Interviewer: 山口聡美
面出:今日のテーマは、「好きな季節はいつですか?」だね。山口さんの好きな季節はいつですか?
山口:春、特に早春が好きです。植物の芽が動き出し、桜も蕾が膨らんで、木全体がうっすらとピンク色っぽくなる、そういう季節がワクワクして好きです。
面出:冬の終わりに近いね。あなたはどこで育ったの?
暗い冬を過ごし、春を待ちわびていたとか?
山口:東京です。植物を育てるようになって、季節をより意識するようになった気がします。面出さんの好きな季節はいつですか?
面出:子供のころは夏だったと思う。小学生高学年に音楽をやるようになってからは、圧倒的に秋だね。葉が色づいて冬に向かう物寂しさとかが、胸にジーンと来る。僕はロマンチストだから。夏の勢いのある積乱雲とは違う、いわし雲のような高い雲。秋の気配は雲で感じる。本当はすべての季節が嫌いではないというのが答えだけど。やっぱり芸術の秋なのかな。恋に落ちたりするのも秋じゃない?
山口:春が出会いの季節で、秋はどちらかというと失恋だと思っていました。
面出:春のモヤモヤした気持ちや期待感みたいのが、若い頃は好きではなかった。だけど、いつかの頃からか春も好きになってきた。
山口:どんな心境の変化ですか?
面出:年を取ったからかな。よく散歩をするんだけど、地面を見ながら、小さな花が咲いているのを見るとうれしくなる。家に泰山木があって、真っ白い花がパッと咲く。たくさん蕾があるから、さあ来いって毎日楽しみにしている。花柚子やオリーブの花が咲くと、いろんな種類の蜂が飛んでくるよ。
山口:蜂が嬉しそうに花に潜っている姿を見ると幸せな気分になりますよね。
面出:季節は春から始まり冬で終わる感じがする。春は始まりの季節だね。
山口:そうですね。でも、コロナの影響で少し変わってしまうかもというニュースがありますね。秋の入学式はなんだか違うと思っている日本人が多いと思います。きっと季節を大切にしているからこそなんでしょうね。
面出:砂漠にも季節はある。シンガポールにもあるけど日本人の季節に対する思いとは全然違うだろう。日本には明確な四季があり、それを感じることはとても豊かなこと。私たちの新しいオフィスは窓が大きく、視覚的に開けていて縁側のような感じがする。風景がどんどん変わっていく。
山口:景色を見ながらお昼を食べるのが好きです。あっ、季節感に食べ物の影響とかはありますか?
面出:僕はなすが好きだけど、最近はいつでも食べられる。本来の季節とずれているものが多くなっているね。
山口:今、家でいちごが実っていますが、冬の食べ物だと思っている子供もいそうですね。便利になってわかりにくくなった分、より季節を意識したいです。
面出:日本人は一般的にどの季節が好きなんだろう? 春かな?冬は少ない気がするな。
山口:ばらけるような気もします。アンケートしたら面白そうですね。
面出:LPA社内でやってみようか。シンガポールや香港のスタッフたちはなんて答えるだろう。
アンケート結果
LPA内(東京、シンガポール、香港)だけの結果ですが、場所ごとの違いがわかります。
香港は春の人がいないのですね!シンガポールではレイニーシーズンという季節が出てきました。
山口:季節を意識した照明はどんなものがありますか?夏の夕暮れに合わせた照明みたいなことができるといいなと思います。
面出:自然光が入ってくる所に人工光で何かをしようとするとフェイクになってしまうけど、地下などで再現するのはあるかもしれないね。色温度だけじゃなく、影の作り方もある。冬の影、春の影がある。そういうところまで楽しめるといいかもね。最近コロナのせいか、東京でも星がよく見える。昔の人は星座で季節を感じていた。
山口:そういったものに敏感に生活できたらと思います。季節へと目を向けるきっかけになるような光の設えとかがあるんじゃないかと思います。
面出:星を見たくなるような照明ってこと?
明治神宮夜間参拝での「闇のライトアップ」、面白い言葉を見つけたなって思っている。灯を焚くことによって、闇を気づかせるデザインもあるんじゃないかと思った。自然光に勝るものはないことを気づかせる人工照明っていうのがあったら面白いかもね。部屋を暗くすると月明りが入って来るよ。
山口:家で月明りを感じられると思っていませんでした。実は、私の家では窓辺にスポットライトをつけて、人工的な月明りを作っています。本当の月あかりを感じたいです。
面出:平安時代から月が照らす白砂の光を感じることで、月を愛でていた。季節に従った月のあかりがあっただろう。
山口:これからも季節を感じて生きていきたいです。今日はありがとうございました。