世界都市照明調査

都市照明調査: 東京 大手町・室町

2026.05.22 發田隆治+柳 俊韓+向山恵介

大手町と室町は、どちらも東京都心の中心部にあり、徒歩で行き来できるほど近いエリアだが、雰囲気や役割がかなり異なる。この二つを同時に調査することにより、新たに気づけることがあると考え、調査を実施した。

大手町と室町は都心を代表するエリアであるが、大手町は日本有数のオフィス街、室町は歴史と商業が融合した街という特徴がある。その特徴は光としてどのような違いとして現れているのだろうか。建築のファサードと屋外エリアに着目し、二つの街を歩いた。

ファサード照明

大手町に多く見られるガラスのファサードと光

大手町にはオフィスビルの高層建築が立ち並び、その低層部分の多くはガラスのファサードとなっている。このガラスのファサードから漏れてくる光が、夜景の形成に大きな影響を与えている。エントランスエリアは光壁や光天井、ウォールウォッシャー、天井間接照明といった明るさ感をつくる照明手法が用いられ、そのあかりが街を明るくしている。都市というスケールで考えるとガラスのファサードが街を照らす超大型の行灯とも考えられる。

対して室町エリアは商業施設が並び、装飾的なファサードとなっている場所が多い。そしてそのファサードをライトアップすることにより、夜の街を華やかに演出している。

室町の中央通りの店舗ファサード 歴史的建築のファサードを照明で印象的に強調している

大手町も室町も低層部分の多くは電球色が使用されていた。二つの街を比較すると、大手町は少しクールで、室町はより暖かみを感じた。その要因は二つあると考える。一つ目は大手町は建築素材にグレー系の無彩色が多く使用されている。それに対して室町の外装はベージュ系やブラウン系の色味が多く使用されることで、色温度がより低く感じられ、暖かみのある景観を形成していた。(使用しているLED 光源自体の色温度は、大手町と室町で大きな差はない)その裏付けとなる実験を調査後に行ってみた。
直接光が3100K のLED 光源をベージュの素材に反射させると反射光は2400K 程度まで大幅に色温度が下がる事が確認できた。

大手町がクールに感じた二つ目の要因は建築の形状によるところも大きい。大手町でよく見られるのは大型の水平、垂直が強く意識された形状の建築で、それ自体がクールな印象ある。それに対して室町では細かな装飾を伴う柔らかな形状の建築が多い。光と建築形状が相まって、それぞれのイメージがつくられていると考えられる。

大手町の景観と歩道空間

大手町の街並みを皇居側(大手門)から眺めてみると、当初予想していたより暗い印象であった。この理由としては二つ考えられる。一つ目は国道1 号線が通るこの道路の両側には街路樹が並んでいるが、各建物のエントランスから漏れる光がこの街路樹によって遮断されていること。二つ目はエントランス自体が大手町、東京駅側を向いている場合が多く、皇居側に漏れてくる光の量がそこまで多くはないことがあげられる。

室町の景観と歩道空間

商業施設が並ぶこのエリアは、ファサードがライトアップされている建築が多く、さらに自発光する車歩道照明が連続する。それらが街路樹に遮られることなく見えてくることにより、明るい景観がつくられている。場所によっては建築から歩道を照らすスポットライトも設置されており、夜間の街を安心して歩ける工夫がされている。

OTEMACHI ONE 外構 メリハリのある空間に

大手町と室町の屋外エリア

屋外エリアとしては主に4 か所を調査した。

大手町仲通り 2 階の鉛直面輝度が明るさ感に寄与している

① OTEMACHI ONE
大手町エリア最大級の再開発プロジェクトとして2020 年に開業した複合施設。この外構照明は整形のランドスケープの中に間接照明として光が納められている。外構全体としては明るくはないが、明るいポイントをつくることによりメリハリのある景観がつくられている。ベンチ下と広場の照度差は約100 倍となっている。

コレド室町テラス 落ち着くしっとりとした空間

②大手町仲通り
大手町ファイナンシャルシティのビル群の間にある歩行者空間は、オフィスワーカーの憩いの場所でもある。夜間の光として印象的なのは2階レベルに連続する木質の壁面である。ここは間接照明となっているが、輝度は約30cd/㎡であった。この空間は床面照度以上に明るく感じられたが、鉛直面輝度が高いことがその大きな要因になっていると考えられる。

③ コレド室町テラス
大屋根広場にはテーブルと椅子が置かれ、夜間をゆっくりと過ごす人たちが見られた。この空間において大きな面積を占める天井や壁面をいくつか測定してみたところ約7cd/ ㎡程度となっていた。室町テラスは、落ち着いたしっとりとした雰囲気となっているが、それはこの抑えられた輝度によるところも大きいのではないかと考える。
④福徳神社~コレド室町仲通り
連続する行灯や提灯により和の賑わいの雰囲気がつくられている。江戸時代に商人の街として発展した歴史を照明にうまく活かし演出していると感じた。

まとめ

大手町、室町はいずれも照明計画に力を入れているエリアであり、光はその街の雰囲気をつくる大きな要素であることを改めて感じた。
そして、新たな建築は街から影響を受けると同時に、その建築が街の光環境にも影響を与え、街の光は少しずつ熟成されていく。街と建築の光が呼応し発展していく。より照明の質を上げていくには、街全体としてどのような雰囲気をつくろうとするのかを明確にしつつ、それを実現する光を緻密にコントロールすることが重要であると考える。
今回は年齢が異なる3 人が語り合いながら、東京調査を行ったが、好きな光に対する共感と新たな発見が多くあった。この調査を次の計画に活かしていきたい。  (發田隆治)

コレド室町仲通り 賑わいある雰囲気を演出

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