探偵ノート

第048号 – 何だか今、インドがとっても熱いよ

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日本人のインド好みははっきり二分されるということを聞いたことがある。インドを訪れた旅行者は、「もうあんなところ二度と行きたくない」というのと、「インド大好き、絶対にまた行くぞ」というのだそうだ。私は完璧に後者だった。学生時代からこれまでに、色々な用事を作ってはインドに旅行や出張を繰り返した。1985年のムンバイ出張では赤痢をもらって帰国し、そのおかげで14日間、若い看護婦つきの法定伝染病用の隔離病棟住まい(有給休暇)を経験し、それを契機に完全禁煙まで成し得たほどだ。

私にとってのインドの魅力はその「不可解さ」によるものだ。たくさんのことが何故そうなのか不可解である。私の持っていないものの全てがあそこにあるようにも思える。時折、日本文化の対岸にインドの文化があるようにも見える。だからインドには私の日常の裏返しを見に行くようなものだ。街を歩いても、たくさんの人達と接しても学ぶことが実に多い。多くの富と貧困が平然と隣り合わせている。そして彼らは時に際限なく知的だ。食事のとき、彼らの右手の指使いには惚れ惚れする。受け入れ難いインド風も時々はあるが、それ以上にインドは素晴らしい。

そのインドに出かける頻度が最近特に多くなってきた。2005年の9月にインド照明学会から「LIGHTING INDIA INTL 2005」という会議の基調講演に招かれてからのことだ。私は「アジアの建築照明デザイン」というテーマで、欧米に発した建築照明デザインの思想や手法が、21世紀にアジアで少しずつ異なる品種の花を咲かせ始めている事実を報告した。照明デザインはその土地の文化や気候風土を反映して少しずつ特色の違うテーマや雰囲気を作り出すべきで、私たちLPAのSingapore事務所とTokyo事務所の現在進行形のアジアン・プロジェクトをパワーポイントで紹介した。私のスピーチはインドの聴衆に対して大成功のように見えた。かなり衝撃的だった様子だ。講演後の名刺交換のための長蛇の列がそれを物語っていた。しかし私を悩ませたのは講演終了まぎわの矢継ぎ早の質問だ。ほんとに彼らは質問が大好きで、彼らの早口で一方的な意見や質問に答えるのに難儀した。「あなたの質問したいことは*****というようなことなのですね?」、というように聞き直すことしばしば。しかも建築家やデザイナーでなく、照明エンジニアや電気設備関係者の質問はほとんどナンセンスな内容なのだが、それにも丁寧に答えるしかない。なるほどそんな質問もあるものだ・・・と学習する。

その楽しい基調講演のおかげもあって、たくさんのインドの友達もでき、デリー、ムンバイ、カルカッタ、バンガロールなどに計画されている多くの建築や都市照明の仕事への誘いをいただくようになった。私は全てのインドの仕事に興味はあるのだが、会社の仲間は少々その異常な熱気に恐れをなしている。どうしたものか。異常なほど熱い風がインドから吹いてきた。砂ぼこりとターメリックの香りにのって・・・。

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