2004年5月31日
2004年5月31日、初夏を思わせる陽気の中、19時から照明探偵団のサロンが LPA2 階丸テーブルにて行われました。今回は海外調査レポートが 3 件、街歩き報告が 1 件、そして、武蔵野美術大学の窪田団員からの海外調査レポートと盛りだくさんの報告会となりました。
まずはじめに、田沼団員からのオーストラリア・シドニー調査の報告からサロンは始まりました。田沼団員が現地を訪れた時期はあいにく曇りや雨の天気が続いていたようですが、おなじみのオペラハウスの写真はやはり迫力のあるもので、昼間の写真からも夜の風景がどのように変化して見えるのだろう?!と期待のできる景観。しかしながら、さて夜間の写真になると … ちょっと残念!建築の面白い形を生かしきっている照明計画はまだ充分ではないのかもしれませんね 建築物のメインとなる形状の先端部分におかしなスポットライトがついていたり … もっと素敵な夜景の造れる要素はそろっていそうな気がするのですが。対象的にオペラハウスへと続くボードウォーク沿いに週末に出現するという連続したカフェテントへの規則性のある様々な色の照明は遠景からはとても美しく、シドニーの人たちの楽しげな週末の過ごし方を垣間見たような気がしました。
続いて岡本団員よりラスベガス・ライトフェアの調査報告がありました。ライトフェアではさすがアメリカ!華やかな演出が可能な LED を様々な形で発展させた商品が盛り上がっていたようです。それらの LED 関連の製品群に加えてルートロン社の新製品はかなり画期的なものであり、照明の調光システムに加えて自然光の室内への入り方もブラインドの昇降をコンピュータ制御によってコントロールしよう、というシステム。照明に加えてこの環境やエネルギーに配慮していこうというシステムは他社よりもずっと遠い未来へと照明の未来を考えているように思えました。加えてラスベガスの市街の調査写真の発表、そしてかの有名なベラッチオホテル前の噴水の模様がビデオで上映され、サロン会場からはどよめきが!オーシャンズ 11 という映画の中でも主人公達の集合時の背景にかっこよく使われていた、あの、噴水です!何通りもの噴水形状がプログラミングされていて時間ごとに壮大な噴水ショーが行われています。さすがアメリカです。さすがラスベガスです。考えることが違います!
会場がもりあがってきたところで面出団長よりフランクフルト・メッセとパリの調査報告が始まりました。ラスベガスとは一転してヨーロッパ、フランクフルト。同じ地球上にありながら、飛行機で何時間か移動するとこんなに雰囲気が変わってしまうのですね。ラスベガスとは対照的に上品な大人のムード。会場の駐車場に設置されている照明器具さえもスタイリッシュで間接光を意識した器具。会場で頻繁に見られる製品も LED よりも蛍光灯に調光や色のファンクションを加えたもの。会場内のどのブースの写真を見ても上品、スタイリッシュ、大人。土地柄なのでしょうか?それに加えてこのショーの会期中に街中でおこなわれている既存建築のライトアップが興味深いものでした。ヨーロッパの街独特の石造りの古い建築物にちょっとだけ手を加えて照明で柔らかな色彩を要所要所に加えると、既存の上品さに色っぽさが加わるような風景が生まれるのですね。
そして田中智香団員よりの街歩き報告がありました。 5月12日に街歩きが行われたのは横浜みなとみらい線。私も参加したのですが、横浜市民の私としては日常的に目にしている駅という場所を照明の観点か検証するとどう見えてくるのか?とても興味深いものでした。この線の駅は従来のものと違い、それぞれ建築家が違い、さらに照明デザイナーも付いていたり、いなかったり。同じ線上の駅舎なのに、同じ形状の構造物のはずなのに、こんなに違ってしまうんですね!この違いは建築家もさることながら照明の効果なくしては生まれてはこないものですよね。
最後に、オオトリ!窪田団員よりのイタリア調査報告。イタリアの夜景をモーション映像、音楽をあわせての凝ったプレゼン手法で見せてくれました。中でもローマのコロッセオの夕刻からブルーモーメントまでの移り行く風景の連続写真はうわ~!と、うっとりと眺めてしまう映像でした。暖かいオレンジ色の照明がほんのりと建造物を照らし出す様子、それとは対照的にだんだんと深みをましていく背景のブルーはその 2 つの取り合わせが実に絵画的です。
今回が私にとってはじめてのサロンへの参加だったのですが、こんなに職業も背景も違う様々な皆さんが照明というものへの興味によって集まり、話し合ったあり笑ったり、感動したりする機会とは大人になると貴重なものですよね今後とも大切にしていきたい会ですね。