探偵ノート

第48号 – 照明デザイナーとしてのあなたに影響を与えた子供時代の思い出

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テーマ:照明デザイナーとしてのあなたに影響を与えた子供時代の思い出

Interviewer: Quratuaini Bte Jamil

候補4
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Aini:面出さんこんにちは。 今日は、照明デザイナーの面出さんに影響を与えた子供の頃の活動や思い出について話したいと思います。

面出:いいけど、先ずはあなたの子供の頃の話を聞かせてくれるかな。

Aini: 子供の頃の思い出は、母と過ごした記憶です。少ししか一緒に過ごせなかったので、とても大切な宝物です。記憶を遡ると、高い灰色のビルに囲まれた道を思い出します。緑がほとんどない石で舗装された道に小さな私の姿。その頃の建築は、私にとって圧倒的でした。

面出:お母さんと一緒にその道を歩いている時の照明を覚えてる?

Aini: :残念ながら、周囲の環境と溶け込んでいて、あまり照明に注意を向けていませんでした。

面出: 何歳だったの?

Aini: 4歳です。

面出: 20年位前だね。 夜の闇には恐怖心を感じる? 自宅の明るさはどう?

Ainie: 私は闇が怖かったことは一度ありません。うちでは子供たちの就寝時間を決めていました。家の照明はとても基本的なもので、器具は平凡なものでした。

私の記憶のほとんど場所に関係しているように思います。バス停が正面にあるオーチャード通りの交差点。白いコロニアル調の背景に建物が立っていました。 それはモールとシンガポール初の ‘Hush Puppies’の小売店でした。その光景が私の建築と歴史好きの始まりだったように思います。 それからオーチャード通りもだいぶ変わりました。 今は当時の建物がほとんどわかりません。

面出: 夜のお祭りはどう?

Aini: あまり覚えていません。家族と一緒に過ごした夜は覚えていますが。 以前中庭があるHDBアパートに住んでいたのですが、るランタン祭りの夜、大きな月が明るく輝いていて、それは珍しいことだったので、中庭に連れて行ってほしいと父を説得しました。そこの住人は皆、ろうそくとランタンを持って降りてきていて、 誰もが夜を楽しんでいました。 薄暗いながらもとても暖かく感じられました。

面出: 自然光についてはどう思う?

Aini: 私の家族は夕暮れが好きです。 ある日没に、私たちはシンガポールの田舎で貯水池と高速道路の車を見ていました。 太陽は金色に光り、貯水池は輝いていました。 絵のようなシーンはかなり魅力的だったように思います。

面出:僕が子供だったころは、特に光に興味を持っていなかった。 私は美術やデザインよりも音楽に興味があったし、ギターの振動を感じたりトランペットを吹いたりするのが好きだった。将来的にはミュージシャンになるだろうとみんなが思っていた。それが変わったのは高校の時。デザインの世界が冒険するにはふさわしいと思った。でも私の学んだ環境デザインでは仕事を見つけることができなかった。 私が照明の仕事を始めたのは、就職に選択肢がなかったから。大した美談ではないよね。

たくさんの人に照明デザイナーになるきっかけを聞かれるんだけど、いつも囲炉裏の記憶を語るようにしている。 伝統的な日本の農家にとって、囲炉裏はとても重要。囲炉裏はインテリアのためだけでなくエクステリアとの関係を繋ぐものでもある。

僕には2人の兄弟がいるけど、3人のうち僕だけが火の中に木の枝を入れてそれが燃えあがる様に見入っていた。 火は僕にとって重要なもの。夕暮れも同じ。 屋根の上に座って夕日が落ちていくのを見ながら泣いたりしていた。

Aini: 私は人が日常生活をおくるのを観察するのが好きです。 なかでも一番好きな時間帯は、早朝と正午です。 早朝は毎日の慌ただしい日常生活のルーチンの中での新しいスタートを感じることができるから。誇りにも近い感覚です。 また正午に快適な家に戻るために急いでいる人達を見るのも好きです。
家々の暖かい窓あかり。青みがかった空に対してとても美しいと感じます。 背景の影のシルエットや店からの灯りに人々の目は奪われます。 本当にきれいだと思います。

面出: 日本には有名な「カラスが鳴くから帰ろう」と歌った童謡があるんだけど、僕は外で遊ぶのが大好きで暗い空がやってくるまで時間を忘れて遊ぶことが多かった。「ああ、家に帰らなくちゃ」と思うけど、暗くなる前の空は紫色、ピンク色、オレンジ色または青色、様々な色に変化する。だから遊びを止めて、家に帰る前にただただ空の変化を見るのが好きだった。

Aini:伝統的な日本の家の話に戻りますが、面出さんはあかりについてどのように感じますか? 日本の家は快適でしたか?

面出:日本の家は夏のためにデザインされている。暖房効果の悪い家なので寒い冬は快適とは言い難いね。

Aini:障子紙がどのように光を透過するか、や違う種類の紙を使用することで光を制御することについて読んだことがあります。

面出:障子は光を透さないけど光を受けて明るく発光する。光を拡散させ太陽光を優しく家の中に取り込む役割を果たしているよ。また縁側という内と外を結ぶ境界が大切で、これが近所同士の交流を促す。縁側の前には、門につながる巨大な前庭がある。 トイレはジメジメした暗い北側にあって、子供たちは使うのを怖がっていた。

Aini: ホタルはいましたか?

面出: いるにはいたけど、周りの環境によると思うよ。大体は小さな川があるところで見られた。

Aini: 捕まえるのは好きでしたか?

面出: ただ見る方が好きかな。 ホタルは国によってとても違う。僕はホタルを見るためにマレーシアに行ったことがあるんだけど、 驚くほど巨大だった。 日本でのホタルは小さくて優しい。 マレーシアのホタルはクリスマスデコレーションによく似ている。

Aini: 自然の夜の音はどうですか? 聞こえますか。

面出: 季節によって音は変わる。 晩秋には、多くの昆虫がオーケストラのように歌うよ。

Aini:この思い出がデザインに影響していると思いますか?

面出: そう思う。(笑)照明や他の芸術的な美しさは時々感情の豊かさから来ていると思うよ。例えば、色が変わる照明は単に色が変わるだけではなく、もっと深いものがある。 五感はデザインにおいても明らかに重要。

Aini:私も同感です。 だからこそ、私は五感での子育てを信じています。面出さん、いいお話をありがとうございました。

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