その他の活動

照明探偵団 上野公園に現るvol.2

Update:

「上野の杜」の明かりのあり方や未来形を考えるワークショップ
2017/10/16,11/13-11/14  高野+森+佐藤+秋山+岩永

今年初めに行った「照明探偵団上野に現る」の第二弾を東京国立博物館をお借りして開催しました。上野の夜の在り方を街の方々と考え、検証実験してみるという内容。雨の中での開催となりましたが、様々なディスカッション、実験を通していろいろなことがわかり貴重な体験となりました。

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東京国立博物館を借りてのライトアップワークショップ 自分たちで計画した照明プランを実施に試す貴重な機会となりました

今年の1月と2月、「上野夜公園」と題し街歩きのワークショップを開催。今回はその第2弾。一回目のフィールドワークで検討した上野公園の照明のあり方を実践するワークショップを東京国立博物館(以下東博)で行いました。ライトアップ実験は「第二回・TOKYO数奇フェス」の会期中に行われ、関係者だけでなく、市民の方々も上野公園の可能性や潜在価値を再発見することができたワークショップとなりました。(岩永光樹)

■第1夜 :照明実験&プロポーザル作成
今回は3日間かけて照明のプロから学生・主婦まで幅広い方々のアイデアを持ち寄り東博のライトアップに対するプロポーザルを検討。最終日に東博本館・表慶館、法隆寺宝物館までのアプローチに照明器具を設置してライトアップするという内容でした。
第1夜である10月16日はあいにくの雨。18時から黒田記念館でのガイダンスに始まり、東博に移動し本番で使う照明器具を実際に点灯。東洋館2階から本館・表慶館に向けて照明をあて各照明器具の性能・特徴を確認しました。その後19時からは普段東博の夜間開館時に行われている照明を点灯し様々な場所から観察・検討することができました。
現地での調査が終了した後、再び黒田記念館に戻りA班(本館)・B班(表慶館)・C班(法隆寺宝物館前・黒門)に分かれ各班で担当箇所のプロポーザルの検討を行いました。東博の白昼の画像を印刷した青紙に白・黄・オレンジ・青などの色鉛筆で夜景のプロポーザルスケッチを描き込む班、口頭で作りたいイメージ・手法を伝える班など提案手法は様々でした。第1夜は3時間で現地調査とプロポーザル検討までを一気に行うタイトスケジュールでしたが、参加者の活発な討論やスケッチ作成により第2夜の照明実験への期待が高まりました。(高野はるか)

DSCN6857 東博の木下さんからイベントの趣旨説明

IMG_3953 東洋館2階から本館の屋根を照らす実験の風景


DSCN6918 さまざまな照明器具を点灯し、その効果を確認

DSCN6966 班毎に分かれ、ライトアッププロポーザルを作成


■第2+3夜:照明実験+ライトアップ本番
第2夜の11月13日のワークショップではグループごとで考えた照明計画案が、実際の空間にどのような光の現象を起こしているのか確認し、理想的な光景を作り出すための最終調整を行いました。本番に備え、観覧者に向けた照明計画のプレゼンテーション方法を議論しました。
11月14日、いよいよライトアップ本番。各グループが思案した理想的な光環境を発表しました。プレゼンテーションでは工夫を凝らした演出をするグループもあり、見応えのある講評会となりました。

IMG_4570 IMG_4503 DSC_2963 DSC00449 IMG_4581 DSC00933 各班からライトアップコンセプトの発表とその講評が行われました。

■A班:本館
上野照明探偵団の捜査ファイルを引継いだのは、博物館前の黒田清輝記念館。
上野照明探偵団2期生に与えられたミッションは、「夜を楽しむエリアとして上野公園はどうあるべきか」というテーマ。私たちA班14名の担当は、東博の本館でした。
東博本館と言えば、上野の杜に登る旧参道の最奥で軸線を受止めています。それもその筈、かつては徳川家菩提寺の寛永寺本堂、明治維新後は新政府の宣伝塔として数多の博覧会のパビリオンが置かれ、日本文化の焦点を担い続けた場所なのです。面出団長の指導にも思わず気合が入ります。
ワークショップ初日は46年振りの記録的寒さと暗がりの中での現地調査なるも議論は白熱。「裸樹のシルエット」や「宝箱から漏れる光」など幾つかの印象的なキーワードが飛び交いイメージを捕獲するように本館の外観写真に光と闇が色鉛筆で描き加えられました。やがて皆が大切に感じる二つは、東博の二人のゆるキャラ:ユリノキちゃんとトーハクくんが体現する上野の自然と日本のカタチであることに思い至り、そのまま照明実験のコンセプトとプレゼンに反映されました。
ライトアップ本番は、入口の灯りだけが漏れる真っ黒な本館壁面からスタート。次に大壁面はLEDビームで60秒周期の7色に照射が始まります。ピンクや緑色は季節の移ろい、赤い光は幕末の戦乱の炎上など、この地に流れた時間を想起させるものでもありました。一度白色にそろえられた壁面と大屋根の軒を、私たちが選択した色:本館石材の素材色であり木材にも通じるやや暖かめの色に変えるのは5000ケルビンの色温度を半分程に下げるフィルターで9灯の光源を班のメンバーが覆っていくチームワークでした。
皆の掛け声で本館前のユリノキが点灯、舞い落ちる枯葉に、守護神のような大樹の終焉と来春の復活がクローズアップのように照射されて、照明実験が終了しました。(森 徹)

■B班:表慶館
Bチームは、片山東熊設計によるネオ・バロック様式の明治建築、表慶館を担当。本館の重厚感に対し、貴婦人のイメージ、メロンシャーベットカラーとなったドーム屋根、暗く沈んだ正面玄関、現在開催中の展覧会の横断幕の活用、フラットな印象の両翼の外壁意匠、怖い感じの入口を飾る獅子。様々なアイテムを単なる問題解決ではなく、実験的なライトアップをやってみるということとなりました。
メンバーが最も注視したのは現在暗く沈んでいる正面玄関。列柱を含め奥行き、横断幕をRBGカラーで形どり、玄関内側から外へ照明を当て、真ん中を際立たせる案が出ました。
平面的な印象の右翼の外壁は、凸部分は白、凹部分はオレンジといったコントラストを付けたり、建物のエッジを際立たせたり、木々へはアップライト、貴婦人のイメージで青や紫の照明を当てるといった案も試しました。
正面玄関につながる階段は、浮遊感を出すためにレフ板を使って濃淡を付けるというアイデアも出されました。
最終的に、地上から空へ向かって浮遊していく、日常から非日常へ誘う照明というコンセプトで玄関は色温度が低いものから高いものへと上昇するイメージで浮き立たせました。
入口の獅子像は、斜め下から照明を当てることで、怖いイメージからの脱却を測りました。
階段から正面については、階段手前から色温度を下げた照明を当て浮き立たせ、玄関および館内からの照明により、列柱の存在感、建物の内部へと誘うことを意識しました。ドーム屋根は既存の照明器具の方向を若干変えました。木々には照明を当てなかったのですが、いい具合に壁面の演出となる影ができました。
今回は限られた時間と機材の関係で、外壁は右翼のみの照明となってしまいましたが、再チャレンジできるならば、本館〜表慶館〜宝物館へと季節ごとの一連のストーリーとして、回遊することを目的とした照明にチャレンジしたいと思いました。(佐藤信代)

■C班 正門から宝物館へのパッセージ
C班は東博の正門から、法隆寺宝物館へ至る通路を担当。通路脇には背の高い木が多く茂るため、暗がりの多さが目立っています。防犯灯の眩しさのと木の暗がりとのコントラストで一層不気味さを増しており、通路の突き当たりの宝物館に足を運びにくい状況でした。そこでの問題点は、宝物館への来館者が少ないこと。そこで法隆寺宝物館へ来館者を誘導するための光をコンセプトとしました。
ディスカッションで出た意見は、通路にある建築やモニュメントへのライトアップで視界の変化を作りたい、他の建物のライトアップを相殺しない統一感、最終目的地である法隆寺宝物館を引き立てるバランスをどうとるか。
照明器具を使用したワークショップでは、器具を積極的に移動させながら通路を歩き、交差点などのポイントごとにディスカッションをして調整を重ねました。
最終的に選んだ手法として、①トンネルのように生い茂る木の葉先を照らし浮遊感をもたせ、空間全体の明るさを保持、②通路の合流点にボラード照明を置くことで視界のポイントを意図的に作り来館者の安心感を作る、③宝物館を引き立てるために、黒門のライトアップを控えめにして空間全体になじませてバランスをとりました。実際のライトアップの成果は、眩しさを抑えた変化のある風景を作ることができ、法隆寺宝物館への誘導となるライトアップができました。上野の森には樹木が多くあることから、担当した通路に似た風景が多く点在します。今回の私達の提案は、今後の上野の森の照明計画に反映できるものになったのではないでしょうか。(秋山真更)

■3日間通しての感想
「ここはもっとこういう風にしたい」という思いは誰しも持つもので、それをイメージとして描き起こすことはそう難しいことではないと思います。その反面、実際にそれを現実にすることは自力だけでは難しい、幸運や機会が重ならなければできない時もあります。今回照明探偵団はワークショップを通じて、実際に照明器具を使って目の前でライトアップのプロポーザルを再現・検証できました。
ワークショップで出たアイデアでは昼光色・昼白色の照明だけでなくRGBのLEDを使ったプランや、照明を樹木や水面にあてることでできる影や反射を利用したプロポーザルが特に興味深く、様々な人のアイデアや意見が専門家やプロの知識・経験でかみ砕かれ再構築することで実現可能な新しい提案の種になるのを見ました。
昼だけでなく夜も楽しめる上野の景色に、このワークショップでの提案がひょっこり入っているかもしれないと思うとワクワクします。上野に新しい夜の一場面が生まれることに期待しています。(高野はるか)

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