テーマ『ライフプラン:母から職能人として再び輝くには』
Interviewer: 河野 真実
河野:今日はライフプランに関するテーマでお話ししたいと思いますが、面出さん昨日お誕生日でしたね。おめでとうございます。
面出:66歳になったわけだけど、66ってぞろ目がなんだか良いかなと思ってる。年寄りなのか若いのか解らない年齢だね。
河野:私は今年32歳になりました。
面出:32か。そうすると29歳から30歳になる時に「ああ、私三十路になるんだ」というのはあった?
河野:ありました。その時はまだ結婚していなかったし、仕事も生活も充実していましたが、漠然とこの先どう生きていこうかと。
面出:僕はいつも10年っていうのを一区切りとして目標らしいものをイメージしているんだよ。
河野:いつからそのように考え始めたのですか?
面出:いつからだろう。40歳でサラリーマンを辞めた頃から本格的に始めた気がする。42,3の時に、52,3の時はこうだって考えていた。
河野:私は今年LPAシンガポールからこちらへ戻ってきて、それから子どもを授かって。今まで自分のやりたいことのために情熱や時間を費やしてきたものが、今後は夫や子供も一緒なので私ひとりのペースで生きていくわけではなくなった。だからこれから30代、40代とその先をどう目標やプランを持って過ごしていこうか模索しているところです。中・高校生の10代は試験や部活の試合や受験が大きなイベントだったので、いつもそれに向けて練習や勉強に励んでいました。大学生で20代に入ったら、就職活動とか、進学とか。その頃は海外で働きたくてすごく燃えていました。それで20代でアメリカ留学をし、スウェーデンで大学院を卒業して、LPAシンガポールに入社しました。わりと半年後や来年はどうしたいという短いスパンでしか考えていなかったですね。
面出:やっぱり将来の自分のイメージがあって、具体的に何年後には自分でこうなりたいというのがあった方がいい。10年後というと自分も明らかにエイジングして、その時にどんな女性になっていたいかイメージできるといいと思うよ。
河野:10年後にはまたバリバリと仕事をしていたいです。そのころには現場や打ち合わせでも明らかにベテランに見られると思うし。仕事では早く一人前になりたいし、子どもから見てかっこいいお母さんになりたいです。子どもが私の姿をみて、将来お母さんみたいになりたいって思うような。
面出:なるほどね。母親というのはどこかで子どもには「私の姿を見てついてきなさい」みたいなのがあるのかな。父親は娘とか息子に自分をみて育って欲しいとは思っていないと思うよ。
河野:私の母親は私が生まれるずっと前からピアノを教えていて、今でもずっとそれを仕事にしています。それを小さなころから見てきて、自分の専門を持って生きるというのには昔から憧れがありました。だから私の子どもにもそういう風に思ってもらえたら嬉しいし、同じ職ではなくても生き方の目標になれたらいいなと思います。
面出:お母さんとしても職能人としても、やっぱり5年ずつくらいのイメージは持っているといいいね。お母さんになって家にいなくてはならない時期があっても、その間に資格を取ったり自分を耕すことができるかもしれない。
河野:そうですね。子育て中はプロとしてはそこで時間が止まってしまうのではないかという不安がありました。でもその間完全に仕事から離れるのではなく、その間にできること、その間にしかできないこともありそうですね。
面出:家族としての絆に終わりはないけれど、子育てには期限があるよね。15年くらいやると子どもも成長して巣立っていくものだから。けれど仕事は、70歳までやるとしてまだ40年あるでしょう。最初はちょっとブレーキ踏みながらやらなくてはいけない。けれど子育てのすんだ後に本当のデザイナーとして輝くことになりそうだね。僕だってまだ若いつもりでいたけど周りから見たらもう結構いい歳になってしまった。若い人と一緒の技量を競うわけじゃなくて、年齢を積み重ねたことのアドバンテージを生かしたことをした方が皆が喜ぶんじゃないかと思う。だから照明デザイナーも、30歳のデザイナーと40歳のデザイナーと、50歳60歳のデザイナーとで、そういうイメージを持てるといい。ただ大切なのは経験だけじゃなくてパッションというか、母親になったとしても照明デザインという一芸を磨いてモノ申すぞっていう気迫がないとだめですよ。
河野:そうですね。そしてLPAという照明のデザインに特化した仕事の中で個人として輝くためには、「私の個性はこれなの…」というのを確立しないといけないなと思いました。ユニークな存在でありたいです。まずは5年先のイメージから始めてみようと思います。