探偵ノート

第023号 – Hanover Expo 2000 をちょっと覗いて・・・

Update:

実は10日ほど前に、私は既に同じ表題の素晴らしい原稿を書き上げていたのです。ストックホルムから成田に向かう帰国便の中。気持ち良く適度に酔いながら、しかもかなり真剣にハノーバー万博の光について論評しました 。しかしどういうわけか、書き終わって「よし、ひと寝入りできるぞ!」と思った瞬間に、保存キーでなく悪魔のようなデリートキーを操作したために全てが消去してしまいました。頭の中が真っ白け…。そういう経験 あるでしょう。間抜けな自分に呆れて物も言えないのですが、機械の冷酷さに呆然とするだけでした。平静を取り戻すのに、この私でさえ10分ほど掛かったかな。白くなりっぱなし。私はこのような経験、実は3回目なのです。焦らず直ぐに復帰する処置をとれればすむことも多いのですが、私の場合には駄目でした。まあ、そんな泣き言イントロばかりでつまらないので、前回とは全く事なる内容で、ハノーバー万博をレポートしましょう。やっと書く気になったのです。

ドイツのハンブルグに Ulrike Brandi Licht というちょっと面白い照明デザイン事務所があって、数年前にそこの代表者のウルリケさんと、その旦那のクリストフさんが私達の事務所に突然現れました。Tanteidanに興味を 持ったと言うのです。その後、彼らの事務所の若い所員がLPAに来たりして、徐々に交流も深まり、[tanteidan.org]というグローバルな Web Siteを一緒に立ち上げるまでになりました。まだ十分な内容ではないのですが、 少しずつできてますので覗いてみてください。

そんな彼らがハノーバー万博の屋外照明全体計画を担当した、と自慢げに言っていた事もあって、9月中旬にハンブルグの事務所を訪問し、半日ほどだったけれど、万博会場を案内してもらったのです。でも午後について夜 の9時までしか会場にいなかったので、つぶさに観た訳ではありません。私は本質的に万博のお祭りがあまり好きでない。何か見ることを強制されているようで…。

万博会場は従来から見本市に使われていた施設の一部と、新たに増設された敷地とがくっついて出来ています。従来の敷地にはアジアを中心としたパビリオンとテーマ展示、新設の敷地にはヨーロッパ諸国が軒を並べる、と いった配置です。例のごとくアジア諸国は金も掛けずにチョコマカとした小建築が多い中、やはり話題をさらっている風なのは、建築家・坂茂さんとフライオートーの共同設計による日本館。入るための行列もひときわ長い のです。紙の管を構造材として使ったユニークなドーム状のパビリオンで、当然リサイクルを謳っています。2階レベルより入ると、1階に配置された展示コーナーが紗幕の下に埋もれたように見えて、とてもダイナミック な建築です。光も拡散しながら霞んだ様子で、けっこうな雰囲気でした。残念なのは展示のコーナー内容と展示方法。環境汚染に対する日本の取り組み姿勢などを見せているのですが、う~ん、もう少しクールな見せ方でき ないのかな、と思います。やはり20世紀型なのです。

それに比べて、どういうわけかアジアの中に入れられてしまったアイスランド館は建築と展示のシステムが大胆で好きでした。大きな青い立方体の建築です。外皮にはうっすらと水の幕が落ちてきます。明るい屋外からいっ たん中に入るとひんやりと青く薄暗い室内に、螺旋状の通路があって、上り詰めて降りてくる。外と内とは実に巧妙な青いテフロン幕で仕切られています。外の50,000ルクスの明るさが、室内で300ルクスの青い光に変化する。一枚の幕で、見事に内外の光環境の演出。アイスランドって感じが上手く伝わってくるのも高得点の原因になっています。

その他のアジアはいつもの様子。私の好きなシンガポールだけ、さあ~っと覗きましたが、展示のつまらなさは格別。あんなにスマートな国なのに、どうしてこうなの?とがっかりされられただけでした。

なんと言っても私が楽しかったのは伊東豊雄さんのデザインした「健康」というテーマ館。隣のフランスの建築家ジャン・ヌーベルがデザインした「情報」のテーマ館が無機質なだけに、とても体感的で未来を想起させるに 十分なインパクトがありました。だいたい建築雑誌などで見た写真の美しいイメージを持って現物を見ると、多少がっかりすることも多いのですが、この伊東さんの仕事は美しい写真以上の面白さです。オバQのような形を した大きな風船が林立する広い前室を過ぎると、薄暗い体感空間に入ります。100台ほどのモダンデザインの床屋の椅子のようなものが散りばめられてあり、そこに座って体感するために、約3分ごとに人を入れ替えます。 私などはあまりに気持ちがいいので、連続して座っていたほどです。四周の壁と広い床が映像を映し出すためのスクリーンになっていて、リヤーとフロントのプロジェクションが使われています。椅子は誰のデザインなので しょう。ドイツのメーカーが開発したものかも知れません。座って脇に点滅するボタンを押すとゆっくりと背が倒れてきて、そのままハンモックにでも捕まったかのように揺れ出すのです。ふんふん…と思っているうち に、光の効果もあって気持ちが落ち着いてきて、重力をなくしたような感じになりました。椅子の座り心地、揺れ心地の良さと光の演出が見事なのです。壁床の映像シナリオはさすが伊東豊雄さん。お洒落にできていました 。天井までスクリーンにできなかったことが、ちょっと残念だったようにも思いますが…。

おっと、いけません。このように思うに任せて書いていたら、依頼された原稿の量をとうに過ぎているではないですか。この飛行機ももうじき南の島に着陸するそうです。未だ万博の報告は半分も済んでいない感じ。この続き は、次回の探偵ノートに任せましょう。さあさあ、もう終わりにしましょう。終わりだ、終わりだ…。といってシートベルトをいじってモバイルを閉めようとした時に、10日前の事故は起きたのでした。要注意、要注意。ヨウチュウイ。注意深く保存を掛けて、それから終了です。さようなら皆様。それでは、プチッ!!

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