2010年2月26日
今回のサロンではオフィスのエコをテーマとし、最新オフィスにおけるエコ照明の実態を調査しました。また、快適で楽しいオフィスのエコとは何なのか、実験をもとに考察しました。ゲストには海宝幸一氏(日建設計)をお招きし、自然光利用の最新技術と未来のオフィス照明の在り方について議論しました。
いま、オフィスでエコさわぎ!
会場にセットされた実験ブースを使って久保団員より実験方法について説明が行われた。
照明探偵団的エコオフィスの一日。必要な場所に必要な明かるさを加えることがポイント。
ミーティングの時はみんな同じ明るさが良い。
海宝氏からは自然光利用についてのお話やエコに取り組むプロジェクトを発表していただいた。
エコなオフィス照明を議題に海宝氏と面出団長の対談もヒートアップ。
今回もたくさんのご来場ありがとうございました。
以前にも増して「エコ・省エネ・低炭素」などのキーワードが世界中で騒がれるようになり、オフィスでも省エネ化が叫ばれるようになってきました。そこで照明探偵団は、日本における最先端エコオフィスの実態を調査し、照明のエコについて5つのポイントを挙げました。
「エコさわぎ 5つのメソッド」
①高効率光源 (LEDなど新光源の使用)
②タスク&アンビエント (パーソナル化による省エネ)
③調光 (用途に合わせた照度と色温度の調節)
④自然光利用 (太陽光の有効利用)
⑤低照度設定 (必要な明るさの見直し)
従来から取り組まれている自然光利用から、新光源LEDの使用など照明のエコを実現するためには様々な方法が考えられます。これらの方法が複合的に作用しながら、さまざまなエコオフィスが実現されているのです。
机上面照度は750ルクスも必要?
-本当に快適な明るさを探ってみよう!-
オフィスにおける快適な明るさを探るために、照明探偵団は「個人作業スペース」と「ミーティングスペース」の2シーンを再現して照明実験を行いました。
実験では机上面の明るさを調光できるようにし、団員達の好みの明るさを調べました。個人作業スペースでは下は200ルクスから上は1600ルクスまでと明るさの好みにかなりの個人差があったのに対し、ミーティングスペースでは多くの被験者が300ルクス程度の明るさが心地よいという結果を示しました。
つまりオフィスで快適な光環境をつくるためには、個人作業スペースでは、働く人の作業内容や気分、好みにより明るさや色温度を自由に調節でき、場を共有するミーティングスペースでは、明るさを共有できることが必要なのではないでしょうか。会場からは、「快適な明るさとは個人の好みではなく、目が疲れないなどの要求が満たされることなのでは?」という意見もあり、オフィスにおける快適性を図ることの難しさも感じました。
海宝幸一氏 「最終的に照明は建材化する?」
ゲストの海宝幸一氏からは、オフィスにおける採光の歴史や、ご自身が関わられているプロジェクトでのエコの取り組みについてご紹介頂きました。
採光の歴史では、外光を遮断していた80年代から画期的な建材の誕生によって外光を積極的に取り入れはじめた90年代、そして2000年以降は自然光を人工光と同じようにコントロールしていく時代なのだと解説されました。光ダクトを利用して自然光を取り入れている住宅のお話では、「この住宅では曇天でも人工光を一切使用せずに生活できる」とのことで光ダクトのパワーには驚かされました。
配光特性のあるLEDはタスク照明に適しており、今後はタスク=LED、アンビエント=有機ELという組合せでの新しいタスク&アンビエントが実現できるのではないか。また将来的には、LEDや有機ELが天井材に組み込まれて建材化していくのではないか。というお話があり、照明器具のない天井から自由自在に自分好みな光が降り注ぐ、そんな従来の常識にとらわれない海宝氏の新しい概念に触れることもできました。
対談 : 海宝幸一氏×面出薫
「人間らしい昔の明るさの感覚を取り戻すべき」という面出団長のコメントから始まった海宝氏と面出団長のディスカッションでは、これからのエコオフィスを考える上で、従来の「明るい・均一・不変動」というオフィス照明の常識を変えていく必要性について議論がなされました。
そこで働く人の仕事内容や気持ちに従って局部的に光をコントロールすることが、快適でエコなオフィスにつながるのでしょう。また、省エネだけでなく、オフィスで快適に過ごすためにも自然光を有効活用し、オフィスの中でも自然の光や色のうつろいを感じることのできる空間をつくることが、これからの新しいオフィス照明のテーマになるのではないかと今回のサロンを通じて考えさせられました。
(池田俊一)