探偵ノート

第031号 – ジェームス・タレルとの楽しいお話

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撮影/ナカサ&パートナーズ

今、話題の芸術家、ジェームス・タレルと2時間ばかり楽しい話をしました。タレルさんについては先刻ご存知の方も多い事でしょう。光を扱った彼の数々のアートワークは、私たち照明デザイナーにとってもとても刺激的なものなので、思いがけずの対談を持ちかけられた時に、久しぶりに楽しくなりそうだ・・・と予感してました。

タレルさんはつい最近、大阪の梅田近辺に安藤忠雄さん設計の建築アート照明を完成させたのですが、対談の要請があった当初は、その来日の合間を縫って私の事務所LPAで対談する事になっていました。LPAのスタッフなどはあの偉大な芸術家がLPAにやってくる・・・というのでずいぶん興奮していた様子でしたが、直前になって東京での対談が危うくなりました。私は私でSeoulへの出張とSingaporeへの出張の狭間に1日だけ空いているだけなので、今回は会えないかなと思っていたのですが、最終的にドバイから関西空港にやってくるタレルの日程に合わせて、私もSeoulから直接関西空港に入る便に乗り換える事で、お互いに数時間だけ大阪で過ごす事ができるようになったのです。タイトな移動日程でした。ソウルの現場を早朝に視察し、インチョン空港を午後1時に発ち、関空経由で対談の場所、梅田の阪急インターナショナル・ホテルについたのが4時でした。私がスイートルームの特別室に息をきって到着した時には、既にタレルさんは準備万端。例の黒い帽子にふさふさのあごひげ姿で私を迎えてくれました。

対談風景を撮影してくれているのはナカサ&パートナーズの中道さん。背景となる白い壁にLEDの青い光を当て、前方から2台の白熱ランプのスポットライトのみ。部屋の窓からは夕方の弱い自然光が、しかし暖かそうに差し込んでいました。いい表情に撮れるかな? 私はいつも決まってプロの写真家にカメラを向けられると、そんな風に想像しています。タレルさんは1943年アメリカ生まれだから私より7つ年上、還暦直前という事になる。しかしその手入れの行き届いた真っ白なあごひげのせいもあって、どう見ても60歳から70歳ほどに見える。しかし男前にいい表情をしている。「う~ん、きれいなあごひげですね。手入れが大変でしょう。床屋でやってもらうのですか」。私の対談の第一声はおかしな質問だった。「いや、それほど大変じゃないよ。週に1度ほど自分で手入れをするんだ。散発には行っても、ひげには触らせないよ」。気難しそうに見えたが、けっこう気さくな方だと直感した。

対談では何を話したのだろう、あっという間に時間が過ぎてしまった。「私の仕事には常にクライアントがいて、その人の技量や世界観によって出来栄えが違ってくるけど、あなたの仕事は自分がクライアントなだけに、心にいつも羽が生えているのでしょう(笑)」。「照明デザイナーはタレルの仕事に大変インスパイアーされているのですよ。あなたには長生きしてもらわないと・・・」、私は幾つかの賛辞を送ったつもりでした。「私たちの仕事にはたくさんの理屈や言い撮影/ナカサ&パートナーズ訳がついて回りますが、あなたの仕事には仕事の成果だけが期待されている。製作途中で作品内容をこと細かく説明する必要もないのですね、羨ましいというか・・・」。「面出さんの仕事も私の仕事も光と人間をテーマにしている。興味は人間の光に対する感じ方なのです」。「自然光をデザインするというのが私の究極のテーマです。もちろんLEDなどの新光源にも多くの事を期待してますが・・・」「今、味覚の話をしてましたが、一度味わった美味い物は二度と忘れないのもですよ」「タレルさんの光の実験カプセルに入ったときは、緊張しました。あれは人体実験に近い・・・」。色々はトピックスがどんどん飛び出てきました。この対談内容は、カラーキネティック社は発行している雑誌CK VIEWS vol.3に掲載予定ですので、楽しみにしてください。

私は東京で夜に探偵団街歩きに合流する約束をしていたので、6時には対談を終了し、新幹線に飛び乗る事にしていました。対談の終了時には、それまで窓から入っていた自然光はとっぷりと暮れていて、ブルーモーメントの時間の中で写真家は断続的にシャッターを切っていました。そして数日後に届いたスナップの数々は、楽しい話を裏付けるのに十分な出来栄えだった。大男のタレルさんと小男の私が寄り添うように立っているスナップ。左右に分かれて色々な仕草をする二人。そして、私自身の表情のアップさえ、いつにない晴れやかな笑顔。つまり、楽しいお話をしている時、幸せな気分に浸っている時には表情も明るく多彩なのでしょう。久しぶりに楽しいお話ができました。

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