昭和20年(1945年)8月6日午前8時15分、広島に原爆が落とされてから61年の月日がたった。毎年8月6日に行われる平和記念式典には被爆者が眠るこの地に、約5万人の人々が訪れる。その夜、原爆ドーム脇を流れる元安川では、人々の手によって数千個もの灯篭が流される。平和への祈りや追悼の想い、様々な想いを乗せた灯篭が、広島の夜をどのように彩るのか。灯篭流しをはじめ、厳島神社、広島市街地の光の調査に訪れた。
世界文化遺産に登録されている厳島神社。照明手法は大雑把で建築の細部が見えず、めりはりの無い表現になっていた。しかし、海から見た大鳥居越しに浮かぶ本堂は、闇の中に密やかに浮かび上がって見えた。海こそが本当の参道なんだと気づかされる。
人が犯した罪と犠牲に対する戒めの象徴、世界文化遺産・原爆ドーム。都市の光に埋もれてしまうほどではないが、その薄暗さがかえってこの建物が経験した歴史の重みを表現しているようにも見えた。
平和や追悼、人々の想いを乗せたあかりがひとつひとつ繋がり、新たなの光の川が生まれようとしている。灯篭が流れていくこの光景を目前にすると、“きれい”の一言では片付けられない、複雑な想いがした。