2023.09.22 – 2023.09.26 柯永林+劉伝熠
新疆ウイグル自治区は中国で面積が一番大きい省で、周辺八か国と隣接している。また多文化、多民族を有するエリアで、中古代から、中国、中央アジア、インド、イラン、ヨーロッパとの長距離貿易で栄え、文化交流も活発でシルクロードの重要な拠点となっていた。あらゆる文化が共存している探偵団未踏の地、ウイグル最大の都市ウルムチの光を調査した。
新疆ウイグル自治区は中国で面積が一番大きい省であり、周辺8か国と隣接している。中古代から国際貿易で栄え、シルクロードで重要な地域となっている。中国、中央アジア、インド、イラン、ヨーロッパとの貿易と文化交流が行われていた。そのため、新疆は多文化で多民族の地域である。中国でもとても神秘的な地域として近年有名な観光地となっている。その中でも最大都市ウルムチを調査してきた。
ウルムチ市はここ十年再開発で都市化が進み、商業施設、オフィスビル、集合住宅などが占めている印象だった。旧市街はモスクを中心に作られていたが、現在ではモスクがビル群にうもれてしまっていた。(柯永林)
■新疆国際大バザール
ウルムチを訪れるならば、新疆国際大バザール(Xinjiang International Grand Bazaar)を見逃すわけにはいかない。ここは世界最大のバザールであり、イスラム文化、建築、エンターテインメント、飲食が一体となった場所である。新疆の観光の中心地であり、コンファレンスセンターとしても機能しており、重厚なイスラム建築スタイルが特徴である。建築の機能性と時代感を踏まえつつ、古いシルクロードの繁栄を再現し、西域の民族の特色と地域文化を表現している。新疆国際大バザールの夜景はきらびやかで、特に照明がこの生き生きとした市場の魅力を一層引き立てていた。日が落ちると、大バザールの輪郭は一連の精巧な照明によって強調され、独自のイスラム風の特徴を描き出している。暖色の照明は温かく歓迎する雰囲気を加えるだけでなく、建築の金色ドームを際立たせている。入口では、「I ♡新疆」という文字が目に飛び込み、その上の屋根のライトは色を変え、賑やかな雰囲気を作り出している。中へ進むと、広場に大きなLED スクリーンがあり、かなりまぶしかった。それをなくすと良い雰囲気になるのではと残念に思った。
大バザールの照明が建築の様々な所に現れ、アーチや尖塔、細長い窓など、細部に至るまで照らされている。それぞれのディテールが光によって巧みに強調され、視覚的なレイヤーを生み出している。さらに、店の内部は外よりも明るく照らされており、その鮮やかな明暗の対比が訪れる人々を迎え入れ、様々な商品や香辛料の香りが溢れるショッピングの楽園へと誘う。大バザールは色とりどりの照明とGOBO ライトの使用で一層生き生きと魅力的になる。人々は、精巧な工芸品を見たり、本格的な新疆料理を味わったりする中で、ユニークな文化体験を享受できる。ここでの
夜は、光と影、色と質感、過去と現代が織り交ざり、新疆の多様で豊かな文化の物語を体感できる。ウルムチにおける色彩は、単なる視覚的表現を超え、文化の伝達手段ともなっている。ウイグル族の色彩への愛好は、その豊かな文化的伝統と、精緻なイスラム建築の装飾スタイルに深く根ざしている。彼らは、鮮やかな緑、赤、青、白、黄色を好むことで知られ、これらの色を巧みに組み合わせて、鮮明なコントラストと活気ある豊かな視覚効果を作り出していると思った。
この色彩の好みは、ウイグル族の独自の美意識を反映し、彼らの深い文化的基盤を映し出している。色の選択は、ウルムチの特有の自然地理的環境、社会文化的背景、民族の歴史、文化、宗教信仰と密接に結びついており、鮮やかな文化的風景を創出している。夜になると、これらの色彩への好みは都市の照明デザインに反映される。夜の光に照らされるウルムチの建築は、光と影の舞いを超え、色彩と光の交響曲を奏でる。照明は建築の輪郭と装飾に沿って流れ、色のコントラストと深みを強調し、まるで都市に命を吹き込んだかのように、ウイグル族の文化的息吹を感じさせる。このデザインは、都市の美観を高めるだけでなく、伝統と現代を繋ぐ架け橋を築き、日々の生活の中でウイグル族の文化の魅力を絶えず体感し、味わわせるものである。 (劉伝熠)
■紅山公園
今回高所撮影のため訪れた紅山公園では、あいにく大雨が降っていた。雨が原因なのか、園内に人は少なく、快適な環境で調査ができた。園内の木には多くのスポットライトが設置され、ポール灯にはGOBO らしいものが多くみられた。夜は一転、遊園地のように動きが激しい派手なカラー照明で園内全体を照らし、驚くような照明の演出がランダムに行われ、きちんと計画されていないように感じた。もしきちんとイベントやフェスティバルなどに合わせて計画されていたら、いい公園になるはずだと思った。紅山公園園内にはお寺もある。雨で閉まっていたが、照明は点灯していた。おもしろいと思ったのは、牌坊(はいぼう)の照明が表面を照らすのではなく裏面を照らしていたこと。入口のドアと壁が明るく照らされ牌坊がシルエットになっていた。お寺は斜面の横にあり、正面へのグレアを配慮したためだろう。
紅山公園から見た夜景は、市内で一番高い建物にはファサード照明が施されていなかった。その隣のビルは低層部に巨大なLED のメディアファサードがあり、周りをその色で染めていた。中心街の夜景は低層部に照明が多く、タワーの照明はあまりみられなかった。観光スポットでは、建物全面のカラー照明でお客を引き込もうとしていた。一番明るく感じたのは、それらをつなぐ道路照明だった。
■ウルムチ市内でもう一つの高所はヤマリク
山森林公園である。北側から天山山脈を背景に都市の一部を見下ろすことができた。南側に立ち並ぶ集合住宅の暖かい室内から漏れてくる光が落ち着く感じがした。また、南側の道路照明は紅山公園から見たのと比べて更に明るかったように思う。
■まとめ
今回は新疆で漢民族がもっとも集まっているウルムチ市で調査を行いましたが、近年の開発が激しく古くからの市場国際バサールや紅山公園などが観光スポットとして整備され、もともとウイグル民族生活や習慣が薄くなっているように感じだ。しかしウイグル族の人々の心の情熱はところどころに感じることができた。ある意味観光スポットエリアのカラフルな照明がウイグル族の世界中からの観光客へのおもてなしだと受け止めた。ウルムチ市は新疆ウイグル自治区中ほんの一都市である。まだ壮麗な自然観光資源を持つウイグル族が集まるカシュガル市など新疆の南部でも調査したい。(柯永林)