Interviewer: 董 曉藝
董:今日のテーマはフェミニズムについてです。最近中国でも人気がある上野千鶴子さんが書かれた本「女ぎらい ニッポンのミソジニー」を読み、中国育ちの私でも共感できる点がありました。面出さんはご覧になったことはありますか?
面出:まだ読んでないね。面白かった?ミソジニーの意味を解説してください。
董:女性を見下す、女性嫌悪という意味です。これは男性から女性に対してだけでなく、女性同士の間でも見られます。男姓にとっては「女性嫌悪」、女姓にとっては「自己嫌悪」となります。上野さんの東大でのスピーチは中国でも有名です。女性は頑張っても報われないという内容でした。
面出:それはなんでなんだろう?
董:日本では、頑張って有名大学や企業に入り高い業績を上げる、強く自立した女性よりも、男性よりも弱く保護対象になるような女性の方が可愛らしいという考えがあると感じています。まったく同じではありませんが、中国も近い状況はあります。例えば有名な北京大学や清華大学卒の女性は、他大学出身男性からアプローチされづらいそうです。
面出:そうなの?そんなことヨーロッパやアメリカにはない問題だよね。学歴が男にとってはプライドになるが、女性には逆に作用するっていうこと?
董:欧米ではなさそうですよね。以前、医大入試でも問題になりました。男性受験生の偏差値基準よりも、かなり高い偏差値がないと女性は不合格にされていたことが本当に最近まで続いていたことが明らかになりましたね。
面出:偏差値って入試だけに必要な数値だよね。あれはひどい話だった。確か男性受験者の試験結果だけに大学側が加点してたんだよね。あってはいけない事だね。
董:そうですね。私は東京芸大出身で、芸大では偏差値はあまり関係ないと思いますが、女性の教授が少ない印象はあります。芸術の世界でも男性メインの社会なのでしょうか。デザイン科ではスプツニ子!さんが2年前に教授に就任され、初の女性教授となりました。彼女はインスタレーション作品が多く、フェミニズム、日本社会の問題をテーマにされていますね。
面出:芸大にも女性の講師の方は多い印象があったけど。それもどうしてなんだろう。
董:女性の生徒は多いのですが。
面出:私が学生だった頃は生徒30人に女性生徒が3人くらいだったからね。いまは逆転しているんじゃないかな。
董:今は女性生徒数が全体の半分以上ですね。
面出:東京芸大、昔の東京美術学校に女性が通うことは難しかった。だから女子美術大学ができたんだ。それは旧帝国大学の東大でもそうだったと思う。芸術関係だと特に彫刻や油絵は男ばかりの世界だった。
董:海外の美術学校では様々な考え方を持った人が混ざり合って新しいカルチャーが生まれる、多様性と公平のイメージがあります。
面出:芸術は、女だ、男だ、という狭い世界ではまったく無いからね。東京芸大は岡倉天心から始まってずっと男の教授しかいなかったのは事実だね。
女性で活躍している芸術家は多い。それでもその人たちが教鞭をとらなかったのは、大学側がまだ閉鎖的だったんだろうね。フェアじゃないよね。アバンギャルドである芸大でもそうなんだよね。でも教授会もだんだんリベラルになってきているとは思う。
董:LPAは女性社員が多いですよね。半々くらいでしょうか。
面出:昔は女性7割だったけど、最近男性社員が増えたんだよ。女性比率が高いのはLPAだけでなく照明デザイン界全体で共通だと思う。
董:役員、プロジェクトマネージャー、女性のリーダーが多い会社の印象があります。男女のプロジェクトリーダーで違いは感じていらっしゃいますか。
面出:性別には関係なく、人によって個性が全然違うからね。それぞれ良いところ、強さを持っている。男女によってリーダーシップの資質に差があるとは思わない。でも特に日本社会では女性だから賃金が低い、チャンスが少ないということはまだまだたくさんある。
それを仕方がないで済ますのではなく、社会が変化しなくてはいけない。僕は男女平等という点では中国に期待もしているんだよ。一人っ子政策のなかで女性人口が少なくなり、かなりの男余剰が起きていると聞いている。結婚ではもちろん、中国社会では女性の発言力、存在感が強くなっているんだよね。
董:最近かなり強くなってきましたね。中国でも日本でも社会の不平等性、マイノリティーの方が置かれている状況に光が当たり、性別に関係なく活躍できる人が増えてほしいですね。今日はどうもありがとうございました。