東京調査:銀座
輝度で見る銀座の明かり
2015.06.16 根本勲+ 木村光
これまでの東京調査では、街の明るさを「輝度」という視点から捉えているものはあまり見受けられなかった。また、実際にどのくらいの輝度値や対比で街並の明るさが構成されているかまだ掴めていないところがある。そこで、今回は街を構成する光を比較しやすい銀座の明かるさを調査した。
日本有数の繁華街であり、東京屈指の高級商店街として知られている銀座。連日買い物客や観光客で賑わっているが、他の繁華街と比べ、通り全体の秩序が乱れてなく、統一感があるように感じた。それは「銀座デザイン協議会」という組織があり、銀座らしい街を形成すべく様々な銀座ルールを定めているからであった。このルールに沿って街づくりが行われている夜の銀座の明かりはどのようになっているか探っていく。
銀座4 丁目交差点。中央通り( 左側) と晴海通り(右側)
中央通り3 丁目付近
■街を構成する光
銀座の大通りを構成する主な光は街路灯・看板照明・ファサード照明・屋内からの漏れの4つの要素から成り立っている。銀座中央通りの街路灯は1種類のポール灯で統一されている。歩道・車道側をそれぞれ照らすHID ランプと、ポール灯自体もLED で発光する光柱のようなデザインとなっている。これらはほぼ等間隔で配置されて、大通りの統一感を生み出していた。この光柱は乳白色のガラス内に5000K のLED が使われており、ランプイメージなどはあまりでていなく、ほぼ均一に発光していた。またHID ランプは4300K で、眩しくならないようグレアを抑えられた配光となっていた。看板照明は、様々な色で光っていたが、動きのある演出はされていなかった。袖看板は内照式のものが多く、一定の幅で統一されていた。また、塔屋部に設置された看板はスポットライトによって照らされているものが多く、一部自発光しているものも見受けられた。高級ブランド店などのファサードは各々のブランドイメージを表現しており様々な演出照明が施されていたが、華美になり過ぎず上品な街並に同調していた。漏れ光は、ショーウィンドウなどが多いことから、店舗前の歩道を明るくしていた。また、高級ブランド店が多いこともあり色温度は全体的に低くなっていた。
■歩道の照明
中央通り断面スケッチ
中央通りの歩道はポール灯が片側配列となっており、25 ~ 27 mの等間隔で配置されていた。照度値はポール灯直下で約95lx、ポール灯間歩道中央で約25lx となっており、明暗部で4倍近くの照度差が出ていた。
■輝度の分析
今回の調査の主題である輝度について、以下の2つの視点から見た輝度値やその対比から明るさを読み解いた。
1. 銀座4丁目交差点から三越側を見た視点
2. 銀座1丁目から中央通りを見た視点
輝度値を測定する方法として、カメラで撮影した画像を元に輝度分布画像を作成したものと、輝度計を用いて測定した。
■1. 銀座4丁目交差点から三越側を見た視点
銀差四丁目交差点 輝度分布図
ここからの視点で最も輝度値が高くなったのは、三越エントランス上部の看板を照らしているスポットライトの光源で約12000cd/m2 となっており、その他の平均的な輝度値の何百倍もの明るさになっていた。写真右上の外照式看板は白色のところで約150cd/m2 となっていたが、赤色のところでは約20cd/m2 となっており、受光面の色によって輝度値が大きく異なっていた。(輝度対比 約1:7.5)三越ファサードのアッパーライトされている受光面は、メタリックのものと看板が設置されている素材のものがあり、この素材の違いにより光の伸び具合が異なっていた。(輝度値 約5 ~ 100cd/m2, 最大輝度対比 1:20)
写真右上に見える水色の看板はLED で自発光しているタイプであり、輝度値は見る視点と発光している色によって異なっていたが、約100 ~500cd/m2 となっていた。これはこの交差点の空間では大きな面として全体的に明るくなっていたので、他よりも目立って見えた。4 丁目交差点のシンボル的な建物である、銀座和光のファサードと三越のファサードは、同じ照明手法でアッパーライトされており、輝度値も同等程度であった。
以上のことから、この視点からの明るさ感は外照式看板のスポットライトの光源が突出して強くなっており、その他のところは同じ光源で照らしていても、受光面の色や素材の違いによりバラつきが出ている事が分かった。
■ 2. 銀座1丁目から中央通りを見た視点
銀座一丁目中央通り 輝度分布画像
この歩道からの視点で最も強く目に入ってくる光の要素は袖看板であった。内照式の白色のもので約300 ~ 500cd/m2 となり、その他の色では約10 ~ 300cd/m2 となっていた。また、ポール灯の支柱面は約200cd/m2 となっており、同じ白色の内照式看板の輝度値よりも低くなっていた。HID ランプの輝度は4000 ~ 8000cd/m2 となり大きい値となったが、若干見上げた視点での輝度なので、通常の歩行者の
視野ではグレアを感じることはなかった。また、画像から見て分かるように、光は通りの奥側に集積しているように見える。
POLA のファサード演出照明は光の動きはあるが、約10 ~ 20cd/m2 となり、看板やポール灯よりも低い値となったが、ファサード全体が発光している為、暗いと感じることはなく上品な明るさに感じた。また、オフィス窓面の輝度は一般的に約10 ~ 30cd/m2 となっており、ファサード照明の明るさと同程度であった。歩道面の輝度はポール灯直下で約10cd/m2 となり、ポール灯間では6cd/m2 となっていたので、輝度対比がおよそ1:2 で連続していることがわかった。車道においては約2 ~ 5cd/m2 となり、歩道よりも暗くなっていた。
■まとめ
今回の調査で夜の銀座の明るさ(輝度)を体系的に捉えることができた。銀座は多くの光で満ち溢れており、予測では様々な光が競い合うように強い輝度がでるのではないかと考えていたが、多くの有名ブランド店の明かりなどは平均して約50cd/m2 となり、抑え目の輝度となっていた。実際に目で見た感覚としては「落ち着いた高級感」といった印象を受け、全体的に品格のある光で構成されていた。今後の課題と
して、銀座の大通りだけでなく小路など調査範囲をもう少し広げれば、新たな銀座の光環境が発見できるかもしれない。