街歩き・サロン

住まいのあかり 過去・現在・未来 – 白熱ランプが住宅から消える?

2008年10月17日

白熱電球が生産中止!

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まず探偵団発表。長きに渡った調査と、いろんな人にご協力いただいた実験成果の発表に熱が入ります。

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S邸ダイニングのビフォア&アフター。フル点灯ならもちろん蛍光灯のほうが省エネだが、白熱灯は調光してシーン作りができる。

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岩井氏のプレゼンテーション。豊富なデータはもちろん、光の体験をさせてもらい、納得させられてしまうお話でした。

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2050年の予言は正にバラエティに富んでいた。話題もそれにあわせてさまざまなところから飛び出した。

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最後は会場を交えて議論。特に岩井さんへの質問が多かった。みな聞きたいこと、思うところはたくさんあったようだ。

2008年5月14日、新聞各紙の朝刊に見開き全面広告が掲載されました。東芝による白熱電球生産中止の発表です。電球がこんなに大きく掲載されたことなど初めてでしょう。何年も前から政府や様々な機関が、白熱電球の使用を抑えて電球型蛍光灯に変えるようキャンペーンをはっていましたが、とうとう生産中止まで来ました。これは照明の世界に起こっている大変革と言えるでしょう。

白熱電球はなくなるべきなのか

電気屋では白熱灯へのシュプレヒコールの嵐。マスコミでもインターネットでも、白熱灯を使わなければこんなにエコ!といった数値が出回っています。しかし探偵団としては白熱灯の良さを簡単には捨てきれません。そこでまず白熱電球の実態を探り、さらには実際に人が住んでいるお宅にお邪魔して白熱電球を点けることに意味があるのか検証を重ね、サロンに臨みました。

ゲストには照明メーカーの方を…

今回はゲストに、パナソニック電工の照明ソフトエンジニア、岩井彌さんをお迎えしました。明るさ感指標「Feu(フー)」の開発に携わった方です。エンジニアの方を選んだのは、我々とは違う視点の人と議論することによる、新しい発見を期待してでした。サロン当日、岩井さんが大きなボックスを持ち込み、(中身は後ほど…)、面出団長と探偵団の準備が整う頃、会場もほぼ満席になって、いよいよサロンの開始です。

探偵団の調査&検証結果発表

まずは探偵団の調査発表。会場に「白熱灯を生活のメインで使っている方は?」と問いかけると3割ほどの方に挙手を頂きました。日本の平均に比べるとずいぶん多いようです。白熱灯による光の優れた点、電球型蛍光灯の効率の優れた点を確認したあと、白熱灯で無駄になっているとされるエネルギーの量がどのくらいか、これまで探偵団でよく取り上げてきた自販機やコンビニの明るすぎて無駄なエネルギーと比較しました。結果は白熱灯のほうがひと桁上。一つ一つは小さいですが、家庭で一般的に使われている総数の多さが勝りました。そして探偵団調査のメインは「お宅訪問」。実際に人の生活しているリビングやダイニングを訪ね、既存の照明を消し、白熱灯をメインに照明を組み立ててきました。フル点灯するともちろん消費電力は大ですが、適切な調光で元より少なくなります。お住まいの方から「雰囲気があってうちじゃないみたい」、「慣れれば暗さは気にならない」など様々な感想を頂きました。必要なとき以外は落ち着いた光で暮すことが、心地よいと同時に省エネであることが示されました。

じつは岩井さんは白熱灯支持派!?

ゲストの岩井さんのお話は、エンジニアならではの豊富なデータとテンポのよい話の組み立て。実は岩井さんも、白熱電球廃止は反対でした。工学や生理などさまざまな側面からの理由ともに、実際の光を見せていただきました。前述のボックスの中には3種類の光源に照らされた果物たち。並べてみると違いは一目瞭然。でも一つずつなら、気持ち悪いというほどでもありません。蛍光灯やLEDが、白熱灯に近い演色性を達成してきていることがわかります。他にも白熱灯の長所、調光についての実験もしました。LEDはそのままの色で減光し、なんだか墓場のような薄暗さになります。白熱灯は、減光と同時に赤みが増し、くつろげる温かみのある暗さになっていきます。結びに、エネルギー効率(lm/W)だけで評価せずに社会全体の明るさを適切に抑え、シーンに応じて落ち着いた光に絞って暮らすことこそが必須であること、そのためには白熱灯に勝る光源はないことを強調されました。データ+体験で、会場の皆さんも共感されていたようです。

さまざまな「ことば」から考える

最後は、2050年東京夜景展で集められた、さまざまな業界のリーダーたちによる、光の未来の予想をいくつか取り上げ、それをもとに岩井さんと話を広げます。明るさの予想だけでなく、独自の風景を予想したものなど、バラエティに富んでいます。さらに、会場も交えて質問やコメントを頂きました。特に、岩井さんへのたくさんの質問が、皆の関心の高さを表していました。

私たちはあかりに何を求めるのか?

ただ単に明るくするデンキではなく、くつろぎの空間や世界を美しく見せてくれるあかりを私たちは求めています。しかしそれは、穏やかであるからこそはかなく脆い存在なのかもしれません。私たちの生活を、心を豊かしてくれる白熱灯。今回のサロンを通じ、白熱灯によってこそ得られる少ないエネルギーで豊かに暮らす選択肢が存在するのだ、という確信を持つことができました。
(三宅博行)

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