東京調査 さいたま新都心
2019.04.11 林虎 +木村光
さいたま新都心は2000 年ごろに出来た街である。JR さいたま新都心駅を中心に大型商業施設や大型多目的アリーナ、合同庁舎、病院など様々な町の機能が集中的に構成されている。計画的に作られた街が、照明という観点からどのように変化しているかを調査した。
空間を結ぶ光
さいたま新都心の駅周辺は遊歩道が設置され、2F レベルの駅改札から各施設をスムーズに回遊できる積極的な歩車分離の計画となっている。地上レベルは車路用ポール灯で明るく照らされ、遊歩道には一部公園エリアの意匠的なポール灯を除き、アッパーライトやフットライトなど低めの照明が設置され、光の表情もそれぞれ分かれていた。
さいたま新都心駅は北与野駅までの約600mの区間が遊歩道でつながっており、連続した片持ちのガラスキャノピーが掛かり雨天でも濡れず、信号にもかからずに歩くことが出来る。ここには約100m ほどの線路に沿ったまっすぐな道がある。そこでは工期の違いからか片持ちのキャノピー構造は同じではあるが、照明手法は3種類の違いがあった。建築意匠は似ているのに照明手法が変わることで明るさが場所により変わっていた。統一を図ることも重要な気もするが、考え方によっては、直線的な長い通路などで似ている意匠に違う照明手法を使うことで、①距離感を感じられる、②人の目に対して歩く時間に疲れがない、③場所の目印になる。などの単調にならない工夫ともとれるかもしれない。
けやき広場から北与野駅間の連絡通路(北与野駅近く)
けやき広場から北与野駅間の連絡通路(広場近く)
さいたま赤十字病院周辺の連絡通路
広がる街と統一感
2017 年には高度な治療が行われる大型病院であるさいたま赤十字病院が建設された。これにより遊歩道も拡張され、他のエリアと同様にキャノピーが設置されていた。新設エリアのキャノピーは他が片持ちのガラス天井に対し、両側に柱のある金属パネル天井となっていた。照明手法はダウンライトで構成されており、キャノピー下が明るすぎる為か周りの場所を暗く感じる。雨の日以外はキャノピー下を歩く必要は無い為、広い遊歩道を自由に歩ける光のバランスも必要ではないかと感じた。
合同庁舎から見た東側の賑わいのある商業施設
暗さと安全性
さいたま新都心駅周辺は都心としての機能を持ってる。但し照明器具に関しては日々の管理が行き届いていない印象を受けた。特に合同庁舎や郵便局など行政機関が集中したエリアでは、消しているのか消えているのか不明だが、不点灯の器具が多くかなり暗い。コントラストが強いため、顔の識別も難しく安全性に不安を感じた。ただし開けた広場などは高層ビルに囲まれた環境で、オフィス照明の漏れ光により、歩くのにぎりぎり危険ではない明るさがあった。計画的な明るさではないと思われるが、都市的な月夜の明かりのようにも感じられた。
エリアごとの光の格差
さいたま新都心駅の東側エリアは大型の商業施設があり、とても賑わったエリアとなっている。2004 年~ 2015 年にかけて拡張している比較的新しい施設ということもあり、ほぼ全てでLED の照明器具が使われ、またメンテナンスも行き届いていた。
それに対し今回調査した駅西側は、通勤で利用する人が途絶えることはなく、多くの人に利用されていたが、駅東側に比べると商業的な印象は少ないエリアとなっている。賑わいを求めていない故か、前途の通り不点灯な器具が多く、全体的にLED 化されていない。また当初に計画された照明器具が壊れた為か、新たに色温度違いの眩しい防犯灯がついているなど、残念に感じる箇所も多かった。
新都心としての光
さいたま新都心駅が完成してから約20年の時が経ち、照明も変化を迫られたことかと思われる。行政機関というお金の使いどころを指摘されやすい難しい立場もあるかもしれないが、新都心という名前を掲げる場所として、継続性や先進性など、夜の新しい過ごし方をけん引できる街になることに期待したい。( 林虎、木村光)
漏れ光以外が消灯されコントラストの強い通路
さいたま新都心駅コンコースはLED 化されていた