新潟市民は市内を流れる信濃川と、それに架かる萬代橋をこよなく愛しているそうです。先月新潟で行われた「萬代橋とその周辺の景観を考えるシンポジウム」に参加して、その心意気の深さに感動してきました。市民と民間企業と大学と行政が垣根なしに街の将来を語り合っているのです。これにはお世辞抜きで賛辞を送ります。篠田市長も加わって理想的な街づくりの仕組みを感じました。
もともと京都大学の樋口忠彦教授が、以前新潟大学で教えていらしたころから、私は「にいがた寺町からの会」との付き合いがあり、そこに架かる萬代橋の夜間景観について多くの方たちと話し合ってきました。新潟大学の学生もたくさん参加し、市民からの寄付で自ら橋をライトアップしたり、その後に復刻版の照明を再現したりするなど、萬代橋を巡る話題は事欠きません。そして今回は更に橋を美形に見せようと、アーチの部分の橋裏を照らしあげる実験を企てたのです。ボランティア学生の乗った釣り船が2艘、たくさんの蛍光灯を上向きにセットして準備万端。シンポジウムを終えた市民や行政の方たちが川岸に下りて照明実験の説明を受けて夕暮れを待ちました。2艘の船が橋の上下を行ったり来たりして橋裏を照らす効果を見せています。「う~ん、もうひとつ光のパワーが足りないのかな~」「もっとアーチの端に寄って見たらどうかな」などと勝手な感想が飛び交います。本当に照明実験というのは楽しいものです。やってみて初めてその課題が良く解ります。
実験後の私の感想。萬代橋がその形の素晴らしさを夜まで伝えるための秘訣を3つ。まずは橋の側面につけられた復刻版照明器具の発するグレアを取除き、その面に柔らかい光を当てること。次に橋の両端に輝く民間企業のこれ見よがしなPR光をトーンダウンしてもらうこと。そして最後に橋から上下300m程度までの堤際に建つ建築構造物のファサードを丁寧に照明デザインしてあげることです。こうなれば抜群です。橋の周りで美しい写真が撮れます。思わず通常では無料で語らないデザイン改修案を口走ってしまいました。まあ良いか、これも市民力のお陰でしょう。しかしこれ以上プロの照明デザイナーをボランティアで使ってはなりませんぞ。はっはっは。
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