2005年3月25日
月明かりが印象的な早春の夜、我々探偵団は「東京に残された闇」を探るため、皇居周辺を調査しました。約20名の団員が九段下駅に集合し、まず初めに向かった先は靖国神社。オレンジの光で照らし上げられた巨大な鳥居が、遥か西にわずかな赤みを残した空を背景に、堂々とそびえ立っていました。
靖国神社をでると、団員一行は稲葉団員を中心とする黄コースと、面出団長を中心とする青コースの二手に分かれて光の調査を行いました。黄コースは皇居の周りを左回り、青コースは皇居の周りを右回りに回るコースで、ちょうど反対側、丸の内方面に位置する和田倉噴水公園をゴールとしています。
私の回った青コースでは出発後、早速コースを逸れて花見で有名な千鳥ケ淵へと向かいました。ここにはまだ桜の気配はなかったものの、上向きの照明が開花に備えて既に設置されていていました。コースに戻り九段下交差点へ向かって進んでいくと、昭和館が見えてきました。金属的な建築表面に施されたライティングは、程よい暗さを確保していて、皇居周辺の暗さへの配慮が感じられました。
また、昭和館とは対照的に皇居へ向かって圧倒的な光を放っていたのが、平川門の正面に位置する新聞社でした。新聞社の窓から放たれる光は白川門や辺りの道路を煌煌と照らし、ここまでの暗さとの対比もあってか非常に明るく感じました。しかし、ここで改めて皇居の方を見ると面白いことに気がつきました。それは実際に明るくなっているのは、平川門の白い漆喰壁の部分や石垣の部分だけだということでした。その周辺の木々や水面は強い光を受けつつもなお闇であり、ここに東京に残る闇を解明する糸口を見つけた気がしました。皇居周辺の木々や水面は周囲の光を吸収する存在、いわば都市の光に対するブラックホールとして働いているといえるのではないでしょうか。
一行は更に進み、大手門の前までやってくると、ここにも光と闇の面白い空間を発見しました。この場所で大手門を背にして丸の内方面を見ると、極めて都会的な夜景が広がっているのに対し、真後ろを向くと、まるで都会とは結びつかないような闇の中の大手門が目に入ってきます。全く同じ視点から見ることのできる光と闇の相反する光景は、都市の中の皇居を象徴的に表しているようでした。
最後の見せ場はゴールの和田倉噴水公園です。ここでは噴水に当てられた照明がとても美しく印象的でした。ここにある光源は全て水を照らすためにあるようで、水が光の柱や壁となってあたりを夢幻的に照らしていました。
恒例の懇親会では黄コースの団員とも合流し、おいしいベトナム料理を食べながら、互いのコースで撮った写真の紹介や、他愛もない話に花を咲かせました。初春の夜風にいつの間にか冷えきっていた体は、にぎやかな雰囲気とともに暖まり、楽しい夜を過ごすことができました。