探偵ノート

第76号-記憶と忘れること

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Interviewer: 柴田 雄太

柴田:今日のトークテーマは「記憶と忘れること」です。LPAに入社してから半年以上が経ちました。照明デザイナーとして仕事をする中で、創造力や発想力以上に記憶力って大事だなと思うことが多くありました。先輩方との仕事を通しても、記憶力に優れた方が多い印象があります。自分は覚えることが不得意ですが、特に思い出すことは大の苦手です。

面出:おじいさんみたいだね。今までずっとそうなの?でも、大学入試の時はつまらないことも覚えないといけないでしょう?

柴田:小さい頃からだと思います。入試の時も覚えることは苦手でした。数学や物理のように考えて問題を解く科目の方が得意でした。

面出:私も柴田さんと同じだね。沢山覚えていたら、脳のキャパシティが一杯になって、新しい発想が出来ないと思っていたけど、それは違うみたいだ。デザイナーにとって大切な想像する力は、記憶力が高い低いとは関係ないと最近思っている。ただ、あなたと同じように覚えることが苦手だったり、苦痛だったりしたよ。小さい時は社会科の歴史が最も苦手で、「ほっとけ、ほっとけ、ゴミ屋さん」で538年仏教伝来を覚えたよ。

柴田:面白い覚え方ですね。面出さんは観てきた景色やその空間で感じたことを語るのが大変上手いと思うのですが、どのように記憶していますか?

面出:都合の良いことや、相当インパクトが強い時は覚えているよ。私は記憶力が全くないわけではなくて、要領の良い人間だから、優先順位が高くないもの、関心がないものは忘れる。重要なことは簡単には忘れないと思っている。柴田さんの得意なことは何なの?

柴田:忘れることは得意です。捉え方によっては、忘れることも良いことだと思っています。面出さんは失敗や嫌な出来事をすぐ忘れることはできますか?

面出:そういう意味では、意図的に忘れるのは早いと思うね。忘れようと思うと、素直に忘れられるタイプだから。どこまでクヨクヨせずにいられるか。私は失敗とか嫌なことから早く立ち直れる。でも、世の中には忘れられないことも沢山あるけどね。身近な人とか、とんでもない災害とかさ、辛い記憶は忘れられない。忘れてはいけないことでもあるしね。伝えていかなければならないこともある。今、忘れることは大切だって言っているのは、そういう類のことではなくて、自分自身の日常のネガティブなこと。

柴田:どうしても忘れられないこともありますね。自分の場合、特に大事な先の予定は覚えていないと心配になります。完全に覚えているのではなく、頭に残ってしまう感覚です。

面出:この歳になって、朝起きて、今日一日やることが全然イメージできないことも多い。予定を見てこまごまと約束されたことだから頑張ろうと思うわけで、それまでは次の日のことなんか忘れるよ。でも、2、3ヶ月先だとしても、楽しみなことは覚えている。ただ、私の仕事は時間刻みだから覚えているだけで疲れちゃうよ。覚えられない。だからメモをよくとる。あと、次の予定の5分前にアラームが鳴るようにセットもするよ。

柴田:予め準備することは大事ですね。準備とも近いかもしれませんが、土日の片方は、気が済むまで寝るようにしています。仕事のことを忘れてリセットする時間といいますか、頭を整理する時間といいますか。

面出:それもいいかもね。朝、目覚ましをかけ忘れたとき、9時間も寝ていたよ。頭痛くなると思ったけど、体が楽だった。9、10時間寝ることも悪くないんじゃないかな。寝られなくなることはないの?

柴田:心配ごとが増えると、寝られなくなるときがあります。

面出:心配性なんだね。私はその辺は要領いいかな。心配して状況が良くなるならいいけど、今の自分のパフォーマンスに自信を持って臨むしかない。全く心配しない。

柴田:確かに、面出さんが心配している様子はあまり想像できません。

面出:それは次のことに対してしっかり準備しているからだと思うよ。準備しないとまずいかなと思う。失敗したかなと思うプレゼンテーションを思い返すと準備が足りてなかった。だから、忘れるってことは、寝て、体なり精神が再起動することにつながる。つまり、忘却は新しいエネルギーを生むための準備だと思うよ。

柴田:準備のための忘却ですかね。睡眠は記憶力や体調など人の様々な部分と関係していて、とても重要ですね。何事も事前に準備することで、色々と頭に詰め込みすぎないようにしたいと思います。

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