Written by Charles Stone
Lighting Designer
New York・Seattle・Tucson
照明探偵団のコアメンバーとしての一番の思い出は、他のメンバーたちとテーブルを囲み光について語りあった時間だ。私たちは12カ国から集まり、プロとしてそれぞれ違ったバックグラウンドを持つ。私はいつも彼らのアーティストとして、実践者として、教育者として、そして照明デザイナーとしてのポエティックかつ科学的で幅広い、光に関する観察っぷりに感激させられる。
照明デザインの専門家に求められるユニークでかつ非常に重要な能力は、観察力だ。私たちは『観察のエキスパート』であり、そうでなければならない。つまり私たちは光の科学や応用を理解し、団員のGustavo曰く「光がどう感じるか」を言葉だけで表現できなければならない。
コロナ禍のこの18か月の間、私が代表を務めるFMS studiosでは、モックアップや日々のメーカーによる製品紹介といった実地の照明器具評価が闇へと消えてしまった。通常なら照明器具をいじったり、壁に映したビームの見え方について議論したり、サンプルを分解してみたりする。(そして時に偶然に壊してしまうことも…) 人間の眼の驚くべき性能の範囲は、高照度の体験に注目することも求められる。しかし昼光を評価するための日中のモックアップや現場確認も行えないでいる。このような観察活動の欠如は、解決すべき問題を生み出している。
もし観察のエキスパートになりたい、もしくはエキスパートでいたいのなら、ただ光の効果を見るだけでなく、写真と言葉の両方で記録をしておかなければならない。実際には写真が先で、言葉がそのあとにくる。探偵団のコアメンバーでさえも、その観察力が消えてしまわないよう常に磨き向上させ続けているのだ。
私はこのパンデミックのほとんどの時間を米アリゾナ州ツーソンの自宅で過ごしている。この夏私は車を走らせ、アメリカ南西部のフォーコーナーズに広がる大自然への冒険に出かけた。この旅を共にしたのは、愛する妻とiPhone12 Pro、唯一この旅で持参したカメラだ。
iPhoneの光をとらえる技術が良くなってから、私は他のカメラは持ち歩かなくなり、『最高のカメラはいつも持ち歩いているやつ』という言葉を学んだ。ここではiPhoneの技術仕様について掘り下げるつもりはないが、単純にカメラがどう作動するかを理解することは重要だ。とりわけ、この技術の限界と、うまく撮影できる特定の光の範囲を理解することが大事だ。
私たちはツーソン北部の旅へと出発した。ある地での観察をするミッションのためだ。もし同じルートで旅をしこの景色に出会いたければ、長時間に及ぶドライブを覚悟したほうがいい。例えばアーチーズ国立公園やキャニオン・デ・シェリーは人里離れた野生の地であり、ついでに行けるような場所もないのだ。ただ自宅の暖炉から見える満月やモンスーンの虹は10歩も歩けば見られるように、旅をすることが必ずしも必要なわけではない。
もしあなたが冒険の地に着いたら、その光環境を丁寧に観察しよう。光の強さや方向、影の濃さやグラデーション、色相、強さややわらかさ、そしてあなたが感じたこと。それからあなたの目を引いたものを丁寧にフレーミングする。もちろん、それが写真となる。適した場所にカメラを向ければ、イメージを捉えられる。あなたは光の中に立つだけで良いのだ。
ツーソンに昇る満月
Petrified Forest National Park
キャニオン・デ・シェリー・ナショナルモニュメント
アーチーズ国立公園、5番通り
ブライスキャニオン国立公園
モンスーンレインボー
1321km荒野の旅
Charles Stone
照明デザイナー
Fisher Marantz Stone (FMS) 社長
ニューヨーク
ニューヨークとシアトルにスタジオをもち、世界中で何千ものプロジェクトの照明を担当している。またTraveling Lightレクチャーシリーズを20か国で行っている。