探偵ノート

第026号 – 世界中から150人の照明デザイナー集合

Update:

原稿はいつも飛行機の中で書く・・・というのが癖になってきた。こんなことばかりしていると、そのうち飛行機に乗らなければ原稿もろくに書けなくなってしまうかも知れない。山の緑に囲まれたそよ風の書斎なんて夢なのでしょうか。まあいいや、今日はミラノの馬鹿騒ぎを逃れて、NYへ向かうLH711の機内からのレポートです。

昨日まで4日ほどミラノの街中で暮らしました。やれやれ、得体の知れない4日間でした。イタリアの商工会議所(INTEL/******)からの招きで、23日~26日までミラノ国際見本市会場で照明の見本市。それに相乗りして、ヨーロッパ照明デザイナー協会(ELDA/Europe LightingDesigners Association)が “Light Focus 2001″という「会議と講演会とパーティがごっちゃになったようなイベント」を企画した様子です。未だにこの招待企画が何だったのか良く解らない人も多いのだが・・・。招待者の一人、照明デザイナーの海藤春樹さんなどは、指定されたホテルに着いても何のプログラムももらえずに、大切なデザイナーズ・ディナーにも参加できずに勝手に行って勝手に帰ってきたらしい。まあ、海藤さんもイタリア人に負けず劣らずの楽観主義者だから、余り怒った様子もないけれど、普通なら招待者に対するノーアテンドは重罪です。イタリア人のすることだからいいか・・・てなところでした。しかしこの楽観的なご招待は、ずいぶん規模が大きい。私は昨年の12月頃に誘いを受けていたのですが、直前の一月前にも6名ほどのご招待があったりして、日本人だけでも私の知るかぎりで11人もの方々が旅費と宿泊費をINTEL持ちで招待されたのでした。イタリア政府もずいぶんの太っ腹・・・とは思いませんか。そのほかに大勢のヨーロッパ各地のELDA会員や、アメリカ、カナダからIALD(International Association of Lighting Designers)のメンバーも招待されたのです。事務局の人は「150人ほどの世界的な照明デザイナーの方々が・・・」と言っていたのですが、著名なデザイナーの全てが集まったわけではありませんが、盛況だったことは確かです。

どうしてこんなに沢山の照明デザイナーを集めるための金が出たのか解りませんが、多分一月前に行われた、ユーロルーチェ(Euro Luce)との確執があるのでしょう。細かいことですが、昨年から始まったFrankfurt Messe(Light and Building)は隔年開催で、その間にこのINTELが開催される。しかし今年は4月初めに恒例のEuro Luceが催されて、しかも5月末にはLasVegasで “International Light Fairもあるのです。(Euro Luce はイタリアを中心とした、どちらかというと装飾的なデザイン照明器具に寄っていて、INTELは電材機器なども扱う技術照明寄り・ .・という風に位置づけられるのでしょうが、片やアルテミデ+フロスというイタリアを代表する老舗がスポンサーシップを崩さないのに対して、INTELの方はイ・グッチーニとタルゲッティという、イタリア照明業界での新興勢力がスポンサーシップを握る、という構図にあるようです。それだから、国際的な照明業界の見本市は明らかに、ドイツ、イタリア、アメリカという3国が主導権を争っているのです。その他にはスペインのバレンシア照明見本市や、イギリス、アメリカで開かれる舞台イベント照明器具の見本市、そしてどうなることか解りませんが、来年はパリでもINTELのようなものが開催される予定だそうです。今時、見本市などやっていかほどの意味があるのでしょうか。私には理解できませんが・・・。

何事も批判的に構えてしまうのが私の悪い癖ですが、今回の得体の知れないほど沢山の照明デザイナーや関係者が一堂に会した、ということはとてもおもしろい場面をたくさん残してくれました。日本からは海藤さんの他に、石井幹子さん、近田玲子さんも参加し、パリに住む石井さんのお嬢さん石井あかりさんと近田さんが公式レクチャーをしました。NYからは私の旧友Charles Stone、イギリスからは Jonathan Spare + Mark Major の各氏、パリからはLouis Clareも来てました。昨年の秋にコペンハーゲンとストックホルムで私がレクチャーをしたこともあって、たくさんの北欧の照明デザイナーやその卵たちとも、楽しく会話が出来ました。おもしろい場面というのは、これらの国際的照明デザイナーは色々な局面で仕事上の競合をしている、ということです。だから、表面的には大げさに友好を計っているのですが、私に小声で言うことは批判と嫉妬と自己顕示欲の固まりのようなのです。なかなか生身のデザイナーというものは健気なものだと悟りました。悪い人ではないのですが、時に子供のようでもあります。そのような競合する人たちが、どのようにして職能協会を楽しんでいくのでしょうか。私はヨーロッパで講演をするようになったり、英文の本が出版されたり、雑誌に私たちLPAの仕事が紹介されるようになったので、随分たくさんの人が私の名前を知っていました。でも照明デザイナーというだけでなく “Lighting Detectives”つまり照明探偵団というのも彼らの中で有名で、「面白いことやってるね」というわけです。中には探偵団に加わりたい・・・という人もいましたよ。

そんなわけで、よく訳の解らない150人の照明デザイナーの集まりでしたが、イタリアらしくてよかったのかも知れません。毎日のようにワインを飲んでグラッパにやられていましたが、郷に入らば郷に従え、という風かな。私も何時になくいい加減な時間を余儀なくさせられました。まあ、1.5日間はホテルに籠ってデスクワークでしたが・・・。美味しい食事は最後の1日だけ。建築家の城戸崎なぎささんとそのお友だちの知子さん、LPAの稲葉さんの4人で、やっと街中に出て美味しいワインとイタリア料理。見本市っていやだね。せっかくのミラノだものね~。街にでなくちゃね~。

010526 大西洋上にて

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