探偵ノート

第010号 – 光と影の二重性

Update:

Christof Fielstette
Lighting Designer
Hamburg

光と影は、私たちの世界の基本的な要素であり、常に人間の想像力を刺激してきた。光は生命の源であり、周囲の世界を認識させ方向性を与えてくれる。一方影は光の欠如であり、光が物体によって遮られたときに生じ、時には不安を感じさせたり恐怖を与えたりすることもある。

しかし、光と影は対照的な存在でありながら多くの共通点を持っている。どちらも私たちの世界のバランスを保つために必要なものであり、異なる視点から物事を見る機会を与えてくれる。光がなければ影はなく、影がなければ光もない。互いに依存し合い、他者なしには存在し得ないものなのだ。

自然界では、太陽が降り注ぐ明るい風景から一転して、影は歓迎される存在だ。暑さの中のオアシスであり、雨の中の避難所でもある。影はランドスケープの重要な一部であり、その多様性に貢献しているのだ。

また影には象徴的な意味もある。人間の暗黒面、不安や恐怖のメタファーであることも。同時に灼熱の太陽から身を守るための休息と憩いの場にもなる。

影が放つもう一つの重要な側面は、その美しさだ。美術の世界では、影は絵に奥行きや深みを与える手段としてよく使われる。建築では、コントラストや質感を強調するために影が重要な役割を果たすことがある。

例えばルイス・バラガンの建築では、光と影の両方が重要な役割を担っている。バラガンは光と色を使ったデザインで知られるメキシコの建築家であり、メキシコにおけるモダニズム建築のパイオニアである。

バラガンは光は機能的な役割を果たすだけでなく、建築における芸術的な要素としても機能すると考えていた。彼は光を意図的に使って空間や形を定義し、雰囲気を作り出している。窓や開口部、彫刻的な要素を建築に取り入れることで、バラガンは光を演出し、光あふれるユニークな空間を作り出しているのだ。

影もまたバラガンの建築の重要な要素だった。彼はコントラストの力を理解し、光の効果を高めるために影を利用した。光と影を使いこなすことで、バラガンはこの光と影の2つのダイナミックな相互作用を生み出し、彼の建築に深みと奥行きを与えたのだ。

光と影は、一見相反するものが実際には密接に関係していることを教えてくれる。また私たちに世界をさまざまな角度から見る機会を与え、その美しさを楽しませてくれる。光と影は私たちの世界のバランスを保つために必要不可欠なものなのだ。


Christof Fielstette
照明デザイナー
made by light – lichtplanung代表デザイナー
ハンブルグ

国際的な建築や外観などの照明プロジェクトに携わっている。またドイツハンブルグのハーフェンシティ大学にて教鞭をとっている。

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