を築くうえでも大切な時間となっています。最終日の懇親会は一人一人が感想を述べ、終了証をもらってデザイン塾が終わります。最後は分かれるのが名残惜しく、もう少し長く会話していたい気持ちになります。

3日間でものすごい量の情報を受け取り、それをベースに他者の意見も組みながら、一つの形をアウトプットする。とても過酷なワークショップだったのではないでしょうか。ここで得た知識や経験が照明デザインへの理解の一助になればと心から願っております。(東悟子)

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