第 61 回照明探偵団サロン
目黒川桜ライトアップ街歩きレビュー
2019.04.17 細野恵理奈
花見シーズンも終え、ようやく暖かさが到来した4 月 17 日、目黒川桜ライトアップの街歩きレビューが行われました。
団員達の多くが英雄と認めたのが、桃色の提灯の連なりが映り込む目黒川の水面。上ではライトアップされた桜の枝や花が揺れ、水面では灯りがゆらめく様子が幻想的で美しかったとの声が集まりました。しかし、それらを照らす投光器や光の色味、ライトアップを取り巻く環境については、多くの賛否両論が上がりました。
桜まつりの主役である桜のライトアップの色味について、まず議論が三分。「目黒川といえば白い桜」の期待通り、白色の光で照らすのべきとの意見や、電球色がよいという意見。また、「花見はお酒が目的なので、もはや何でもいいのでは?」という正直な意見も。赤の演色性が高い光源を用いて、淡い桜色を生かした照明を試したいという声には、皆同意しました。
桜を照らす投光器については、大多数がグレアを指摘。特に目黒川周辺の店が自主的に設置していた投光器について、水平に照射することで対岸への強いグレアを発生させていた例や、軒先から床置きで桜を照らそうとして歩行者を容赦なく照らしていた例に犯罪者認定が集中。しかしながら、自主的にライトアップしようとする行為自体は英雄だとして皆で称えました。
次に、目黒川沿いに並ぶ提灯については、桜色の淡さに対してピンクの色味がきつすぎるという意見も。一方では、その色がお祭りの雰囲気を演出していたり、桜をほんのり桃色に染めたりするので欠かせないとの意見もありました。光源は、 20W の白熱電球と LED 電球の 2 種類があり、提灯の暖かさや風情を感じさせる白熱電球に高評価が。点光源で白さと輝度が悪目立ちしていた LED電球ですが、電力を考えて LED 化すべきという声も。団員が一列に並び、提灯をひっくり返して電球チェックをしていた様子については、「傍から見れば私達が軽犯罪者では?」というコメントも出ました。提灯のピッチに関しては、密に設置した方が水面への映り込みや遠景が綺麗だとする声の一方、桜の花が未開花の箇所では、遠くからは「工事現場の三角コーンや高速の渋滞に見える」ため犯罪者だとする指摘も。
周辺環境では、高輝度の白色の街灯やオフィス照明が、桜祭りの雰囲気を壊すとして糾弾され、ライトアップの時間帯は遮光するなどの配慮を欲する声も。桜のライトアップに対しても興味を持っている店とそうでない店が混在しているため、町に対してもっと働きかけを行うと、全体の統一感が増すのではとの声も出ました。
その他、五反田から目黒へ向かった班から「桜のトンネル」で有名な「かむろ坂」の紹介が。桜が目線より高い位置からライトアップされ、グレアフリーの夜桜を楽しめたという声の一方、投光器の取り付け位置が不適切で、幹を途中で分断するような鋭い光が照射されているなど、改善の余地が大きいとの意見もありました。
桜以外の照明環境もシェアされました。権之助坂商店街では、天井に配置された蛍光灯が、昔ながらの通りをリズミカルに活気づけているという見方があった一方、テトリスのような蛍光管が非常に眩しく、終電間近に化粧をした姿では歩けないという切実な声。その他、ある個人宅の玄関用照明でしだれ梅が球状のランプに覆いかかる姿や、オフィスビルの本棚照明が好評を集めました。また、雅叙園 1F のラウンジ空間は、種類豊かなデコラティブ照明や間接照明、ダイニング内の暖炉などから全体の明かりが構成され、光のレイヤーが幾重にも重なる空間として絶賛されました。
各班のプレゼン後には、弘前桜まつりや千鳥ヶ淵など、全国の夜桜の名所の紹介も。さらに京都から参加した団員が二条城や祇園白川のライトアップの様子を紹介し、街灯として機能する暖かみのある行灯、風情ある町並み、すべてが調和のとれた様子に、皆から歓声が。最後には団員のひとりから「桜の色を魅せる照明の考察」というミニ講義が行われ、桜の色が最も魅力的に見える照明手法の解が導かれました。