探偵ノート

第002号 ー ホームオフィス、“Half light”と夏至

Update:

Written by Lisbeth Skindbjerg Kristensen 
Lighting Designer
Copenhagen

一年前の春、新型コロナウイルスの世界的大流行によって私たちの暮らしは劇的に変わってしまい、多くの人々がそうであるように私も在宅勤務を余儀なくされた。

私のデスクは窓際にある。自宅での仕事を終えたある日、面白いことに気が付いた。シーリングライトをつける必要性をほとんど感じなかったのだ。薄暗い冬の日でさえも、シンプルなデスクライトとそこから反射する光だけで身の回りの明るさが十分にとれ、部屋と目の前の集中すべき物との間で完璧なバランスを作ってくれる。静けさがなんとなく空間を満たしてくれる。この感じが、メキシコの建築家ルイス・バラガンの人間の“tranquility in the half light(薄明りの中の静けさ)”(1)の欲求や、日本の谷崎氏の著書『陰翳礼賛』に描かれた陰影の美しさを思い起こさせる。

それとは対照的に、私たちの室内の仕事環境の照明は一定で安定し、比較的均一で高い照度になるよう設計されていることがほとんどだ。また多くの会社では、誰もが同じ天井照明とタスクライトの下、柔軟性、効率性と完璧な環境コントロールを実現している。

建築家ルイス・カーンは以前こう言っていた。「人工照明は光のほんの一瞬にすぎない。(中略)自然光がなければ私は空間を空間として定められない。(中略)時間や季節から感じられるムードこそが、常に我々が、自然光によって空間が存在していることを感じる手助けをしているからだ。」(2)

私たちは照明デザイナーとして何か見逃しているだろうか。自然光の活用をもっと推奨して、建築物の中に自然光をもっと取り入れることができないだろうか。“Half light”の静けさや、自然光の微妙な変化に思いを馳せる。それを仕事環境に取り入れることは不可能だろうか。私たちの感性を研ぎ澄まし、その一瞬一瞬に対する意識を高めてくれるのは、いつも自然光の思いがけない微妙な変化ではないだろうか。

親しい友人がつい最近ミラーボールを送ってくれた。私はそれを天井からぶら下げる代わりに窓際に置いた。そのミラーボールが太陽が輝くたびに部屋中に喜びを広げてくれる。シンプルで、気まぐれで、美しい。

今は6月、夏至の月である。一年に2回、6月と12月に太陽の軸が最大限に傾くことで起こる。地球の半分は夏で、もう半分は冬だ。それは自然のコントラストの印であり、多くの文化でお祝いをする時でもある。人間は、光と闇の刻々と変化するリズムの下で進化を遂げてきた。照明探偵団の精神に則り、夏至の日だけでなく、日々自然光のうつろいを楽しみ、祝福することを忘れないようにしよう。

良い夏至を!


(1) Banford-Smith, C. Builders in the Sun: Five Mexican Architects.
(2) Kahn, Louis I. Louis Kahn, Perspecta 7, The Yale Architectural Journal.


Lisbeth Skindbjerg Kristensen
照明デザイナー
コペンハーゲン

デンマーク出身。フリーランスの建築家、講師、照明デザイナー。照明デザイン業務、研究、教育において豊富な経験を持つ。


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