探偵ノート

第024号 – 雪に閉ざされた金沢にて

Update:

ばっさりと雪が降り積もります。広い車窓の向こうには雪に閉ざされた北陸の荒野が広がります。2日間の金沢美大の特別講義と、内灘大橋のライトアップ委員会を終えて、やっとの思いで金沢駅から大阪行きの特急サンダーバード18号に乗り込みました。これから大阪での会合に出席して夜には東京に戻ります。

金沢市内では17年ぶりの大雪だそうで、85センチほどの積雪があった様子。飛行機も列車も運休や遅延ばかりで、町中の除雪も進まずに大混乱を招きました。3日前には1日に65センチという突然のどか雪のがあり、金沢の街並みは見事に白一色になりました。

昨夜は浅野川べりにある割烹料理屋・太郎で絶品の寄せ鍋と日本酒にうつつをぬかし、その勢いをかって金沢市役所の研究会の面々と一緒に、東茶屋街を照明探偵しました。昔ながらの本物のガス灯が立ち並ぶ浅野川べりや、昔を想わせる茶屋街のたたずまいなど・・・、どれもびっくりするほど感動的でした。それもそのはず雪に反射する全ての街あかりは、自動販売機の異様な光さえも、小さな宇宙ステーションのように見せてしまう。街全体が光を受けるための真っ白なスクリーンになっているのです。昔ながらの茶屋街にまでガス灯が並べられていたりするは変だな・・・とも思いましたが。まあ良いでしょう。雪景色の中ではアバタもえくぼです。久しぶりに都市がすっぽり雪に埋もれている光景に、私が異常に興奮していたのかも知れないのですが・・・。金沢の街あかりについての厳しい批評は、もう少し興奮が収まって、酔いが覚めてからのほうが良さそうです。

列車は加賀温泉、福井駅などを通過して、今は京都に向かって疾走しているのでしょうか。相変わらずの美しい吹雪いた景色が続いています。未だ午前中だというのに風景に見とれていると、いつしか「銀河鉄道の夜」さながら、宇宙を彷徨っているおとぎ列車のようにさえ感じます。黒い木々の枝に付着する雪の精。手前にこんもりと綿帽子をかぶる民家の屋根。遠くに霞む山々・・・。これらの豊かな被写体が、完璧に指向性のない天空光によって照らされるものだから、三次元の景色が、突然二次元にも一次元にも変身して、私の目を釘付けにしています。また時折、目の前のガラス窓が急にフロスト状になったり、それに斜めの水跡が走ったり、またもとに戻って完璧にクリアーになったりもするのです。天空の輝度も急なアップダウンを繰り返しています。どうなってしまったの、この幻影は。あっ、雪が完璧に降り止んでしまった・・・。

突然景色が変わりました。琵琶湖が直ぐそこに見えます。サンダーバード18号で過ごした幸せな時間が、今終わろうとしています。こんなことの繰り返しです。ドキドキするような自然世界の出来事。人知の及びようのない寸劇。今日も素晴らしい照明デザインの勉強が出来ました。忘れることのない光のイメージが私の心に焼き付きました。

010118 pm.0:14

おすすめの投稿